「デジタル看護入門」第17回 〜在宅での吸引処置とICT〜
在宅療養で人工呼吸器を使用している場合、同時に必要な医療機器として、痰を排出させるための「吸引器」があります。「吸引」の頻度は、個人差はありますが、基本的に体位交換と一緒で、2時間おきには行うケアのひとつです。介護者の負担もあり、患者さんの苦痛も大きい医療ケアとなります。
そこで、まだあまりメジャーではありませんが、低定量持続吸引が可能な「自動吸引システム」が、少しずつ実用化に向けて、開発がされています。今のところ、ALSや筋ジストロフィーなどの神経難病の患者さんのような、気管切開をして人工呼吸器を使用している状況下で、徐々に活用が行われています。しかし、医療現場においては、まだまだ安全面が確立しておらず、機器・器材、システムに関して、正しい知識や技術が必要なだけでなく、いろいろな使用条件なども加わり、まだ様々な課題があるようです。しかし、「自動吸引システム」の機能の向上が、多くの人工呼吸器を使用する患者さんとその家族の負担の軽減につながることは確実です。
どのようなメカニズムなのか、少し確認してみると、あまりICT技術が活用されておらず、わりとアナログな改良を重ねているようです。個人的には、熱感知などのなんらかのセンサーなどで、痰の貯留を確認して、自動的に吸引を行うようなものをイメージしていましたが、持続的に低い圧で少しずつ痰を排出していくことで、痰の貯留を防ぐというシステムのようです。今のところは、あくまでもまだ補助的な自動吸引器ですね。
ナースコールや心電図の項目でもお話ししましたが、どうも、積極的にICT技術が注ぎ込まれる医療機器と、そうでないものがあるようです。機械が介入することで、なんらかの問題が起きたときの保証や責任は?という部分がシビアな分野ほど、開発する企業などの参入は少なく、それゆえ、そのような医療機器の機能向上のスピードもますます遅くなっているような気がします。医療機器のメーカーも商売ですので、ある程度、需要があり、その医療機器の故障などによる影響が少ない、いわゆる安全パイのものだけが、どんどん開発が進み、さまざまなメーカーからの同じような機能の医療機器が大量に販売されるという状況になっています。そのようないろいろなリスクをよく知っている看護師が、もっと先頭に立って、医療メーカーに働きかけていかないと、いつまでも、困っている患者さんやご家族の取り巻く環境は変わらないと思います。