2021年11月12日
【今日は何の日?】11月12日:洋服記念日
1872(明治5)年11月12日に、太政官が出した布告。
「礼服ニハ洋服ヲ採用ス」
この一言から、和服から変わって洋服が正式に礼服として採用されるようになりました。このことにちなみ、全日本洋服協同組合連合会が記念日に制定。
さて、本日の一話は?
「お友達」
通っていた幼稚園の遊戯スペースの奥には、おままごと用のミニキッチンが付いていて、園児達に大人気だった。
だが、どうしてもその一角が怖くて近付けない。
気付けば、反対側の隅で一人遊びをしていることが多かった。
ある日、呼ばれた気がして顔を上げると、キッチンの上に女の子がいた。
ニコニコ笑いながら手招いている。
あ、友達が呼んでいる――と、そう思ったところで気付いた。
幼稚園の制服を着て、揃いのベレー帽まで被っているのに何故左上半身しか身体がないんだろう。
被っているベレー帽はちゃんと頭の形に膨らんでいるにも拘わらず、その下の顔は右半分がない。左の鳩尾の下辺りから顔の右側半分を、三日月型に切り取ってしまったかのように。
そこに思い至った瞬間、少女がみるみる膨らんでその形を変えた。
三筋に分かれた髪が額に張り付き、糸のように細められた目と大きく弧を描いた厚い唇。
鼻の下にはぼそぼそと髭を生やした、まぁるいおっさんの顔だけが浮かんでいる。
あっけに取られている間に、満面の笑みを浮かべたままおっさんは消えた。
未だにあれが何だったのか、分からない。
★
――「お友達」ねこや堂『恐怖箱 百眼』より