Corporate Venture Builderとは
先日初めてリモート飲み会を開催しました。
不要不急の外出を避けましょう!
今日はCorporate Venture Builder(CVB)について書いて行こうと思います。多くの方が初耳のワードかと思いますので。CVBは言い換えると、
スタートアップスタジオが事業会社と一緒に事業を立ち上げる
活動や機能のことです。さらに横文字が並んで恐縮ですが、スタートアップスタジオとは何だ???という反応もあると思うので、まずはそこから説明して行きましょう。
1. スタートアップスタジオとは
スタートアップスタジオとは、スタートアップを0から作りまくる組織のことです。海外だと、年間数社を立ち上げ、スピンオフさせるのが平均値のようですね。(実際に立ち上がらなかったアイデアも含めると、平均的に100件以上の事業を作っているとか)
実際に事業アイデアを探し、仮説検証をまわし、スケールさせて、売却するという一連の流れを、一人の起業家がドライブするのではなくて、スタジオ(複数の起業家を束ねた組織体)として実行していくため、過去の起業経験や開発・マーケ・リーガルなどの経験が反映され、成功確率を上げられる、そんなモデルです。起業家のパッションや原体験などよりも、勝てる市場を探していくモデルですね。「起業したいけどアイデア/やりたいことがない」という状態の方には結構ハマりやすく、かつ、海外の場合はそこそこの給与をもらいつつ0→1ができるので、起業でも社内新規事業でもない第三のキャリアとして市民権を獲得しつつあるようです。(スタジオによっては、EIR (Entrepreneur In Residence)ということで起業家としてのトラックレコードがある人間を雇うこともあります。)
モデルとしての歴史は古く、以下のGANのレポートによると、Idealab (1997年創業)が最初のスタジオになるそうです。このモデルが近年復活してきて、2013年時点では世界で80個しかなかったものが、2019年には200個以上になっている。また、トップのスタジオのExit率は高く、30%以上のポートフォリオをExitさせてるとのこと。Idealab、Rocket Internet、Science Inc、Betaworkなどのトップスタジオからはポートフォリオの4%がユニコーンと化している。(最も有名な事例は、Science IncのDollar Shape Clubですね!)
最近は日本でも急激に増えてますね!(DX重要度増、エンジニアリングリソースの希少性増あたりが原因?)
スタートアップスタジオそのもの詳細にはここでは立ち入りませんが、以下が参考になります!
2. 様々なスタートアップスタジオモデル
スタートアップスタジオを巡る議論がややこしいのが、様々なモデルがあるにもかかわらず、ラベルが一つしかない点です。例えば、上記のGANのレポートではスタートアップスタジオを以下のように分類しています。(ちなみにスタートアップスタジオは、Venture Builder、Startup Factoryなどと別の呼称もありますが、意味はほぼ一緒です。)
Venture Builder
Agency Builder
Venture Capital Lab
Accelerator Studio
Corporate Lab
University&Government Studio
Loose Studio
Racer Studio
Hybrid
さらっと確認していくと、
2-A. Venture Builder
実際に0から事業を作っていくスタジオ。アイデア出しからExitまでほぼ全部自前のリソースでやる。投資によるリターンが収益ポイント。事業ドメインの設定・仮説検証が強い印象。
(例:Idealab、Science Inc.等)
2-B. Agency Builder
デジタルエージェンシーが自前のソフトウェア開発・広告リソースを活用してやるスタジオ。プロダクト開発・マーケ力が高い印象。
(例:R/GA、Colab等)
2-C. Venture Capital Lab
VCに付属するスタジオ。投資先支援が主目的になる。主に開発は事業開発の支援。
(例:Primary VC、a16zもここに入るか?)
2-D. Accelerator Studio
アクセラレーター型で公募、締め切り、バッチ、DemoDayなどのプログラムサイクルが付属するスタジオ。
(例;500Labs)
2-E. Corporate Lab
後述します!
2-F. University & Government Studio
大学からのスピンアウトをサポートするスタジオ。
(例:UCLA Anderson Venture Accelerator、Fed Tech.)
2-G. Loose Structure
緩いつながり。スタジオとしてのルール・組織的基盤は持っていないことも多く、スタジオ???という感じはするが。
(例:イーロン・マスクの友人、Bam Ventures)
2-H. Racer Studio
特定の国でヒットしたビジネスを海外の別の国で模倣して高速で展開するスタジオ。
(例:Rocke Internet)
2-I. Hybrid
その他・・・
(例;Prehype、 10.10.10)
このように、スタジオモデルは多様です。日本でこのテーマが話題になる際は、主に2-A、2-B、2-Hが対象となることが多いですね。
3. Corporate Venture Builderとは
やっと本題です。Corporate Venture Builderですが、前項でのCorporate Labのことを刺します。どのようなスタジオかと言うと、大きく分けて2パターンあります。
1. イノベーションラボ(社内新規事業の出島環境を作る。リソースは内製)
2. スタートアップスタジオと一緒にやる
1に関しては、先日のこちらの記事をご参照ください。
ここでは主に2について見ていきたいと思います。
CVBでは、各社若干パターンは異なりますが、大体以下のような組み合わせで事業を展開していきます。
事業会社:事業アイデア・投資
スタートアップスタジオ:EIR・オペレーションチーム・Startupの経験・Digital技術
特にアイデアがほぼ100%事業会社に由来するのか、或いはスタジオのEIRやスタッフがそれを修正していくのか、この何れかでスタジオとしてのあり方は大きく変わると思います。(前者の場合はほぼ受託開発会社となる。また、既存の業務プロセスや事業を若干デジタル化したようなアイデアが出てくることが多く、顧客の課題にシャープに刺さってなかったりするため、単にアプリ作りましたみたいな事業になるケースがしばしば。)
傾向的に、事業会社の新規事業では、アイデア出し・仮説検証のプロセスがそこまで強くなく、特に日本の場合はデジタルとなると開発リソースをほぼ内部で抱えていません(SIerへ外注し続けたツケ)。このギャップを埋めるために、CVBモデル存在している感じですね。
社内新規事業チームを強化した上で、飛び道具的にCVBを新規事業開発のポートフォリオに加えていくのはありかもしれません。逆に社内新規事業チームが脆弱な状態で手をつけるのであれば、スタジオ側にドライバーになってもらうこととなるので、予算取りや決済プロセスでスタックしないようにするのがベターです!(スタジオ側のスピード感を抑えないことが最重要になります。)
CVBは事業会社側からするとポートフォリオが組み辛く、一発必中的な動きになることが予測されます。少なくとも、CVC・コーポレートアクセラレーター等のインバウンドによる社外中心のポートフォリオ構築を組み込み、新規事業全体のリスクコントロールが必要です。(社内公募型プログラムとセットでの実施も考えられますが、その際はどこをスタジオに担ってもらうのか明確にしなければ、特殊な受託開発会社となってしまいます。)
以下の記事が参考になりました!
4. 世界のCorporate Venture Builder
参考までに、世界のCVBのリンクをいくつか置いておきます。大体似たようなサービスを提供していますね。。。
ここはあまり情報がない・・・
事業会社のデータや専門性を活用する。自前のLabでスピンオフ事例を作りつつ、Corporate向けに特化したプログラムも用意している。
Carefour, Cocacola, Porcheなどの超大手との実績が多そう。
スイスのVenture Builder
ブロックチェーン特化型。Crypto系スタートアップのVCもやっている。
USA。コーポレートからのテクノロジースピンアウトをサポート。
ベルギー。プロダクト開発力が強み?
オランダ。コンサル風?
フランス。
BBVAなど欧州の大手が顧客。
北米系。
欧州のスタジオはこちらで検索できるようです。統計はありませんが、なんか欧州の方がCVB多い気がしますね。北米と比べてエンジニアリングリソースが社内に少なく、産業構造が日本に似ているからでしょうか?
その他スタジオ関係で参考になる記事をいくつか!
有難うございました🙏
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