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こんにちは。堀内です。
前回のnoteではキャリア・クラフティングの定義について書きました。

今回はキャリア・クラフティングの重要性についてお伝えしよう、、、と思いましたが、本題に入る前に労働市場や個人のキャリアに影響を与えている現代社会の今について整理します。


『多様性』がもたらす弊害

正解がひとつだけではなくなり多様性が認められる社会になりました。前回のnoteでも触れましたが、「多様性」は美しい言葉に聞こえますが、素敵!かっこいい!の定義が一つではなくなること、つまり正解が一つではなくなることは全ての人にとって幸せか、と問われるとそうではありません。

人の脳はシンプルさを求めます。3つ以上の選択肢があるような複雑な問題を解こうとすると途端に思考停止してしまうのです。これはメニューの選択肢が少ない飲食店の方がオーダーがスムーズである、というような実験が過去幾度となくなされており、脳科学的に実証されています。

高度経済成長期に『24時間働けますか?』というCMがありました。

2023年現在では大問題になるようなフレーズに対して当時は違和感を覚える人がいなかったのは、長時間労働をすることで所属企業に貢献し、出世し、報酬が上がり、マイホームを買い、高性能の家電を揃え、家族みんなでマイカーでお出かけをするというモデルが幸せの象徴だったからです。競争社会において必要な要素は一等賞がピカピカに輝いて見えることです。この競争に勝ち抜くことがキャリアの全てでした。競争社会と言われると大変そうに思いますが、キャリアについてややこしく考える必要がないという点では思考は楽だったと思います。

幸せのパラメーターが明確であったこともキャリアで悩む必要のない要因でした。出身大学のブランド、所属企業のブランド、役職、年収、住んでいる家、着ている服、持っているアイテム、それらが高級であればあるほど羨望の眼差しで見られました。つまり、人と比べて自分はどのレベルにいるかということが明確であり、もっと上を目指すなら24時間働けばいい、というプロセスも明確だったのです。

現代は違います。SNSのフォロワーが●万人いるインフルエンサー、フリーランスで時間に縛られずに働いている、スタートアップで役員をしている、などなど、高度経済成長期なら「は?大丈夫?ちゃんと考えて生きてる?」なんて大手有名企業に勤めていた友人に突っ込まれていたような人たちが、現代では素敵!と言われるようになりました。人によって素敵!かっこいい!の基準が変わり、正解が一つではなくなり、何を目指すといいのか、何を頑張ればいいのか、わからなくなってしまったことで、「自分はこれが好き」「自分はこうなりたい」と軸を持っている人を羨ましく思う人が増えました。

『受ける』だけでは何も変わらない

多様性という渦の中で、自分のゴールや軸や強みなどを見つけられない人のためのサービスが活発化していきました。

DIAMOND online 不透明な時代に即したビジネスコーチングで企業の成長を支援 より引用

自分の現在地(強み/好き)やゴールを明確にすることで、キャリアという地図のコンパスを明確にしてもらえます。現在地やゴールを自分だけで決められない人にとっては非常に良いサービスです。また、最近では、自分だけで決められる、または既に決まっている人でも、整理のためにコーチングを利用する人もいます。

ただし、これらのサービスを「受けた」だけで終了しても全く意味がありません。地図とコンパスがイメージでき、現在地とゴールが具体化したとしても、ゴールに向かって歩き出さないのであれば意味がないということですね。

整理できると何かすっきりします。よし、やってやるぞと思うでしょう。でも、ここまできても動かない人が大半です。脳は現状維持を好むようにできているのです。

時代は日々進化します。人も日々進化します。日々、目や耳から新しい情報が変わることで、無意識に決めたはずの現在地とゴールが動き出します。だからまた迷う。という無限ループを繰り返します。

『受け身の人向けのサービス』が増えた

2010年以降、新しいリクルーティングサービスが続々と生まれ労働市場を盛り上げています。ビズリーチ、wantedly、youtrustなどなど、2000年代までのサービスにはほとんどなかった機能が追加されました。それが「スカウト」です。現代では、ビズリーチのようにスカウトに特化していないサービスでもスカウト機能がないリクルーティングサービスはほぼないでしょう。これによって求職者は、自分から積極的に応募に行かなくても、登録だけしておけばスカウトがもらえるという楽ちんさを手に入れることができました。

総務省「労働力調査」より引用

こちらのグラフは1968から2021年にかけての、転職希望者と転職者の推移です。一目でわかると思いますが、転職希望者の伸びに対して、実際の転職者は増えていないのです。転職活動サービスが増え、転職活動自体はやりやすくなったのですが、昔も今も、実際に転職する=決断する、という行為自体は何も変わっていないのです。これこそが転職者が増えない原因であり、「決断する」という行為がもっと楽ちんにならない限り、このトレンドは今後も続くと思っています。

『決断する』よりも楽なこと

決断できない、動けない、でも動かなきゃ、、、そう思う人を狙ったサービスが「リスキリング」です。前提としてリスキリングを行うこと自体は素晴らしいことであり、否定しているわけではありません。キャリア・クラフティングの3つのクラフトの中でもスキルのクラフトは重要だと考えています。

問題は、「学ぶ」という行為を「動く」という行為に代替し、それで満足する人が多いことです。確かに学ぶことを始めるために、物理的には動きが発生しています。何かしらスキルを獲得できる講座に申込み、日々学びを得ている行為自体に動作はあります。そして、その動作に満足を覚えることができてしまいます。しかし、本当に必要な「動く」とは、アウトプットやアウトカムが伴う行為です。例えるなら、カレーを作るレシピを覚える行為が「学ぶ」ことであり、カレーを実際に作ることがアウトプット、それを食べてもらうことで、美味しいという感想を集めたり、収入を得たりすることがアウトカムです。レシピを完璧に覚えることはアウトプットではないし、レシピの記憶テストで100点をとることがアウトカムではありません。

ここでの示唆として面白いのは、「動く決断をする」ことよりも「お金を払って学ぶ」ことの方がハードルが低いことです。例えば転職するという行為によって経験をクラフトすることで、同時にスキルもクラフトすることができます。(当然選ぶ職種をどうするか、が前提ですが。)お金をもらいながら学ぶことができるかもしれないのに、お金を払って学びに行く方を選ぶ人の方が多いことからも、「動くこと」「動く決断をする」ことがいかに難しいことかはご理解いただけるかと思います。

それでは、次回はこの「動くこと」について、まとめていきたいと思います。

今日も素敵な一日を。

※補足ですが、記事中に例に出しているコーチングサービス、スカウトサービスを否定しているものでは決してありません。それらの素晴らしいサービスを享受しながら「動かない人」にフォーカスし、その人のために役立てるようなnoteでありたいと思って展開していることをご留意ください。

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