【コラム1】依存から自立へ 〜エースをねらえ!〜(前半)
コラム『心の旅の協力者』1
コンプレックスだらけだった学生の頃の私は、
「結局こんな自分じゃ女にもてない。
背が低すぎて、彼女なんか出来っこない」
という不安や恐れを抱えていた。
そんな不安をいつも抱えていたのだから、当然、性格は暗く後ろ向きで内向的で、いつもマイナス思考の人間だった。
しかし、学生プロレスに出会い、「ライトヘビー級」という、背の低い自分の欠点をも生かせる場所を見つけ、徐々に自信をもって振舞えるようになり、好循環がやる気を起こさせ、チャンピオンにまで上り詰めた。
そして、その自信が男としての魅力も少しは生み出したのか、とうとう彼女も出来た。
その時の自分は、確かにコンプレックスから来る自信の無さを克服した。
しかし、その自信とは、当時の自分はまるで気づいていなかったが、
まさに「砂上の楼閣」に過ぎなかった。
なぜなら、思春期に「彼女がいないと自分は価値がない」と思い込んでいたために、「彼女が出来た自分」というものに無意識に価値を感じ、そのことで自分を保っていたからだ。
長年、劣等感や欠乏感に苦しんでいた自分にも彼女が出来たという事は、心の底から喜びを得た瞬間だったのだが、喜びが大きかった分、その彼女を失ったときのダメージは相当大きなものだった。
しかし、今思えば、この時の失望感こそが、自分が心の世界の探求に強烈にのめり込むきっかけにもなったのだ。
失恋の痛手で絶望のどん底にいた私が、心の世界の探求を始めるきっかけとなった、あるテレビ番組がある。
何もする気になれず、毎日昼間から家でだらだらとテレビを見ていた時、偶然に見た番組だった。
それは、1990年頃に放送された、「エースをねらえ!2」というアニメだった。
「エースをねらえ!」は、ご存知の方も多いと思うが、1970年代に大ブレイクした、テニスを題材にしたスポ根アニメだ。
この時、私が見た「エースをねらえ!2」は、主人公の「岡ひろみ」が、前作で自分を育ててくれた宗方コーチが亡くなって、失意のどん底にいる、という設定で始まる。
岡ひろみには、逃げ出したいほどに厳しく、しかし深い愛情で、自分を一流のテニスプレーヤーに育ててくれた宗方コーチに、強烈な思い入れがあった。
言い方を変えれば、岡は宗方コーチに強烈に依存していた。
彼女にとっては、コーチは全ての支えだったのだ。
その心の支えだったコーチが突然亡くなり、現実を受け止められず、
岡は生きながらして死人のような腑抜け状態になってしまっていた。
この主人公の失意の姿が、彼女を失い心の支えを見失っていた自分に、オーバーラップして見えた。
(後半に続く)
→ 後半に続く
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