最短でダンス技術を習得するために
僕はよく専門学校などでダンスのレッスン中に「何も考えずにとにかく数をこなしなさい」と生徒に言います。
「1万回やれ!」は僕のレッスンを受けてくれている人なら飽きるほど言われてますよね。笑
その一方で「なんとなくやらずにしっかり考えてやりなさい」とも伝えています。
相反するこの2つの言葉。
僕は「この2つの両立」が絶対的な上達の近道だと信じています。
ということで今回は
「最短でダンス技術を習得するために必要なこと」
についての私見を書いてみたいと思います。
注:ここに書いている「技術」というのは単純に「基礎」や「テクニック」であって、「表現」とは全く別物だということをご承知おきください。
1.そもそも「ダンス」とは?!
…ダンス……うーん…ダンスねぇ。笑
ダンスの定義や、捉え方は人によって違うと思います。
いろんな考え方があると思うので、ここはWikipedia先生に聞いてみましょう。笑
僕なりのダンスの定義はまたの機会に。
ダンス(蘭: dans、仏: danse、西: danza、英: dance)は、伴奏に合わせて演じられる一連の動作のことで[1]、その様式は極めて多様であるため厳密な定義づけは容易でないが、遊戯的でリズミカルな動きの連続によってコミュニケーションや表現を行う文化をいう[2]。
だそうです。
すっごい雑にいうと「身体を動かしてコミュニケーションや表現をする」ってコトですね。(←我ながらヒドい雑さ。笑)
みなさんも「ダンス」といえば、音楽に合わせてなにかしら「身体を動かしている状態」を想像すると思います。
くどいようですが、音楽的なこととか、バイブスが〜とか歴史的背景が〜みたいな細かいことはすっ飛ばして書いてます。あくまで「身体を動かす」ということにフォーカスしているので、誤解のないよう…。
2.「運動」という観点からみた「ダンス」
賛否両論あるでしょうが、ここでは「ダンス≠運動」という観点で話を進めていきますね。
ダンスは、「身体を動かす」という点においてスポーツと共通している部分が多いと思います。
スポーツ経験者はわかると思うのですが、より良いパフォーマンスをするためには「フォーム」というものがとても大切です。
より早く走るため、より遠くへボールを投げるため、より長時間疲れずに動くために「理に適った(合理的な)正しいフォーム」を習得する。
いくら筋力があっても、身体の構造に反したフォームでやっていてはある一定レベル以上の成果は望めませんし、怪我の原因にも繋がります。
逆に、効率よく身体を使えば少ない力で最大限の力を発揮でき、怪我もしにくく、またそれを反復することで、必要な筋肉も育っていく。
結果として、自分のポテンシャルを最大限に引き出したパフォーマンスができます。
物理的に間違っていない、「正しい動きを反復すること」によって上達するということです。
余談ですが、「メンタル(mental)=精神的な〜」の対義語として「フィジカル(physical)肉体的な〜」という言葉がよく使われますよね。
「physical」という単語には限定的ですがもう一つ意味があって、自然科学の分野では「物理的な・物理学の」という使われ方をします。
「物理学」というのは英語で「Physics」といいますね。
「運動」は身体の物理的な動きを使って行います。
このことからもわかるように「physical=肉体」と「physics=物理学」には密接な関係があります。
3.理にかなった動きとは?
プロのダンサーさんとかを見るとわかるのですが、ダンスが上手な人って簡単そうに動くじゃないですか。
運動神経に自信のある人なら「練習したら自分にも出来る」と錯覚するぐらい。
ちなみに僕は錯覚してダンスを始めました。笑
逆に、ダンスがうまくいかない人は、本人の感覚はもちろん、見た目にも「難しそうに」動くんです。
ダンスのレッスンをしていると「いやいや、そうやる方が難しいでしょ」という動きをする人がいます。
とても窮屈そうに。やりずらそうに…。
別に、足の順番とかやること自体は間違ってないんですよ。
でも、なんだかやりにくい。
鏡にうつる自分を見てもなんか違う。
間違ってはいないけど、「厳密にいうと違う」。
動きに無駄があるから、見ていてどこか違和感があるのです。
スポーツでも、一流選手の動きにはシンプルな美しさがあります。
↑日本プロ野球史上唯一の通算400勝達成投手である金田正一さん↑
↑戦前のプロ野球界で、史上2人目のシーズン防御率0点台や、史上初の投手5冠に輝き、史上初のノーヒットノーラン達成。日本プロ野球史上に残る伝説の選手の一人、沢村賞でもお馴染みの沢村栄治さん↑
↑最初にアメリカ野球殿堂入りを果たした5人の中の1人であるベーブ・ルース↑
野球選手ばっかりですみません。笑
彼らの動きには自然に逆らわない、見ていて歪みやストレスを感じないシンプルな美しさがあります。
野生動物もそうですね。
動作において無駄がないから美しい。
例えば「狩り」の際は動作に無駄があると獲物に気付かれてしまって餓死につながります。
そりゃ命がかかっているわけですから、生き残るために無駄を極力省いた動きになっていくのは当然です。
目的を追求した先にある機能美ともいえる動き。
あ、機能美といえばフリーザさまの最終形態もそうですね。笑
戦闘という目的に特化し、無駄を極限まで省いた御姿。
いやー美しい。
運動において「正しい」とは「ムーブメントがシンプルかつ合理的である」ということだとも言えます。
レッスン中に先生から指摘を受けることがあると思いますが、あれは「こうした方がそのテクニックは楽に出来るんだよ」ということを言ってくれていることがほとんどです。
4.正しい動きを身体に入れるために
日本でミュージカルを学んだ人なら誰でも知っているであろう偉大な振付家、故・山田卓先生は
「難しいステップは練習すれば誰でもできる。いかにそれを涼しげに見せるか…」
と仰っていたそうです。
いやー響きますねー。
最初は何が正しい動きかわからなくても、繰り返し練習すれば、徐々に「やりやすい(効率のいい)」身体の使い方がわかってくる。
これは「慣れ」とも呼ばれます。
「やりやすい=効率がいい」というのは「無駄がない=楽」ということです。
「楽」と言っても、力を入れずにダラーっとするわけじゃないですよ!
無駄のない最小限の力で動いているから、結果として「楽」という意味です。
人は良い意味でも悪い意味でも「楽な方」に流れます。
反復する中で、自然と楽な使い方をチョイスするようになるんですね。
卓先生の言葉を聞くと「なんとなく出来るようになったその先、圧倒的な反復練習によって無駄を削ぎ落としていくことが本当の意味での練習」なんだろうなと痛感します。
できなかったことも、練習を続けていればいつかは楽に出来るようになります。
でも、どうせなら早く楽になりたいですよね。笑
楽になる前に怪我なんかしたら元も子もないし…。
ここでちょっと考えて欲しいのですが、身体の構造や合理的な身体の使い方の心得があれば…何倍も早く楽に動けるようになると思いませんか?
だから考えて欲しいんです。
どうすればもっと合理的に動けるのか。
5.考える前にするべきこと
ただ、いくら身体のことを勉強して、頭の中では解っていても、それを実践するというのは別問題です。
「やったことのない動きをする」ということは「今まで使ってない筋肉を使う」ということです。
例えば、「右利きの人が左手でお箸を使う」ことは大変です。
・イメージは完全に固まっている
・握り方は合ってる
・理屈も解っている。
でも、思うようにお箸をコントロールできない。
これは、まだ筋肉がその動きに慣れていないんです。
イメージを具体化したり、使い方を工夫できるほど筋肉に神経が通ってない。
「大腿筋膜張筋にばかり頼らないで、腸腰筋群をメイン出力にして脚を上げるのよー!」なんて言われてすぐに実践できますか?
無理ですよ。笑
その筋肉がどこにあって、どうやったら使えるかがわからないんですもん。
「〇〇筋の使い方が〜」とかそんなレベルじゃないんです。
個人差はありますが、1歳半とか2歳ぐらいからお箸の練習を始めて、こぼさないで食べれるよう周りの人の見よう見まねでお箸を使い続けて、小学生ぐらいになると大人と同じお箸でもかなり自由に使えるようになりますよね。
子どもたちも、お箸というツールに慣れ、目的を理解し、工夫できるようになると加速度的に上達します。
まずは何度も繰り返して身体=筋肉にその動きを慣れさせる。この段階では質より量です。
ある程度身体が自分の意思でコントロール出来るようになってきたら、より楽に動かせるように動作の目的や身体の特性を考えながら練習する。
これが筋肉に動きを覚えさせ、合理的に動かせるようになるための普遍的なプロセスなのです。
で…「考えながら」って具体的になんなのよ?
はい、これが一番大事!!
キーワードは「フォームが先にあるのではなく動作が先にある」です。
次回からは、この「何を考えるのか」についてちょっとずつ書いていこうと思います。