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2021年11月4日

1日1話、実話怪談お届け中!

【今日は何の日?】11月4日:いいよの日

【い(1)い(1)よ(4)】の語呂合わせにちなんで、聴きプロの北原由美氏が11月4日を記念日を制定!

誰にも否定されることなく、どう思っても「いいよ」と受け止めてもらえる社会。
「いいよ」と褒める社会。
「いいよ」と許す社会になることを願っての制定です。

さて、今日の一話は?

「もう二年まだ二年」

 携帯が震えたので慌てて取り出すと、液晶画面には姉の電話番号が表示されていた。
 彼女は一昨年に事故で亡くなっている。
 夏。今日は旧盆の入りだ。偶然とはいえ出来過ぎだ。姉の電話はもうとっくの昔に解約してある。
 取らないほうがいいだろうな、と思ってコールが切れるのを待った。
 バイブレーションが長く十回震えて電話が静かになった。

 帰宅して、今日こんなことがあったんだよ、と母に報告した。
「あら、あなたもなの?」
 母は目を丸くした。
「今日は何件も電話があったのよ。みんなお姉ちゃんのお友達。皆変わらずいい子ばかりね。今日、お姉ちゃんの携帯から電話が掛かってきたって」
 中には電話を取った人もいた。
「呼びかけても何も喋らないんだって。何か一言くらい喋ってあげればいいのにねぇ」
 あの子薄情だわ。そう笑う母の声は涙声だった。

「でも、いきなり電話掛かってきたら、ちょっと怖かったよ」
 そう言うと、母は涙を拭って笑った。
 次また電話が鳴ったら取ろう。姉が何も言わなくても母にも替わってあげよう。
 死んじゃってもお母さんお姉ちゃんのこと心配してるよ。
 仏壇では自分よりも年下になった姉の写真が微笑んでいた。

――「もう二年まだ二年」神沼三平太『恐怖箱 百舌』より

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