「顧客本位は、貧乏を生むか?成功への階段か?」
すべての金融機関に求められている顧客本位の業務運営原則。
顧客本位貧乏という言葉もでるなか、成功の道筋が見えてくる
金融庁が金融機関に向けて、「顧客本位の業務運営に関する原則」というものを策定して、既に4年が経過する。その間、顧客本位の営業を徹底することは、金融機関としては収益が上がらない。それどころか、「顧客本位貧乏」という言葉まで出てきたようだ。
果たして、顧客本位と収益は、両立しないものだろうか?
多くの金融機関は、売る、収益を上げるということばかりに、視点を持ちすぎているのではないか?例えば、自行が融資しているような会社、商店を見てみたい。
儲けることばかりを考えている会社が、本当に利益を上げているだろうか?もしかすると短期的な利益はあげているかもしれないが、永続的に利益を上げているところは少ないはずだ。金融機関として、同じ考え方をしていないだろうか?
例えば、街の焼鳥屋でも想像してみるといい。自分が何度も行きたくなる店はどんなところだろうか?味がおいしいところ。値段が安いところ。大将と話していて気持ちのいいところ。居心地のいいところ。評価する軸は人それぞれかもしれないが、やはり選ぶポイントがあるはずだ。その結果、やっぱり、いろんな店があるけれど、この店がいいよね。と選んでいる。
お店は、顧客から選んでいただくためにどんな努力をしているのだろう。当たり前だが、おいしさを追求する。値段もできる限り適正な価格で提供する。その他、来店される顧客のことを考えて、顧客が喜ぶことは何かを考えて、出来ることを精一杯行っているはずだ。
金融機関は、どうして、こんな単純なことを忘れてしまうのだろう?
規模が大きいから。金融だから。他行がやっていないから。。。
顧客が喜ぶことは何かという視点から、サービスを考えたことがあるのだろうか?
昔から、「三方よし」、「先義後利」という言葉がある。これは建前や理想だけを述べているのではなく、商売の真理だと感じている。金融もれいがいではない。
過去、ソニー生命に川島さんという社長がいらっしゃった。惜しくも既にお亡くなりになられているが、私は、ソニー生命時代に、川島さんが、絶えず話されていた「先義後利」という言葉を決して忘れない。
生命保険セールスにおいて、ついつい自分都合で販売しようとしてしまう。自分の利益のために、生命保険を販売していないか?それよりも、誰かを助けたい。誰かの役に立ちたい、という思いを持って、とことん顧客に尽くして、尽くして、尽くすこと。この心持ちを持って顧客に接することが大切なのだ。利益は必ずついてくるから、焦るなと。どんな場所でも、この話ばかりされていた。
フルコミッションの生命保険セールスにおいて、新人は食べていく必要がある。だから焦る。結果、悪循環に陥る。こんな場面を数多く見てきた。正直、この考え方を貫くには、精神力はもちろん、資金的、時間的余裕も、必要だと感じていた。
昨今、IFAにおいても、負の連鎖に陥っている会社が散見される。
スタートアップで、収益を稼ぐために、仕組債など、利益率の高い商品を主軸に販売しているケースも見受けられる。本質的に、顧客の要望に沿った提案ならいいが、〇%抜けるからと言った動機で販売していないだろうか?正直、新人のフルコミ生命保険セールスと同じような負の連鎖に陥らなければいいのだが、と感じている。
この点、生命保険代理店などが主軸の会社がIFA参入する場合は、収益基盤がしっかりしているため、スタート時から、理想に向けたセールス形態をしっかりと構築することが可能だ。そのうえで、数年間しっかりとした営業活動が実践できたならば、生保と投信の理想的な収益バランスが確立できる。今後のIFAにおいては、スタート時点の資金力が、ものをいう世界になってくるかもしれない。
その点、銀行も、証券も、揺るがない資金力を保持している。いくら収益率が低くなったとはいえ、この数年で屋台骨が揺らぐはずはない。
なのに、顧客の喜ぶ顔のためではなく、販売手数料が取れないから、信託報酬が減少するからという理由が先立ち、ラップや投資助言モデルで継続収益が得られるモデルを導入する。銀行と証券会社との提携を促進する。といった、各行横並びの、先義後利の真逆である「先利」を求めた戦略展開を行っているように見受けられる。
どこか、真の顧客本位の、「先義後利的なビジネスモデル」を展開する会社が表れてこないだろうか?
それには、ビジネスモデルの構築を行いながら、営業利益を2,3年のスパンではなく5年超で見る必要があること、あわせて社員の評価体系も、単年度収益額という観点から、ビジネスモデルに則った活動を実行したかどうか?顧客の評価は高かったか?といったものに変化させる必要もあるかもしれない。
よく言われる話で、コミッションビジネスからフィーベースへの転換は時間がかかるうえに、残高が積みあがるまでは収益が上がらない。営業担当者も、転勤や異動なく、じっくりと長期間で育成を図らなければならない。
どこの会社もできていないということは、やり切ったところが勝つ。先義後利で、顧客の伴走者として寄り添っていくスタイル。このスタイルをじっくりと構築できるところが、顧客本位貧乏から脱却し、顧客から信頼の連鎖を生み出す、顧客本位成功企業への転換をはたすのではないだろうか。
そろそろ、一行でも、こんな面白い動きをする金融機関が表れることを、密に期待している。
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