仕事で大切にしている4つのこと
「仕事をする上で、大切にしていることは何ですか?」
社長就任後すぐに行った社員面談で、僕はこの質問を投げかけました。「クライアントの期待に応えること」「チームワークを高めること」「一つ一つの仕事を丁寧に行うこと」「自分にしか出せない価値を提供すること」など、それぞれが持つ仕事観を聞かせもらいました。それぞれの信念を共有し理解し合うことは、円滑なチームビルディングに役立ちます。今回のnoteは、僕が仕事をする上で何を大切にしているのかについて書いてみようと思います。
① 仕事に誇りを持つこと
最初に職業人の仕事観に触れたのは、大学時代のアルバイトでの経験です。当時、僕は京都木屋町の繁華街にある割烹居酒屋でホールスタッフのアルバイトをしていました。雑誌Hanakoに取り上げられるような人気店で、常にお店は満席でした。
アルバイトを初めて半年が過ぎた頃、事件が起こりました。一人のお客さんが酔い潰れ、トイレに鍵をかけたまま倒れて出てこれなくなりました。状況が酷くそのまま営業することができなくなり、営業時間中に店を閉めることになりました。他のお客さんに平謝りしてお帰りいただき、トイレの扉をこじ開けて中で倒れているお客さんを抱え上げ、救急車を呼び、救急隊の人を近くの大通りまで迎えに行きました。「こんな状況になるまで飲ませるな!」と救急隊の人に酷く叱られたのを覚えています。救急隊の人にまた平謝りして、搬送を手伝い、扉を閉めたときには疲労がどっと押し寄せました。
店に戻ると先輩たちがカウンターに並んで座り、休憩していました。僕も端の席に座り一休みしようとしましたが、酷い状況になっていたあのトイレのことを思い出しました。僕が最も後輩だったため、仕方ないと諦めてトイレに向かいました。トイレの扉を開くと、店長の平塚さんが一人で掃除をしていました。自分の仕事を店長にやらせてしまったと思い、あわてて「本当にすいません、僕の仕事なのに。直ぐに代わります」と謝りました。すると、平塚さんは僕の方を振り返り「これは俺の仕事だ。こういう一つ一つの出来事も楽しいよね」といってニコッと笑いました。仕事に対して誇りを持ち、胸を張ってそれを楽しいと言い、率先して行動する店長のことを「かっこいい」と強く思いました。平塚さんのことを、今でも職業人として尊敬しています。
② 誠意を持って仕事に臨むこと
掃除が終わった後、カウンターに戻り休憩する僕に平塚さんは「これから人が嫌がる仕事があれば率先して、笑顔でそれをやるといい。そうすれば自ずと人はついてくる」と話しかけてくれました。僕はこの教えを守り、誰かがやらなければならない仕事で人が嫌がるものがあればとにかく率先してやるようにしました。そういう行動を続けている中で、気づくと僕はアルバイトリーダーになっていました。
周囲の人、特にフォロワーは、その人の発言や行動をよく見ています。ですので、リーダーは他者から見られている意識を持ち、誠実な言動を心がける必要があるのだと思います。
誠意を尽くして相手に臨めば、どのような人でも動かすことができる。幕末の志士、吉田松陰が好んだ言葉です。誠実であることが、相手に対してとても大きな影響力を持ちます。相手に対する誠意を持つことが、仕事を進める上で最も大切なことだと思います。
③ 仕事を通じて徳を積むこと
パナソニックの創業者である松下幸之助は、役員を新たに登用する際に「彼(彼女)には運があるのか?」と人事に尋ねたそうです。運がなければ、その登用を見送ったと言います。「運はどのようにして身につければ良いか」とある人が尋ねたところ「運を身につけたいなら、一日一徳や」と答えたそうです。幸之助翁曰く、一つの善行を毎日積めば、一年で三百、十年で三千の感謝を集めることができる。その感謝があなたが窮地に立たされた時にあなたを助ける、人はこれを運と呼ぶのだと。
「徳のある人こそ人の上に立つことができる」これが松下幸之助の信念であったのだと思います。これはとても共感できます。
④ 仕事を楽しむこと
仕事観の違いを表す逸話に「漁師とビジネスマン」があります。
この逸話を聞くと、多くの人は漁師の主張に共感するのではないでしょうか。人生の究極の目的は幸福に生きることでしょうから、その観点において漁師の主張は正しいものに感じます。
リクルート組織行動研究所の古野庸一さんは著書「働くことについての本当に大切なこと」の中でこの逸話に触れ、漁師の主張には盲点があると指摘します。それは仕事が持つ楽しさです。漁師は仕事が持つ楽しさについて触れていません。もし、仕事が楽しいものなのであれば、短時間で仕事を切り上げるよりも、より長く仕事をすることで幸福感を得ることができるかもしれません。
仕事とは本質的には楽しいものなのでしょうか。あるいは苦しいものなのでしょうか。この問いに対する僕の考えは、「仕事の楽しさとは受動的に得られるものではなく、能動的に獲得するものである」というものです。多くの場合、成人の活動時間の大半は仕事に費やされます。週2日ある週末のプライベートを充実させるために、週5日ある平日の仕事を「生活の糧を得る手段」として淡々とこなすという発想には、どこか限界を感じてしまいます。
週末のプライベートを充実させることは当然幸せなことですが、週5日の仕事こそ楽しんで取り組み、これを充実した時間にしていくことが、より幸せな人生を過ごすための鍵だと思います。ゆえに、仕事を楽しむこと、楽しもうとする姿勢が大切なのだと考えます。
さいごに
今回は仕事をする上で大切にしていることを棚卸ししてみました。
どれも「言うは易く行うは難し」な事柄です。あらためて仕事をする上で、これらに意識を向けてみたいと思います。日々是精進。
Carpe diem. Seize the day, boys.
Make your lives extraordinary.
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