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辻村深月『名前探しの放課』の感想【ネタバレあり】

土日休みの2日、丸々あれば読み終えられる文量でした。


すみませんが、いきなりネタバレありの感想です。直接的には明示しませんが、内容に全く触れずに作品の素晴らしさを語るには、まだ文章力が足りません。

大きなトリック(読者を驚かせる仕掛け)があります。これが分かったとき、脳が数分フリーズしてしまいました。読み終わったら、もう一度最初から読んでみることをお勧めします。

読み返す前の時点で、「おや?」と感じる伏線がいくつかあったのを思い出せたのですが、そのヒントから結論に辿り着くのはかなり難しいと思います。話を追うことを一旦ストップして、伏線の共通点を見出し、「なぜそんなことをするのか?」という問いに想像力を働かせる必要があるからです。

ただ、上記のトリックを成立させるため(依田いつかが目的を達成させるため)、普通の人間ではあまり持ちえないある技術が必要だと思うのですが、思い出せないだけで説得力のある補足がどこかでされているのかもしれません。どちらにせよ、ある人物は首謀者でないのにも関わらず、裏でかなり練習していたのでは?と推測してしまいます。

ちなみに同じようなトリックが使われてるのを別の作品で見たことがありますが、犯人の行動が完全には予測できないのにも関わらず、定められたゴールに向けて進めないといけない点が、荒唐無稽に感じた記憶があります。

また読者とある人物の両方を欺きながら話を進める中で、文章に齟齬がないのが秀逸でした。

依田いつかが坂崎あすなに、「三ヵ月後に同学年の誰かが自殺するが、その名前はわからない」と告げ、後日秀人にも同様の告白をします。その際秀人の「誰が死ぬの」の問い以降、秀人が話を聞き終えるところまでが省略されています。読者は「あすなに対する回答と同じだから省略された」と思い込みますが、実際は秀人には誰が自殺するかを明言していました。あすなと秀人に打ち明ける順番が逆だったと仮定すると、当然ながら上記のミスリードは使えないと思います。

上記を含め、依田いつかが自殺する人物を思い出しており、それをある人物に秘密にしていることを、読者にも悟られずに物語を進めることに成功していると感じました。


最後に、ラスト1ページのいつかとあすなのやり取り、特にあすなの最後のセリフは、これまでに二人が過ごした三ヵ月を見てきただけに、熱い想いがこみ上げてきました。


天木のイメージは、暗殺教室の浅野君でした。あと天木と同じジャージを着ていたという、イギリスのバンドが気になります。

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