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送りバントとポートレート
ポートレートのお仕事を頂き始めた頃、
私はそれを野球の送りバントに例えていました。
失敗が許されない、出来て当然の仕事。
経験が浅かった分、肩に力が入っていたと思います。
私は高校を卒業するまで10年間、野球部でした。
それ以外にひとつの物事を10年以上続けた事が無い私には、
野球部での経験が人生の道標でした。
さて送りバントは一見簡単そうに見えますが、とても技術を要します。
私は試合中に送りバントのサインが出ると、最も緊張しました。
そのせいかバントを成功した事も失敗した事も、全く覚えていません。
エラーをした事や、ヒットを打った事は覚えているのに、
とても不思議です。
出来て当然、失敗は許されないというプレッシャーを
野球を通して経験出来た事は、撮影の依頼を頂き始めた頃の私を
とても助けてくれたと思います。
現在は少しだけ場数を踏み、余計な力も減りましたが、
適度な緊張感を持って撮影に臨むよう心がけています。
無心でバッターボックスに立ち、投球を待つという感じです。
ストレートが来るのか、カーブが来るのか解りません。
傾向を読み、予測する事は出来ますが、
あとは打席でいかに対応するかです。
撮影も同様だと思います。事前に被写体の事を調べ、イメージする。
しかし実際お会いしてみると、イメージと異なる事は多々あります。
また現場では色々な事が起こります。写真以外の事も含めた
それまでの積み重ねが、大きく物を言うと思います。
撮影が無事終わると、野球の試合後のような心地良い疲れを感じます。
また同時に課題も見えてきて、身の引き締まる思いもします。
撮影料を頂く限り、「送りバント」を決める事は必須です。
それが結果的にヒットになったり、価値のある一打になれば、
さらに依頼を頂けるかもしれません。
ヒットや殊勲打への欲はありますが、まずは走者が確実に進塁出来るよう、
送りバントの精度を高めたいと思います。
その成果が自らも生きるバントヒットや殊勲打に繋がると、
私は思っています。
(2010年の自身のブログより転載、加筆修正)