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Camera Peopleのはなし

Camera Peopleという写真集の表紙に3度、作品を使って頂いた。
女生徒の写真である。

私は数年間、帰省の度に高校生を撮影し、それを展示していた。
彼女も撮影に協力してくれたひとりである。

私は生徒を撮影する際、自ら被写体を探さないと決めていた。
最初に声をかけた生徒の紹介という方法をとっていた。
紹介の紹介と、誰に会えるか解らない。
偶然の出会いに委ねてみようと思った。

数年前の夏の日、生徒を撮影し、車で帰宅する途中、
目に留まった女生徒がいた。
ほんの一瞬だったが、特別なものを感じた。
佇まいがとても神聖だった。
自分のルールを破って彼女を撮ってみたいと思ったが、
引き返すことはしなかった。

翌日、本日の被写体(生徒)との待ち合わせ場所へと向かった。
帰京して展示する期日が迫っており、少し焦っていた。
生徒はみな素敵だったが、私の出来にもうひと押し必要なのが
フィルムを現像する前から実感できた。
そんな思いを充たしてくれる出会いがあればと願っていた。

待ち合わせ場所に着き車を降りると、女生徒が待っていた。
少しだけ時間が止まった。
昨日運転中にすれ違った、あの女生徒だった。
その瞬間に、全てが決まっていたと思う。
その写真の未来も、もしかしたら彼女の未来も。

半年後、桜の季節に再び彼女を撮影した。
それ以来私は高校生を撮影していない。

少しブランクがあるが、また郷里の高校生に会いたいと思っている。
私も少し歳を経た分、違うものが見えるだろう。
そして変わらないものも、改めて感じるだろう。
彼等を通して、いつも自分を探している。

(2010年の自身のブログから転載、加筆)






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