【鉄道員の時計の話】
鉄道と言えば、時間の正確性が肝要。世界的に見てもその正確性は、トップクラスと言えます。そんな中で働く現場社員も、勿論のこと、時間厳守はしっかりと叩きこまれ、日々時間厳守を意識した行動を要求されます。
そんな社員と切っても切れない存在が、「時計」
少なくとも僕が経験した、駅員⇒車掌は時計とは切っても切れない縁。
11年間、とにかく仕事中は時計を意識する環境にあったわけです。
その反動?なのか、会社を辞めた現在、腕時計は手放し、そこまで時間を気にしなくていい生活になったのがうれしかったりもします。
鉄道業界では、旅客案内場面はともかくとして、仕事上では基本的にアナログの時計を使う場面が多いです。
駅勤務の時には、個人の時計を使うことになっていたので、デジタルの時計を使っている人もいましたが、乗務員になると、貸与される時計を使うことになり、この時には必ずアナログの時計となります。
しかし、一目で時間がわかるデジタル時計でなく、なぜ原則的にアナログの時計が使われていたのでしょうか?
昔はアナログ時計しかなかったので、その名残が残っているという可能性もありますが、もう一点、見逃せない点があります。
慣れていれば…という条件付きではありますが、時間の計算をする時には、実はアナログ時計の方が視覚的に入ってくるため、計算がしやすいということです。
デジタル時計だと、数式の計算になってしまうので、どうしても一瞬の瞬発力ではアナログ時計を見た時の計算とは違う…ということ。
これは、駅で働いているときに大先輩から聞いた話です。
確かに、そういわれると、現時刻を認識するだけならデジタル時計を見る方が便利かもしれませんが、例えば遅れ時分を計算したり、出発まであと何分、何秒か?という計算をする場面も数多く、そういった場面ではアナログの方が慣れれば便利だと思います。
そういえば、時計だけでなく運転士の速度計も、殆どの鉄道会社では新型車両であってもアナログ式の速度計を用いているところにも通じるかもしれません。
かといってデジタル時計が鉄道で全く使われていないかというとそうではなく、主にお客さんに対しての案内場面では、その時の時間を知れればいいということもあり、デジタル時計が多用されています。
しかし、この貸与されているアナログ時計もちょっと難点はあるのです。
働く側からすると、電波時計であれば一番ありがたいのですが、残念ながらそんなものではなかったです。
なので出勤前に、点呼場に置いてある基準時計と睨めっこして、必ず時計の時刻を合わせるわけです。その上で、点呼で上司と照合するのですが、その時にタイミングがずれていたら、しかめっ面で指摘を受けることになります。
これがなかなか面倒なモノ。合わせ方のコツというのも存在し、先輩より伝授はしてもらえますが、微妙に長針がズレてしまったりすると、時刻の見間違いのもとになるので、気を抜けないのです。
例えばですが、00分45秒ぐらいになると、長針の位置がかなり01分の位置に近づいているので、一瞬、あれ?01分45秒か?と錯誤しかねないのです。
長針の角度が何かの加減で少しズレていると、この錯誤が起こりやすいです。
これは車掌の仕事の中ではかなり致命的。
特に少し遅れていたりしていると、そのことが頭の中に入っているため、時計の確認もおろそかになってしまい、ふっと見た時に見誤ってしまうことがあります。
そんなことを思い出すと、時計にはとても気を使っていた…というより、神経をすり減らされていたのだな…と現場から離れた今だからこそ思います。