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2021年11月6日

1日1話、実話怪談お届け中!

【今日は何の日?】11月6日:アパート記念日

1910(明治43)年11月6日、東京・上野に日本初の木造アパート「上野倶楽部」が完成したことにちなんで制定された記念日。

さて、今日の一話は?

「染み」

 もう十五年程前の話である。
 小林さんのアパートでは、外に洗濯物を干すと、時折黒い灰のようなもので染みが付いた。
 白いワイシャツに黒い染みは特に目立った。
 染みが付くと洗い直しである。
 不思議と洗い直すと綺麗に落ちた。
 恐らく近所の誰かが庭でゴミでも燃やしているのだろう。
 折しもダイオキシンがメディアで騒がれていた頃である。見かけたら、嫌味の一つでも言ってやろうと思った。
 何度か近所をうろつき回ってみたが、収穫はなかった。何とも腹立たしい。
 だが、染みの付いたワイシャツを取り込みながら不意に気が付いた。
 そういえば何処からも煙の臭いがしない。今日は一日中窓も開けっ放しだった。
 何処かから煙が届いたら、すぐに気付くはずだ。
 ではこの黒いものは何だろう。
 部屋に戻ってルーペで覗いてみた。
 その瞬間、小林さんは手にしたワイシャツを投げ捨てた。
 黒い灰だと思っていたものは、全て苦悶の表情を浮かべた人の顔だった。

――「染み」神沼三平太『恐怖箱 百舌』より

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