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【第56話】儚い未来日記

注:この物語は、私の身に起きた「完全実話」ですが、
プライバシーに配慮し、登場人物や企業名等は原則仮名です

(前回より続き)

コーチングの提携会社から、『コーチ育成プログラム』の販売権利を売上の折半という好条件で獲得した私たち。

しかし、販売権利を得ただけでは収益などなく、本当に売らなければ話にならない

私達は、効果的な販売方法を模索した。

過去の経験を生かし、能力開発教材会社で身につけたノウハウの採用を考えた。

そのノウハウとは、商品説明会のようなワークショップの企画だった。

セミナーへの集客は、東山さんの人脈が生かされた。

東山さんの知人に全国紙の某新聞社の人がいた。

この人を口説いて、「コーチング」を取材してもらうことになったのだ。

もちろん取材なので、商品の宣伝ではない。

当時の日本ではまだ目新しかった、コーチングというスキルがどういうものか、主婦の間で注目されつつある在宅ワークの手法として客観的に紹介するような記事だった。

しかし、その記事の中で、コーチングの資格を取るカリキュラムの斡旋をする会社として我が社を取り上げてもらい、無料のワークショップの案内と資料請求の問合せ先として掲載してもらった。

これが、面白いぐらいに当たった。

当時、瞑想教室で「感情を味わう」という課題のために付けていた記録がある。

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9月14日

「出した新聞の反響が予想以上で、思った通り、というか、本当にうれしい悲鳴を上げる。

「嬉しい!」という感情はあったが、一応味わった程度で意識する暇がないほど忙しかった。

以前に「思った以上の実績が・・・」というアファメーション&瞑想をしたが、

あまり長くやらなかったので、その影響かどうかは解らないが、とにかく凄い事になってきた」

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9月15日

「休日だが、朝から出勤してTEL受け。

予想通り反響が来てTEL受けと資料発送に追われる1日となった。

感情としては、嬉しい気持ちはあるが味わうまでは行っていない」

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9月16日

「昨日同様、結構な反響で、特にその資料発送に大忙しだった。

とにかく初めての大ブレイクに、気分もハイになっている・・・」

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9月17日

「多少は落ち着いてきたとはいえ、まだ反響がある。

今日も資料発送業務に追われとても充実していた。

調子づかないようにしようと思う」

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9月18日

「さすがに今日は落ち着いたが、これまでに相当数の問合せが来た。

あまりの予想を上回る状況で少し気が抜けた感じ。

ワークショップ用に作成しなければならない資料が全然進まない。

ここで気を引き締めねば・・・」

・・・・・

とにかく、アルバイトを入れてたった3人でやっていた、まだ零細企業にも満たない様な我が社で、その問合せの数は、それまでには絶対にあり得なかったぐらいの反響だったのだ。

そして、これもまた、瞑想教室の課題の一つとして、「未来日記」というものを付けた。

これは、私が習っていた瞑想教室の願望実現の手法の一つで、あるセオリーに則って、自分の願望を「すでに起きたこと」とみなして日記をつける。

そして、その時期が過ぎた後に、どれだけ現実と符合していたかを検証するのだ。

9月19日に私がつけた「未来日記」には、この少し後に、実際に私達が企画し、開催したワークショップの様子が書かれている。

以下、瞑想教室ノートより

* * * * * *

9月19日未来日記

「ワークショップには、たくさんの人が来てとてもよかった。

準備は万全だったのでスムーズに進行できた。

流れも完璧でお客さんも納得し、とてもよい雰囲気だ。

終了後には思った以上のお客さんがその場で申し込まれ、これで目標も大幅にクリアするぞ。

とても自然な流れで申込の列ができ、対応は大変だったが、何とも心地の良い達成感を感じている。

それ以外の人も後日には次々と申込み、それと同時に、資料請求者からも電話での申込が入り、

その数もどんどん増えて、相変わらず嬉しい悲鳴の毎日だ・・・」

* * * * * *

先ほども言った通り、これはあくまでも「未来日記」であり、私の当時の願望だ。

この後、私は実際にワークショップを開催し、この日記と現実がどれだけ合致していたかを検証した。

起業して以来の快挙の販売取引契約。

起業して以来のお客様からの大反響。

これでやっと救われるかもしれない……

しかし、やっと差し込んだかのように見えた光も、儚くも一瞬で輝きを失った。

私が検証のために書いた事実の日記には、「未来日記」とはかけ離れた現実が綴られることになった

(次回へ続く)


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