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2021年10月26日

1日1話、実話怪談お届け中!
【今日は何の日?】10月26日:柿の日

1895(明治28)年10月26日、奈良へ旅した俳人・正岡子規が、「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」の句を詠んだとされることから、全国果樹研究連合会が記念日に制定しております。また、10月26日頃は一般的に柿の旬となることにもちなんでいます。

さて、今日の一話は?

「日向の匂い」

 氷見さんは以前黒猫を飼っていた。
 その猫はある年、自宅の前の道路で車に轢かれて死んだ。
 派手なブレーキ音の後に続く〈ドン〉という衝撃音を耳にして、夕食を支度中だった氷見さんが慌てて玄関を飛び出すと、もう車は急発進した後だった。
 可愛がっていた黒猫は、見るも無惨な姿に変わり果てていた。
 遺骸は紙箱に入れ、庭の隅にある柿の木の根元に深く穴を掘って埋めた。

 秋になり、その柿の樹はいつになく大きな実を付けた。
 実を収穫しているとき、母親が呟いた。
「今年の柿は、猫の毛の匂いがする」
 つやつやとした柿の実に鼻を近付けると、確かに日向ぼっこをしている猫の毛の匂いがした。

――「日向の匂い」神沼三平太『恐怖箱 百聞』より

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