アンラーン💣リラーン📚ためらわん♫run26
⭐「卓球から見えてきた探究のヒント」⭐️
(これまでの虚栄を解きほぐす「unlearn」のため、頭の中を刷新する「relearn」を躊躇なく進めるための記録)
SNSの或る記事に目が留まりました。
最近の人は知らないかもしれませんが、私の世代では最強の卓球選手と問われたら、大抵の人が「ワルドナー」と答えていたと思います。ワルドナーはスウェーデンの選手で、個人成績でいうとバルセロナオリンピックで金メダル、シドニーオリンピックでは銀メダル、世界選手権でも2度の金メダルを獲得するなど、「天才」と呼ばれた選手です。
そんなワルドナーの記事があがっていたので、思わず見てしまいました。新年となり新しいラケットで友人と卓球をしたようですね。
大学生のとき卓球のインストラクターをさせていただいていたスクールの夏合宿で、私はワルドナーと打ったことがあります。そのときは、スクールのスペシャルゲストとして、ワルドナーとトーマス・フォン・シェーレ(こちらもスウェーデンの選手でダブルスの優勝経験あり)が来てくれたのです。
11点などの試合ではありませんでしたが、シェーレ選手からは奇跡的に3球目攻撃が決まり、ノータッチで1点とれたのは今でも素敵な思い出です。私のフォームはクセスゴで、クロスに打つように見えるのに逆クロスに流し打ちで飛んでいくため、それしかできないとバレるまではそれなりに有効でした。
それからワルドナーと打ったときは、いくらスマッシュを打っても打ち抜けずに苦戦していたところ、最後に打ったスマッシュがネットにかかって、台上で2バウンドしてとりあえず1点とれました。ということで、私はオリンピックの金メダリストから1点を取ったことがあるということになります。
こういった貴重な出会いの中で、一流選手から褒めてもらえると本当に嬉しくて、良い意味での勘違いが生まれ、そのあと技術が向上するということを、私は身をもって学んでいます。
教育の世界では「褒めて伸ばす」ことのメリットやデメリットが議論されることがありますが、そこでポイントになるのは「どのような勘違いをしてもらうか」なのではないでしょうか。
私もこれまでHR担任として、教科担当として、部活動顧問としてなど様々な立場で生徒と接し、「ほめて伸ばす」を実践してきているつもりですが、自分が考えているほどの効果がなかったり、逆効果だったりと悩みは尽きません。
しかしこうして記事を書いていて、「褒めて伸ばす」がとても上手だった人を思い出しました。それは、私が大学生のころに参加した卓球の講習会でした。その講習会は「ベンクソン」講習会という名前の通り、ベンクソンという選手が指導してくれるものでした。ベンクソンはワルドナーよりももっと上の世代のスウェーデンの選手で、この選手も多くの大会で優勝したレジェンドでした。彼は引退後、指導者として各地を回っていて、偶然この講習会に参加させてもらえたのです。
ベンクソンもワルドナーなどと同じように自分のプレーを褒めてくれたのですが、彼は現に起こったプレーを褒めるだけで終わらずに、「さらにもっと良くするためにはどうすればよいか」というさらなる高みのアドバイスをしてくれていたことを思い出しました。そのアドバイスによって、現に起こった出来事としての過去で終わらず、未来の可能性と自分を繋げてくれたことで、もっと上手くなるにはどうすればよいか没頭しましたね。私が褒めてもらい、たくさんアドバイスをもらったのはバックハンドロングの技術で、その後も、私のプレーを支える大切な技術となり、現在でも助けられています。
こうして卓球における「褒めて伸ばす」を振り返ったとき、もし過去のプレーを褒めるだけだったならば、本当に良いプレーだったのかどうかは別として、とにかく「あのプレーを褒めてもらえた」という満足で終わっていたことでしょう。そして、それは過去の栄光に縛られてしまう「悪い意味での勘違い」と言えます。
しかしベンクソンは、さらに良くなるには何に気をつければよいかを示してくれたので、過去よりも未来に意識が向かっていて、さらなるチャレンジをしてみようという気持ちになっていたと思います。
「凡庸な教師は、ただ話す。良い教師は、説明する。優れた教師は、態度で示す。そして、偉大な教師は心に火をつける。」
これはアメリカの教育者・哲学者であるウィリアム・ウォードの言葉です。この言葉の如く、私はベンクソンのアドバイスで、心に火がついたのでした。一時期、CMでよく耳にした「やる気スイッチ」もこれに当てはまるでしょうか。
こうして「卓球とやる気」についての記事を書いていて、そういえば「探究とやる気」も同じだなと気づきました。探究などの活動の評価は、数値ではなく、段階的な評価をするルーブリックなどが使われることが一般的になってきています。そして、このルーブリックは、「現在がどの段階か」ということよりも、「次の段階にレベルアップするには何をすればよいか」という「ネクストアクション」が可視化されているところが重要なのです。自分の現段階の一つ上の段階では、どんな活動について表現されているかを見ることによって、生徒は未来に意識を向けて努力を続けることができます。
卓球には、探究に関するヒントがありますね。他にも色々ヒントがあると思うので、今一度、卓球を見つめ直そうと思います。
追伸、私はバックハンドの豪快さに魅せられたので、ヨルゲン・パーソン派です。