「デジタル看護入門」第11回 〜酸素飽和度測定器とICT〜
今回は、ひとむかし前までは、一般的な患者さんのバイタルサインとしては、それほど測定されていなかった「酸素飽和度」いわゆるサチュレーションです。パルスオキシメーターが高価であり、まだあまり普及していなかった頃は、ICUなどの重症患者さんのベッドサイドモニターなどで「酸素飽和度」を測定するしか方法がありませんでした。ICT技術などの進歩により、パルスオキシメーターがコンパクトになり、体温計のように持ち運びができるようになり、そして安価になりました。今では看護師さんひとりひとりがバイタルサインの測定時に患者さんのところに持参して、自由に測定できる環境になっています。
パルスオキシメータは、動脈血中の酸素飽和度を、採血なしで連続的に測定する装置です。血液中のヘモグロビンは、酸素が含まれていると明るめの赤色となり、そうでないとやや暗めの赤色になります。このヘモグロビンが、この赤い色の差により、光線の吸収の度合いが異なりなどから、動脈血酸素飽和度を算出します。おおくのパルスオキシメーターは、指先にセンサーを装着し、指を通り抜けた光線を測定します。
パルスオキシメータを活用すれば、患者さんの身体にどのくらいの酸素が行き届いているか、つまり呼吸状態が、非侵襲的に、すぐに確認ができます。もちろん、呼吸状態の観察は、呼吸の仕方、呼吸数、呼吸音、痰の性状など、さまざまな観察項目をすべて確認してから、アセスメントを行う必要があります。酸素飽和度は、あくまでも呼吸状態のバイタルサインのひとつにすぎません。
最新のICT技術で、パルスオキシメーターは安価になり、一般の方々もスポーツのトレーニング時の呼吸の確認などに使用するようになりました。最新のウエアラブル型腕時計でも、酸素飽和度が測定できる機能があるものが発売されました。しかし、厳密な呼吸状態の確認、つまり、医療における呼吸状態の確認のためには、前述のように、パルスオキシメーターの酸素飽和度の測定値だけでは判断できません。最近は、コロナ感染症の症状の確認のため、このパルスオキシメーターが、一般の方にかなり売れているようです。きちんとした医療の知識がない状態で、安易に医療的なバイタルサインを測定し、間違った判断をしてしまうことは、危険なことでもあります。ICT技術の進歩により、誰でも気軽に身体状態が測定できる機器が普及することは素晴らしいことですが、反面、医療者として、気をつけなければいけない部分もありますね。
フライトナースや離島の保健師の経験を還元できるようなバーチャルリアリティ環境の構築およびコンテンツ作成が主な研究分野です。研究のための寄付を募っております。研究の成果はこのnoteで公表していく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。