サッカー脳で、ファインダー越しに覗いた「ファジアーノ岡山の世界観」
僕の思考回路はサッカー脳
2020年から大手企業だけでなく一般企業に至るまでリモートワークが定着し、否応なしに働き方改革が始まりました。
今現在、まん延防止等重点措置区域では取引先の担当者とお昼ごはんへ行く機会のほか、忘年会や新年会といった昭和・平成の時代で言う「ノミニケーション」の自粛が延長されています。
早くハシゴ酒がしたいと思う反面、いわゆる「上辺だけの付き合い」がなくなったという意味では、お酒を呑みに行くことへの自粛が続いてもいいのかなとも思います。ただし、飲食業やお酒の卸業や小売業を営む読者の皆さまには本当に痛手しかない。
取引先の担当者との雑談は、これまでのようにゆっくりできなくなりました。そのような中でも旅行の話題となり、そこで僕はふと気づいたのです。
僕の思考回路はサッカー脳になっていることを。
ここでいうサッカー脳とは、とある事柄を何でもサッカーと結びつけてしまう思考回路を意味します。
たとえば旅行先の話題で「石川県へ旅行する」となった場合、読者の皆さまはJ2クラブ・ツエーゲン金沢へのサッカー旅を真っ先に思い浮かべたのかもしれません(そうあって欲しい)。ツエーゲン金沢のマスコットである悪の秘密結社党首・ヤサガラス様はYouTube番組でサッカー脳の夫を鋭くぶった切っています。
残念ながら完全に夫はサッカー脳に侵されています。
また、その他に以下のような県名などで真っ先に思い浮かべるものを並べてみます。
・岩手県
グルージャ盛岡、盛岡ゼブラ
・千葉県
柏レイソル、ジェフユナイテッド千葉「夢を叶える」
・岐阜県
FC岐阜、西濃運輸サッカー部(1997年度に解散)
・ホンダ
Honda FC、ホンダロック、ホンダルミノッソ狭山
ジョイフル本田つくば
本田圭佑(元日本代表)
本田圭佑(元東京武蔵野ユナイテッド)
・うどん
カマタマーレ讃岐、トン子
・焼酎
鹿児島ユナイテッド「焼酎は25度」
テゲバジャーロ宮崎「焼酎は20度」
思いつくまま県名などを書き上げていくと、僕の思考回路はサッカー脳だなとしみじみ思います。
このように県名やモノなどからサッカークラブ名を思い浮かべられるのは、各クラブの地道なホームタウン活動の情報を発信し続けてきたからだと思います。
また、クラブが発信し続けた情報をサポーターが確実に受け取り、クラブから発信されていない本拠地の情報なども色とりどりに輝かせ、SNSを使って他のサポーターやサッカーに興味のない人たちへと響かせてきました。
ジェフユナイテッド千葉で夢を叶える、焼酎は25度または20度、といったキーワードはサポーターならではのアイデアですよね。これこそ思考回路がサッカー脳の真骨頂と言っても過言ではないでしょう。このようなキーワードを日頃から積み重ねてきた結果として、クラブ名や地域名などが認知された結果です。言い換えれば、サッカーを観る文化、すなわちサポーター文化がより深く根付いたとも言えます。
このようにサッカー脳の思考回路は色々な場面でのコミュニケーションツールとして非常に有効となります。
サッカー脳は使用上の注意が必要です
ところが、この思考回路は時に危険だなとも思うのです。
1月末に栃木シティFCのホームスタジアムに関する訴訟のことや、三重県鈴鹿市に建設予定のサッカースタジアム建設反対運動について報道がありました。
サッカー脳になっている僕は2つのスタジアムに関する反対意見について、反対意見となる根拠部分やその背景をイメージできなくなっていたからです。
栃木シティFCのスタジアムに関する訴訟は、栃木市が設置会社に公園使用料や固定資産税を免除するのは違法なのかを争点としました。判決は違法と結論づけました。報道やSNSなどで判決文の中で特に注目されたところは、「スタジアムに強い公益性があるものとは到底認められない」とする点です。判決文を全文読んでいないので判決に関するコメントをしません。
サッカー脳となっている僕や読者の皆さまは、サッカーの試合があるスタジアムはいわばお祭りをイメージすることができます。スタジアム内ではサッカーの試合を、スタジアムの外ではスタグルを食べ、トークショー等のイベントを楽しめることも知っています。
しかし、サッカーに全く興味がない、スタジアムへ足を運んだ経験がない方からすれば「スタジアムはお祭り」ということを想像すらできません。
もしかすると関東リーグの栃木シティFCがスタジアムでJリーグクラブと似たようなイベントを開催しても、「Jリーグではないから人は集まらない」と思い込まれているのではと考えられます。
この視点は、宇都宮徹壱さんの著書『股旅フットボール』11頁目のまえがきに記されている「その国のフットボール文化は、下部リーグこそ現れるのではないかー」という一文に繋がると考えます。
サッカー脳の私たちがサッカー観戦は楽しいぞ!とたくさん発信していても、サッカーに興味がない方々へまだ響いていないとも言い換えることができます。
この地方裁判所の判決はサッカーもとよりスポーツ文化に対する理解度を反映した一面を浮き彫りにしたと言えます。
ただし、ここまでの考えに至るまで1週間ほど時間がかかってしまいました。すぐに要点を整理し、理解できなかったのは僕の思考回路がサッカー脳に埋め尽くされている証拠でもありました。
ファジアーノ岡山の世界観を覗きに行く理由
2月20日、岡山県シティライトスタジアムで開催された2022年J2開幕戦・ファジアーノ岡山とヴァンフォーレ甲府の試合を観戦しました。
そもそも僕の2022年サッカー旅計画ではレノファ山口以外のJ2クラブの試合を観に行く予定をしていません。にもかかわらず、岡山県へサッカー旅をしてきました。
「思い立ったら吉日、ほな行こか」という軽いノリで出かけたのではない。その理由は付き添いで行ったスナック店での会話がきっかけです。
時は12月上旬。立ち呑み屋でサクッと食して帰宅ムードを醸し出した20時半を回った頃、先輩のLINEは異様に騒がしくなっていました。はい、飲み屋のお姉さまからの営業です。
1年生は地獄、2年生は天国、3年生は極楽という上下関係は高校卒業後も続きます。先輩から「最後1軒つきあってよ」と言われると二つ返事で先輩を立てるのが後輩の役目。令和の時代に悲しき体育会系の上下関係。時代遅れだと思いつつも、久しぶりに歩く神戸のネオン街で気分は高まり、歩くだけでも楽しんでいる僕は昭和の男なのでしょう。
スナック店などで初対面の時の質問攻撃ありますよね。この手の会話は苦手です。「年齢、職業、趣味」を面接試験のように答える過程が非常に面倒くさい。そして、隣りについた店員が席を離れた瞬間、店主や誘った方から「彼女はどうですか?」「最高でーす!!」のような受け答えをしなくてはならないヒーローインタビュー形式の会話も億劫で嫌いだ。
「そうですねぇ〜」など繋ぎ言葉を多用するヒーローインタビューが苦手な選手の気持ちは痛いほどわかります。
とはいえ、僕は今年で44歳。面接試験やヒーローインタビューが面倒も嫌いも言っていられない年齢です。この日の僕を接客していただいた方は岡山県出身の店員(お店年齢は23歳)。
僕が岡山弁の「~がー」をわざと使って話しているうちに店員さんの岡山魂をくすぐってしまったのか、まるで岡山県観光大使の如く、岡山県の魅力を熱く語り出しました。岡山県へのサッカー旅も良いなと想像してしまうぐらいに店員さんの岡山県話に引き込まれていきます。
ひと通り語り尽くしたのか、次に店員さん(以下、「岡山県観光大使」店員とする)は岡山県の残念ネタ話を始めました。そこで耳を疑う発言をしたのです。
「なんで岡山県にヴィッセル神戸みたいなサッカーチームがないのですかね?」
ちょっと待てぃぃぃぃぃ!!!!
サッカー脳の皆さまからたくさんのツッコミをいただきました。誠にありがとうございます!
「初対面の方とのお酒の席ではサッカー話は禁句」という掟を持つ僕はこの時ばかりは掟を破り、ファジアーノ岡山の話をしました。また、ヴィッセル神戸の成り立ち―元々は岡山県倉敷市に本拠地を置く川崎製鉄サッカー部だったことーなど解説したあたりで宴もたけなわとなりました。
興味がないことは生活視野から無意識に除外されてしまいがちです。それは致し方ない。サッカーに全く興味がない方からすると、地元にプロサッカークラブがあることを知らなくて当然です。
しかし、ファジアーノ岡山が地域リーグやJFLを戦っている時代ではなく、Jリーグクラブになっている現在においても「岡山県観光大使」店員が知らないという事実は、サッカー脳の僕にとって少なからずショックを受けました。
なんだか偉そうにショックを受けたと言いながら、実はサッカー脳の僕でさえリアルのファジアーノ岡山の世界観をまだ知らないのです。
知らないという点では「岡山県観光大使」店員と変わらない。だからこそ、僕はファジアーノ岡山の世界観を覗きに行きたい。そして、「岡山県観光大使」店員がなぜファジアーノ岡山を知らないのか、その理由も探しに行こう。これが今回僕がサッカー旅をする理由です。
旅とサッカーをテーマとするOWL magazineは月額700円(税込)で様々な角度からサッカー文化に関する記事をご堪能できることをお約束します!
以下ではJR岡山駅周辺にあるファジアーノ岡山の広告を探したお話、チアゴアウベス選手のスーパーゴラッソなどを語ります。ぜひご覧ください!!
ご参考価格
・ファジアーノ岡山・バックA自由席:1,800円
・中華そば浅月 カツそば:930円
ここから先は
OWL magazine 旅とサッカーを紡ぐWeb雑誌
サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
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