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早坂吝『ドローン探偵と世界の終わりの館』の感想【ネタバレなし】
廃墟にやって来た探検部員達が、何者かに襲われる。部員の一人であるドローン探偵・飛鷹六騎は、ドローンからの映像で真相を解き明かしていきます。探偵が厳密には殺人現場におらず、ドローンで限られた映像のみ確認できるという設定が斬新です。安楽椅子探偵と呼べそうで呼べない感じでしょうか。
早坂吝作品を読むのは6作目。本作も最高でした。それでは、トリックについてはネタバレなしで感想を書いていきます。
トリックの斬新さを宣言している
第一章「読者への挑戦状」で、本作におけるドローンの定義と、トリックにドローンが用いられていることが明記されます。さらに本作のトリックが創造性に富むものであることが示唆されます。この不遜な感じが、騙された後に読んでみるとめちゃくちゃカッコいいです。
餌をたくさん撒いてくる
第一章から終章までは、意味深な描写が散りばめられています。トリックを見破ろうとして読んでいると、伏線かもしれない場面が多々見つかるため、何かを隠している印象は逆にありません。また探検部員の過去が徐々に明らかになっていき、一見犯人が誰であってもおかしくないように思わされます。ちなみに犯人視点の描写が所々入るのですが、緊張感を与えてくれるのと、ヒントがあるかもとわくわくするので個人的には効果的な方法だなと感じました。
見事に騙される
それでも無警戒だった方向から攻撃を受けたような、予想外の説明が終章でなされます。注意して読んでいなかった箇所がヒントになっていたり、ミスリードが巧妙だったりするため、自分の迂闊さを責めるのと同時に、著者との知恵比べに勝つことは容易ではないと改めて思い知らされます。解決編での丁寧な説明が、真相に辿り着けなかった読者に対して敗北感を与えてくるようです。
ただただ脱帽する
読み終えてから物語全体を見回してみると、著者の創造力の高さに感服せずにはいられません。メイントリックと、それに付随する伏線やミスリードを思いつくだけでも凄いのに、それらを披露するタイミングを考えながら、瑕疵がないように物語として最後まで書ききれるとは。正直これを千円以下の金額で楽しめることに恐縮してしまいます。
早坂吝作品は『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』、『誰も僕を裁けない』、『双蛇密室』等を読んできたのですが、全ての作品において、トリックが常人の発想ではありません。解決編前に看破するためには、高度な水平思考が必要です。他の作品の「読者への挑戦状」にも見られたビッグマウスな雰囲気も、著者に対しては信頼感が増すばかりです。せっかくミステリを読むのだから、前代未聞のトリックを味わいたい。絶対に騙されたい。そんな人には非常におすすめです。
あと気になったので、作中人物名と、北欧神話の神々との符合をまとめました。北欧神話の知識が全くないため、小樽猪知郎だけ分かりませんでした。
飛鷹六騎:ロキ
荒井透:トール
兵務足彦:ヘイムダル
国府玲亜:フレイヤ
海部零:フレイ
降続林檎:フリッグ
小樽猪知郎:?
御出院:オーディン
国府乗土:ノート?
春採太陽:バルドル
最後に、P90の小ネタはデスクリムゾンというゲームですね。