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あの日の言葉。あの日の写真。

多感な10代の頃に出会った言葉やフレーズを、今でも覚えていることがある。例えば、尾崎豊の「知人」という詩の一部。

たくさんの男があなたに惚れたが あなたは僕を見つめていた
でも 小さな町外れで 君は結婚し どこか遠くで暮らしている
たぶん昔の君のままで、、、、、、
他には誰もいなかった、、、、、、

この詩は私が高校一年生の時に文芸誌で出会った。尾崎豊は小説と詩の連載をしていた。私はそれが目当てで毎月その文芸誌を購読していた。

この詩のような経験があるはずもない年齢で、ただ想像するしかなかったが、とてもリアルに感じた。太古の記憶がそう思わせたのか、その後何年も私の胸に残った。この詩に影響された自分の創作もある。

私も半世紀近く生きてきたが、この詩のような経験があったかどうかは野暮だから応えない。ただ何年も、何十年も経ってからわかること、知ることがある。知らないまま、わからないまま時は流れて、もう後戻りできないことも、生きれいればいくらかは出てくる。いつも心残りのまま、人生は進んでゆく。

少し話が逸れるが、その文芸誌には尾崎豊の写真が掲載されていたが、撮影者の名前に「ハービー山口」という名前があったのをいつまでも覚えていた。日本人なのか、外国人なのか。私は当時高校球児で全く写真に興味がなかったが、この「ハービー山口」氏が撮った尾崎豊の柔和な表情が深く印象に残った。

それから10年以上経ってから私は写真を始め、ようやく「ハービー山口」氏の写真や存在を認識するようになった。福山雅治の写真でハービーさんの写真に再会した。

さらに10年余り経った頃、ハービーさんにお会いする機会があった。そしてあの時、高校生の時に観た尾崎豊の写真についてお話することができた。笑顔の写真がとても少なかった尾崎豊だが、ハービーさんのカメラの前では満面の笑みで、それは両者の信頼関係の証だろう。あの写真に出会って20年以上。その撮影者と出会う日が来るなんて当時の私が知ったら、人生の不思議さにたいそう驚き、励まされもするだろう。

また写真を始める前に何気なく聴いていたCDのジャケットを、その後お会いする機会があった写真家が撮影されていたこともあった。谷村有美を平間至さんが撮影されていたり、橘いずみを藤代冥砂さんが撮影されていたり。いずれも随分と時間が経ってから、その偶然と人生の不思議に驚くのである。

話を戻すと、多感な頃に出会ったものは終生、自分に纏わり続ける。その殆どが、私は良いことだと思う。好奇心の翼を広げている限り、それは自分を温かい気持ちにさせてくれるだろう。励まし、希望にもなるだろう。私はそうだったし、これからもきっとそうだろう。

多感な頃にどんなものに出会うか。それは育った環境や文化に影響されるところが多々あるが、どんな宿命をその人が背負っているかで出会うものや起きることは、あらかじめ決まっていると思う。未来の出会いや出来事が、過去の自分に出会わせているのだ。そんな時間の流れ方を私はここ数年で感じるようになった。私の行く末はすでに決まっているのだ。自分のやるべきことを泰然自若のさまで続けてゆけば、きっと定められた場所に辿り着けるのではないか。なかなかタフなことが多いけど、もうそれはしょうがないこだと、私は受け入れている。




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