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2021年11月27日

【今日は何の日?】11月27日:組立家具の日

組立家具の代表、カラーボックスは1967(昭和42)年に、深谷政男氏によって考案・命名され、大ヒットした商品。インテリア用品を扱う株式会社クロシオが深谷氏の誕生日11月27日に記念日を制定しております。

「太鼓」

 怖い話はないかと島本さんに訊ねると、変な話ならあると言って教えてくれた。
 島本さんの祖父は、何年も前に亡くなっている。
 一緒に暮らしていた祖父の部屋の、押し入れの上に天袋があった。そこには昔から祖父の和太鼓が仕舞ってあると聞かされていた。祭り囃子に使う和太鼓だ。
 太鼓は祖父の命日に必ず一回控えめにトーンと鳴る。その音は島本さんも毎年聞いていた。
 不思議ではあったが怖くはなかった。家族も皆、太鼓の音には慣れっこで、「ああ、今年もお爺さん帰ってきたんだね」と話のタネになる程度だった。
 島本さんの家は祖父が建てたものなので、島本さんが成人する頃には、様々な箇所に傷みが出ていた。父は思い切ってリフォームすることにした。リフォームとは言っても半分以上は建て替えのようなもので、腐った根太を交換したりと大規模なものだった。
 傷みが一番酷かったのは祖父の使っていた北側の部屋だ。祖父が亡くなってから使う人もおらず、物置のような扱い方をしていたのもいけなかったのだろう。根太も腐って浮いていた。結局その部分は全部崩して建て替えることになった。
 島本さんの家族は、工事の間中マンションを借りて移り住んだ。
 リフォーム前には家の家具をはじめとして、荷物を全部出すことになる。その際に、祖父の部屋の天袋も全て空にした。島本さんは前から気にはなっていた、例の和太鼓を見てやろうと考えた。
 部屋の荷物出しを手伝ったが、その中に太鼓らしきものは見当たらない。父親に訊ねた。
「太鼓なら、親父が死んだ年に皮が裂けたから神社に持っていったぞ」
「なら毎年してたあの音は何なの?」
「そんなの分からないよ」
 両親はニコニコしながら言った。
「お爺ちゃんが帰ってきたよって合図してるんでしょ」
 両親は当たり前じゃないかという体で答えた。島本さんも何となく納得した。
 三カ月経ち、リフォームが済んだ。北側の祖父の部屋はモダンな洋室に作り変えられて、島本さんの個室になった。以前の部屋の面影は全くない。
「でもやっぱり今年も天井から太鼓の音が聞こえたんだわ。何かさ、こう言っちゃ変なんだけど、すげー嬉しかったよ。な、変な話だろ」

――「太鼓」神沼三平太『恐怖箱 百眼』より

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