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【停止位置不良の悲哀 その1】

時々ニュースにもなるのが、列車が停車駅を通過したという話。そこまでではないものの、所定の停止位置を行き過ぎたり・・・ということは、そこそこ発生しているように思います。僕の所属していた会社でも、週に何件かはどこかの駅で停止位置不良!という掲示がされたりしていました。発生している軽微な範囲の事故の中では、ある意味一番多い事故なのかもしれません。
もしかしたらみなさんも、乗車していた列車で「停止位置を修正します」という放送と共にバックした…なんてことがあるかもしれません。
僕も、お客の立場で目の前で停止位置不良が発生したこともありますし、某私鉄の某ローカル線などでは、先頭のドアがホームから外れているのに、何事もないかのようにドア扱いをして、そのまま発車していったことなどもあります。
(これはめっちゃ危険だよ!)

停止位置不良の原因としては主に以下の通り。
・編成両数の勘違いによる
・意識の低下
・雨、雪などの天候による

こんなところが主な原因と言っていいでしょう。

僕の勤務していた会社では、〇メートルずれたら停止位置不良という運用ではなく、ある程度、車掌の判断に任されている部分はありました。
というのも、仮に3メートルの範囲ならという判断基準を設けた場合、編成両数と駅によっては、それだけズレてもドアが少しホームから外れてしまう…という駅も存在するからです。

停止位置不良となれば、やはり運転士さんはキツーイお仕置きがまっている。
数日間は乗務を外されて、屈辱的な日勤教育を受けることになるわけです。
JR西日本での福知山線脱線事故で、有名になった日勤教育ですが、鉄道業界、特に大手の会社であれば、程度の差こそあれ、それなりにその文化は残っているものと思われます。

まあ僕は、時間とホームの様子をうかがいながらではあるものの、ある程度の範囲ならオッケー範囲として、開けたりもしていましたね。
ゴメン!ありがとう!なんて言って、あとからジュースを奢ってもらったなんてこともあったなあw
僕自身も助けてもらうことがあったので、こういう時はお互い様です。

会社によっては、〇両限界 などといった、車掌向けの停止位置(行き過ぎ)の限界表示もあったりするのですが、そういったものはウチにはありませんでした。

停止位置不良に関して、こんなことがありました。
相方の運転士はベテランさん。
その時、運転台には職場の上司と研修から出たての運転士見習いさんが、線路の把握のため、添乗していました。
始発駅を発車し最初の停車駅。いつものように到着放送をして、ホームの状態注視…
あれ?いつもより速くないか??
まあまあなスピードで突っ込んでいく列車。
フルブレーキを掛けている模様だが、見る見るうちにホームが迫っている。
非常ブレーキに手を添えて、どうするか考えた。
このままだと停止位置を行き過ぎるのは間違いない。
正規の取り扱いなら停止位置不良として挙げないといけないところだろう。
しかし、上司も目の前で見ているというメンツもある。しかも見習いさんの前で。

列車は結局数メートルを行き過ぎて、ホーム内に停車した。2両と短い編成なので、ホームには入っているという判断が出来たのも幸いだ。

結局僕は、一瞬の間を置いて、ドアを開けた。
タイミングを遅らせたのは、その間に運転士から何かしら連絡があるかもと考え。
そのまま何事もなかったかのように、列車は終点まで運転していった。

上司も人間。その時にいた上司の立場になってみれば、目の前で見ていてなぜ防ぐことが出来なかったか?ということで責任を問われるかもしれない。(まあ恐らく見習いさんに色々教えていたのだろう…これは推測)
そうなったら色々と面倒なのは上司も同様。なかったことに出来るのなら、その方がいいと考えても??というところだ。
因みに、停止位置に止まれないと判断したら、非常ブレーキを扱うことになっているようだが、少なくともこの時、運転士による非常ブレーキは掛かっていなかった。
上司の立ち位置なら、その場で非常ブレーキを扱う指示を出すことも出来たハズ。
これももう一つの判断材料だ。

案の定終点で引継ぎ、休憩所へ戻る途中、その上司はちょっと笑み交じりのアイコンタクトで僕に目配せ。(まあ立場上、直接話すことは出来ないだろう)そしてベテラン運転士さんは、お小言を頂戴したようで小さくなっていた。

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