エッセンシャル・スコティ・ムーア&クリフ・ギャラップ/エルヴィス・プレスリー&ジーン・ヴィンセント (‘10)
The Essential Scotty Moore & Cliff Gallup (‘10)
ヨーロッパのリマスター再発レーベルのプリモからリリースされた2枚組音源集。収録曲はエルヴィス・プレスリーとジーン・ヴィンセント&ヒズ・ブルー・キャップスの初期の曲である。
今回このアルバムを取り上げたのは、その切り口が興味深かったからである。ロカビリーのコンピレーション盤は数え切れないくらいリリースされているが、このアルバムはエルヴィス・プレスリーとジーン・ヴィンセントのギタリストとして活躍したスコティ・ムーアとクリフ・ギャラップに焦点を当てたものである。
CD1はエルヴィス・プレスリーの’54年〜‘57年の録音で、サン・レコードからリリースされたものが中心になっている。彼らの初期のサウンドを決定づけたのは、エルヴィスの歌唱力ももちろんだが、スコティ・ムーアのギターテクニックも大きな要因である。
チェット・アトキンスから影響を受けたスタイルに、今では当たり前のテクニックであるが当時はカントリーではあまり使われなかったチョーキングを取り入れ、その後のギター史の発展に繋がる重要な役割を果たした。
興味のある方は、後期のエルヴィス・プレスリーのギタリストであるジェームス・バートンも聴かれることをオススメする。彼はソロアルバムもリリースしており、比較的入手しやすいと思う。
CD2はジーン・ヴィンセント&ヒズ・ブルー・キャップスの’56年〜’57年の録音。わずか35曲の録音を残しバンドを去ったクリフ・ギャラップは、グレッチのデュオ・ジェットを使用し、フラットピックを持ちながら2本の指でフィンガーピッキングをおこない、さらに小指はビブラートのアームに使用するという独特のスタイルを作り上げた。
ブルー・キャップスには後年になって、ジョニー・ミークスというギタリストが参加し、彼もロカビリーギターのパイオニアとして知られることになる。
ジェフ・ベックやキース・リチャーズもインタビューや伝記で、彼らに大きく影響を受けたことを公言している。
廉価盤でも素晴らしい内容のCDもある。特にヨーロッパではロックの研究が進んでおり、私も過去の名盤が国内でほとんどが廃盤の時代に、オランダ盤やフランス盤のレコードを探して購入した。