2021年12月25日
【今日は何の日？】12月25日：スケートの日
日本で初めてスケートをしたのはイギリス人の探検家トーマス・ライト・ブラキストン。
1861(文久元)年12月25日に滞在していた北海道・函館で初めてスケートをした記録が残っていることから、日本スケート場協会が記念日に制定しております。
さて、今日の一話は？
「ダメダメ」
ベテラン保育士のスミレさんから聞いた話だ。
ある秋の日、園児達を近所にある馴染みの公園へ連れていったときのことである。
「ダメダメー。こっちダメー」
スミレさんは園児の一人が誰も乗っていないブランコに身振り手振りを加えて、何かを制止しているのを見つけた。
幼児とは一人遊びするものである。それにしても、真に迫った困惑の表情を浮かべて何かを訴えかけている園児の姿には引っ掛かるものがあった。幼児達の些細な信号も見逃さないようにするのも保育士の役目だ。
「ダメダメー。こっちダメだってー。もうー」
「どうしたの？ 誰か悪い子いるの？」
「いるよー。ブランコの子ー」
あらじゃあこっち行きましょう、とスミレさんは園児の手を引いた。園児は暫くブランコをちらちら見ていたが、そのうちに飽きてきたのか気付いたら砂場遊びに没頭していた。
保育園施設に戻る時間となった。
「帰りますよー！」
スミレさんが公園出口から散らばった園児達を一望すると、ブランコの前に三人の園児が立っていて、ブランコに腰掛けた一人の少年に「ダメダメ」と手を横に振っている姿が目に入った。
制止されている少年は小学生ほどの背丈で、頭から大量の血を流していた。
三人の園児は必死になって、制止の合図を送っている。
ダメダメを満足するだけやってのけたのか、三人の園児は急に踵を返し笑顔でスミレさんに駆け寄った。
ブランコを再び見ると、血まみれの少年は消えていた。
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「ダメダメ」高田公太―『恐怖箱 百眼』