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【第45話】新たなスキルと仕組まれた罠
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プライバシーに配慮し、登場人物や企業名等は原則仮名です
形ばかりが整えられたお洒落なオフィスの中で、売る商品も無いまま、私は、お金にならない研究ばかりに明け暮れていた。
そんあある日、東山さんが、ようやく販売商品になりそうな話を持ちかけて来た。
実は、東山さんは少し前から、新しい人材教育のサービスとして、この商品に目をつけていたという。
東山さんが持ちかけて来たのは、「コーチング」と言われるスキルを元にしたサービスだ。
今でこそ、「コーチング」という言葉は、能力開発の分野では一般的になっているが、まだインターネットすら、電話回線を少し高速にした程度で繋げていたような1990年代後半のこの時代、
「コーチ」と聞けば、日本では、いわゆるスポーツ選手の指導者、といったぐらいにしか一般には認識されていなかった。
当時、アメリカではすでに人材開発手法としてのコーチング・スキルが定着していたが、これに目を付け、日本に持ち込んだ元祖と呼べる流派が2つあった。
東山さんは、その両方とコンタクトを取っており、いずれ、どちらかの団体と手を組み、コーチング・スキルを生かした新しい人材育成サービスの展開をもくろんでいた。
私は、当時はまだ、「コーチング」という言葉も初めて聞くものだったが、その内容は非常に興味深かった。
コーチングを知らない人のために説明すると、私がこの時代に携わったコーチングの概略とは、
「全ての答えは相手の中にある」という真理を基に、相手の目標達成や問題解決のために、コーチ側が何かを教えたり、アドバイスをするのではなく、
相手の中にある答えを引き出し、行動を促していくための、質問の技術やコミュニケーション・スキルの一つだ。
実は、私も能力開発教材の会社に所属していた時代から、いや、恐らくもう、かなり昔から、「相手の中に全ての答えがある」という本質を自己の経験の中から理解していたために、
このスキルは、能力開発教材の営業マンの時代に、私が「ユーザーフォローとしてやりたい」と考えていた発想に大変近いものだった。
だから、コーチングの理論をよくよく調べるほど、非常に納得感のある、自分の考え方にもマッチした、素晴らしいものだとわかった。
「コーチング」自体は、私が独立してやりたかった「最高のサービスを提供すること」そのものではなかったのだが、そのサービスの一側面を担えるものではあった。
特に、起業初期のこの時点では、商品となるサービスがまだ確立されていなかったし、取りあえず、今後の展開の中で取り入れたい、と思えるスキルであったことは間違いなかった。
そこで早速、そのコーチング・スキルを自社で取り扱うことを考えた。
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ちなみに、「相手の中に全ての答えがある」という言葉は、今では一般的にも良く使用される言葉でもあり、真理を捉えた言葉だが、
コーチングで指す「(自分の中にある)答え」とは、私がこのブログでお伝えしている「本当の自分」というものと、概念が異なる場合がある。
実は、コーチングに限らず、様々な手法や教義などでも同じことが言えるのだが、提供側が指し示す「自分」の定義によって、それらの手法の本質や意味が全く違ってしまうのだ。
また、提供する側だけでなく、受け手側が「自分」という言葉に対し、異なる解釈をしてしまうこともある。
ただしこれは、受け手側の問題というよりは、私も含め、心の世界の情報を提供する側の表現不足や、理解不足から来る場合が少なくないと私は捉えている。
当時、私が学んだ「コーチング」などで言う答えは、大前提が、相手の思考や潜在意識の中から導き出す「答え」であって、その個の人間としての答えだ。
例えば、そのコーチングの目的が問題解決である場合、その「問題」に対する的確な「対処法」を、本人に様々な質問を投げかけたりすることによって、本人の中から導き出し、具体的な行動へと促して行く。
この方法は、あくまでも自分で自分の解決策を見つけ、「行動」も自分が決めたものだから、納得感もあるし、誰に強要されたものでもないから抵抗感も極めて少ない。
自分がやらなければ、自分にその結果が返って来るだけの、とても理にかなった方法であり、極めて誠実な手法だ。
しかし、人間の心はもう少し複雑に出来ている。
「やれば良い」と理屈では分かっていても、どうしても出来ない自分がいたりする。
目標も計画も全て立て、「やるぞ」と納得して決意したはずなのに、まるで誰かが仕組んでいるのか、と疑いたくなるような、自分を邪魔する状況などを引き寄せたりする。
実は、「自分」というものを少し俯瞰して見れたとき、例えば、少し時間が経過した後に振り返ると、そこには当時の「自分」では見えなかった視点が見えて来ることがある。
「あぁ、だからあの時、どうしても出来なかったんだな」
「あの頃は必死だったけど、手放したら簡単に手に入った」
という経験は、誰でも一度や二度はあるかもしれない。
それは、自分の大いなる「本当の自分」が、「そっちじゃないよ」と自分の使命を指し示すためにやるべきことを出来なくしていることがあるからだ。
この時代の私は、まさに自分が本当の使命に導かれるための仕組まれた罠のうように、
もがいてももがいても、先に進むことのできない状況に、徐々に追い込まれていった。
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