修羅場・土壇場・正念場は本当に経験すべき?~自分の得意分野を見つけられずに悩む28歳のキャリア③~
こんにちは。株式会社シンシア・ハートで代表取締役をしている堀内猛志(takenoko1220)です。
前回のnoteでは、「20代はI型人材を目指して自分に投資すべき?~自分の得意分野を見つけられずに悩む28歳のキャリア②~」ということについて書きました。
今回のnoteは28歳健太というペルソナの転職ストーリーの解説編②になるので、よろしければ以下のnoteで健太の状況を理解してから今回のnoteを読んでいただくと理解が深まるかと思います。物語調で書いているので2分もあれば読めると思います。
さて、今回は前回の続きで「健太が行うべき1万時間の壁と土壇場・修羅場・正念場経験」について解説していきたいと思います。
中途半端なジェネラリストにならないために20代でやるべき3つのこと
前回のnoteでI型からHH型までのキャリアステップを解説しました。
新卒入社の人の場合、ジョブ型雇用じゃないのであれば、自分でキャリアを選択できることはほとんどないので、このステップ通りになかなか進まないと思います。そして、今の会社に骨をうずめるという覚悟がない以上、会社が用意してくれたキャリアに乗っかっていいものか悩みますよね。
例えるなら地図と同じ。「ゴール」も大事ですが、それ以上に「現在地」をわかっていないとキャリアの1歩目すら考えるのが難しいでしょう。「総合職」という日本的で企業にとって都合の良い職種を名乗ってしまうと、とたんに自分の現在地を見失ってしまいます。健太はまさに転職して自分が何者であるか、という現在地を見つけたかったんですよね。そういう人は多いのではないでしょうか。
現在地を見つけるために転職活動をすることは悪くないと思います。実際に転職するかどうかはさておき、労働市場における自分の価値を理解するという意味で転職活動は大事です。ちなみにその価値を教えてくれるのはエージェントではありません。学べるのは、転職活動をする中で出会う企業からのフィードバックや選考結果です。
エージェントの目的は2つ。「できるだけ高く成功報酬フィーをもらえる企業に候補者を紹介すること」「不合格や内定辞退というムダが発生しないようにマッチング率を高めること」です。よって、候補者のキャリアに本気で向き合ってコーチングしてくれることはまずないでしょう。個人エージェントはそういうところもあります。しかし、大手エージェントは間違いなくしません。
よって、エージェントだけではなく、スカウトや様々なツテやツールを利用して色んな企業を受けて見てください。労働人口不足の現在ではそういう人でも面接をしてくれます。「本気でうちに来る気がないのに受けに来るな!」なんて言う企業はほぼありません。だからこそ、どんどん色んな企業を受けに行ってフィードバックをもらってください。
企業の選考官も人間です。それが経営者でも人間である以上、好みが分かれますので選考基準も違います。複数の企業を受け、内定まで行くところ、途中で落とされるところが出そろう中で、なんとなく自分の市場価値が見えてくるでしょう。それがあなたの現在地です。
①やりたいことがないならひたすら『スタンス』を高める
健太は自分の現在地がわかったので転職を選びました。ただし、ゴールを勘違いしていました。尊敬する先輩のゴールを自分のゴールのように錯覚してしまったのです。自分の夢がない人ほど「人の夢を応援するのが自分の夢だ」って言いません?そんな状態です。本気で人の夢を応援できる人もいますが、人間が心底興味があるのは「自分自身」です。人の夢を応援するのが好きだと勘違いしている人は、自尊心や自己効力感が低い人であり、人の夢を応援することが好きなのではなく、人の夢を応援することで「ありがとう」をもらって自尊心や承認欲求を高めるのが好きなだけなのです。
選択の科学によると、人は選択肢が増えるほど決断力が低下します。日本はどのようなバックボーンでも、どんな職種にでもなれるくらいキャリア選択の自由度が高い国です。ゆえに、人は悩みますし決めきれません。前回のnoteでも伝えた通り、「人はとにかく急いで答えが欲しい」ので、自分を偽った目標を立てたりします。ただし、これも前回のnoteで伝えた通りですが、目標はアップデートすればいいので、目標を立てること自体は悪いことではありません。今回伝えたいポイントは「仮にでも決めきれない人はどうするべきか」ということです。
そして、その結論は小タイトルのとおりです。やりたいことが決まらない人は『スタンス』を高めることに集中してください。
スタンスとは、上記の通り、仕事への姿勢、プロ意識、強みの資質などのマインドセットのことを指します。スキルを入れる器のようなものであり、スタンスが悪いといくら経験をしようが学ぼうがスキルは身に付きません。逆に言うと、若いうちに成功のスタンスを身に着けることができれば、その後のスキル獲得スピードや吸収力は一般の人のそれに比べて圧倒的になります。
健太が選んだスタートアップは、スキル獲得以上にスタンスの醸成という観点において最高の環境だと言えます。よく「一番成長できる環境はどこですか?」という質問を受けますが、成長できる環境は以下の二つがある会社です。
つまりは「人の魅力」と「ポジションの魅力」です。優秀な人が同じ会社に所属しているだけでは意味がなく、自分と同じチームとして関わらないと条件には当てはまりません。ポジションは天井やレールといった枠ができるだけ何もない状態で、進むべき道を常に自分で決め、進むスピードを常に最高速度であることを求められる環境が最高です。
このように言われると賛否は真っ二つに分かれます。根っからのスタートアップ気質の人にとっては最高でしょうが、大多数の人にとっては不安な環境でしょう。現に、健太も3ヵ月で相当疲労し、ギブアップ寸前まできています。しかし、20代にこのような環境でスタンスを磨くことは、これから続く長いキャリアにとっては非常に重要なのです。
一般的な企業の環境と、上記のようなスタートアップの環境の差は、一般道路と高速道路に例えるとわかりやすいと思います。一般道路から高速道路に入る際に、そのスピードの差から初めて合流する人は恐怖を覚えるでしょう。また、この高速道路は現実世界のそれと違い、スピードの制限がない道路です。ぎゅんぎゅんスピードを上げていく人についていくのは怖いですよね。しかし、今までの経験を思い出してください。最初は怖さを感じたスピードも走っているうちに慣れませんでしたか?また、高速道路から一般道路に降りた時に、周りの車の遅さにもどろっこさを感じませんでしたか?そう、人は慣れるのです。20代で時速100キロ以上で走ることに慣れた人と、時速40キロで走ることに慣れた人の差はどんどん開くばかりで、途中で追いつかれることはありません。
慣れるまではしんどいです。新卒で最初からこの環境に飛び込むならまだしも、健太のように中途採用で入るとギャップから疲弊してしまうのは無理はありません。しかし、20代ならまだ変えられます。もちろんいくつになっても変わることは可能だと思いますが、できるだけ若いうちにこの環境を選ぶ方が適応は早いでしょう。
②知的職種ならば修行時間を長くとるのではなく『濃く』する努力をする
ここで間違えてはいけないのは、時間を「長く」とることではないということです。人間は自動車と違い疲労がたまるとパフォーマンスが落ちます。よって、「若さ」「やる気」「時間」をフルに使いすぎると壊れてしまいます。
よく「1万時間の法則」について言及されますね。「1万時間の法則」とは、アメリカの著述家であるマルコム・グラッドウェルが、著書『天才! 成功する人々の法則』の中で提唱した法則で、骨子をまとめれば次のようになります。
これは真実なのでしょうか?プリンストン大学のマクナマラ准教授他のグループは「自覚的訓練」に関する88件の研究についてメタ分析を行い、「練習が技量に与える影響の大きさはスキルの分野によって異なり、スキル習得のために必要な時間は決まっていない」という、極めて真っ当な結論を出しています。
グラッドウェルはバイオリニストに関する研究から「1万時間の法則」を導き出したわけですが、この結果をみれば、確かに楽器演奏は相対的に、練習量がパフォーマンスに与える影響の大きい分野であることがわかります。しかし、私たちの多くが関わることになる知的専門職はどうかというと、努力の量とパフォーマンスにはほとんど関係がないということが示唆されています。
つまり「とりあえず長く頑張る」ということが絶対ではないということが言えるのです。ここでようやく時間を「濃くする」ということの方法をお伝えします。
時間を濃くするために重要なのは、①アウトプットファーストで考えること、②経営のKGIに近いアウトカム目標を持つこと、の2点です。
①アウトプットファーストで考える、とは以下のような図のイメージです。
知らないとできない、わかってないと話せない、つまり、インプットしてからじゃないとアウトプットできない、と考える人が多いのですが、その順番だと上図のとおりムダが生まれます。逆に、できるためには何をしらないといけないか、話すためには何をわかっていないといけないか、というアウトプットファーストで考えた方がインプットが洗練されるということを言っています。これで、無駄な時間は極限までなくすことができます。
次に、②経営のKGIに近いアウトカム目標を持つ、とは、コーポレートバリュー、フリーキャッシュフロー、WACC、売上高、粗利益、営業利益、などの経営指標を直接自分の目標として持つことです。これは確実に小さな組織でないと難しいことがわかると思います。経営の最終責任をいちメンバーに託すなんてことは大手企業ではできませんからね。
最終責任を持つということをコミットすると否が応でも集中します。そして、最終責任を負っているがゆえに、とんでもない事態が起きても全て自分で対処する必要がでてきます。このとんでもない事態というのが、「修羅場、土壇場、正念場」です。この3場の定義は以下の通りです。
魂のコンペ、納期直前の無茶な仕様変更、戦略の大幅変更、期末最終日の大型提案、法改正やパンデミックによってマーケットが一気に消失する、などの状況で、如何に自分で考え、如何に行動し、如何に楽しみ、如何に学ぶか、ということです。経営者を育てる唯一の方法は「責任のある決断をどれだけさせるか」ということだと言われています。これを繰り返すことで、人の胆力は鍛えられ、その後のキャリアに大きく影響することは間違いないでしょう。
③コーチを見つけて『現状の外にゴール』を作る
ここまで社内環境について話してきましたが、3つ目は社内を離れた社外の話をしたいと思います。スタートアップはものすごいスピードで進むからこそ、自分の視野が狭くなるという不安要素もあります。先ほどの高速道路の例えに戻るとわかりやすいと思いますが、スピードが速まるほど視界がどんどん目の前の一点に絞られてきますよね。
重要な一点の視点に集中できるというメリットの裏返しに、視野が狭くなるというデメリットがあるということです。具体的には、社内や仕事の関係者の人としか話さなくなる、話題が自分の仕事に関わることだけになる、というような状態です。
これはこれで良いと考える人もいると思いますが、このnoteでは、ゴールが定められない人が仮のゴールを作ったという前提で進めているため、視野を狭めることはポジティブな要素だけではないでしょう。
そこで重要なのは社外にコーチを見つけることです。ここでコーチとメンターを混同してしまうと目的を果たせないので、違いをしっかり理解しましょう。
このように定義するとコーチが社外にいることは必然になります。また、メンターよりも高度なスキルが求められるため、いち先輩のような存在ではコーチになり得ないこともわかると思います。
業務時間内は、KGIに集中し、濃い時間を過ごしながら、自身のスタンスを高めることに集中すべきです。一方で、業務時間外では、自分のwant toに対して誠実に向き合い、より遠くにあるより魅力的なゴールに対してワクワクを醸成させることが重要になります。一見、矛盾するこの両者を成立させることで、自分の中の自尊心と自己効力感が高まります。
コーチングについてはここで書ききれないほど深いので、別のnoteにまとめたいと思います。
終わりに
いかがでしたでしょうか?②はかなりスタートアップよりの環境にいることを前提で解説しましたが、より経営のKGIに近いものをアウトカムとおけるようにする、という要素を取り入れてもらえればと思います。
いずれにせよ、一昔前と違い「社会や会社が自分のキャリアを作ってくれる」という時代ではなくなりました。自由と責任を持つことに不安を覚える人も少なからずいるでしょうが、VUCAの時代に社会や会社に依存するのは相当危険です。このnoteを読んでいる方の中にも、企業に所属し、企業にキャリアを委ねている方も多いのではないかと思います。しかし、企業側も従業員に「自律型人材」になることを求めているように、個人も企業に所属しながらも自律しなければならない時代なのです。
「自分の人生の主役は自分である」この意識を強く持ち、まずは転職活動を行いながら「自分の現在地」を確かめてはいかがでしょうか。転職活動を行っても、結果として現状の会社に残留する、を選んでもいいのです。また、コーチを見つけることも大事です。今回は「20代でやるべきこと」と題しましたが、このnoteに書いたことは何歳になっても重要です。「気づいた今が人生で一番若い時」ですよね?「現在地の確認」と「ゴール設定」を行って、キャリアを自律的にクラフトできる人が増えることを願っています。
健太のストーリーを読んで他人ごとではないと思った人は下記よりご連絡ください。
それでは今日も素敵な一日を!
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