ムーンライトの思い出(その5)
【たらればな話】
現実的には、もう日本国内の夜行列車は復活することは非常に難しいと思います。分割民営化の弊害か、やはり会社間を跨ぐような列車の新設は、なかなかやろうとしません。
しかし現在、ヨーロッパで夜行列車の見直しが進んでいるように、もしかしたら将来的に、再び夜行列車が運転される時代がやってくるかもしれません。
高速バスも、運転士のなり手が少ないような状態。本来なら、ある程度の需要がある区間は鉄道が担ってもおかしくはないと思われます。
料金の問題
座席夜行であっても、流石に指定席料金だけでというのは安すぎたといえます。
これについては、いっそのことですが、「急行」として走らせた方がよかったのではないか?と思います。それとともに、青春18きっぷでも急行券を支払えば、急行に乗れるという特例も必要でしょう。
そうすれば、現行の料金体系でも指定席料金に1320円が追加されるのみ。一晩、座席であっても過ごせるのであれば一つの選択肢にはなると思います。多少は収益性も改善されます。
閑散期には、割安な追加料金で2席を使えるとか、お得なきっぷの販売で高速バスと対抗するのも必要でしょう。
逆に、寝台特急が凋落した原因の一つに、高い割に老朽化した設備があると思います。
最低ランクのB寝台でさえ6300円プラス特急料金と乗車券。
この値段は、並行する新幹線や飛行機の割引運賃の料金を上回ります。
寝台特急は運転区間にもよりますが、速さを求められるものではなく特急料金の設定はちょっとどうかと思います。
そして寝台料金。6300円もあれば、ビジネスホテルぐらいなら簡単に泊まれます。
しかも、個室というわけではなく(一部その料金で小さい個室のソロという区分もありました)カーテンで仕切られただけの空間。カプセルホテルの移住性にも劣り、料金に見合った設備ではありません。
ビジネスホテル+新幹線や飛行機でもそんなに料金が変わらないのであれば、ゆっくり動かないベッドで寝ることができるほうを選ぶのは賢明な判断です。
設備が多様化した列車が必要?
車内空間の限られているバスでさえ、様々な設備を用意して利用者の確保に努めています。新幹線以上の料金が掛かっても豪華な設備を用意したり、逆に4列シートで格安の旅をする若者を取り込んだり。
車内空間には鉄道の方が圧倒的に余裕があります。
また、完全に寝ながら移動できるというのは、現状の日本では鉄道が唯一の交通機関となります。これは一つ、大きなアドバンテージだと思います。
短編成であっても、車両ごとにバリエーションを持たせることも可能。
例えば、
短時間の乗車にも対応できる座席車(2+2シートだが、グリーン車レベルのゆったりした席に)
+
カーペットカー(サンライズののびのびシート的な?)
+
カプセルホテル的な寝台(定員を多くし、2000~3000円ぐらいの料金設定)
+
B寝台個室(1人用・またはエキストラベッドで2人利用も可能)
ぐらいのバリエーションがあればどうでしょうか?
普段使いであれば、上級客室よりも、こういった気軽に使えるような編成の方がウケると思います。
運用について
長距離を目指す必要はないと思います。
まずは都市圏を中心に考えて
東京~大阪(岡山)
東京~仙台
東京~新潟
大阪~新潟
大阪~博多
ぐらいでいかがでしょう?
これぐらいの距離であれば、新幹線等の終電よりも遅く出発し、始発よりも早く目的地に到着が可能です。
また短編成単位と考えたのは理由があります。
閑散期には短編成での運用としたり、繁忙期は増結することにより輸送力の調整ができるほか、始発・終点側で編成を分割し、複数方面への運転も可能となるからです。
関東であれば、大宮発や千葉発などがあってもいいですし、関西であれば和歌山、奈良などに分かれてもいいでしょう。
電車方式であれば増解結は簡単に行えるので、短時間の停車でも可能です。
(とはいえ、ダイヤ乱れに備えるためにある程度の余裕時間必要でしょう)
運営会社の問題
そもそも、夜行列車を民営化したJRに任せない方がよかったのかもしれません。
ヨーロッパでは夜行列車の運営会社というものが存在します。夜行列車の考え方として、定員が限られていることもあり、なるべく空席を少なくし、どれだけ乗車率を上げるかというところは通常の通勤列車や都市間特急、新幹線などに比べるとかなりシビアに考えなければいけないところだと思います。
乱暴な言い方ですが、新幹線などはとりあえず走らせていれば、かなりの利益を上げてくれる乗り物。
ざっくりとではありますが、新幹線単独で考えたら20パーセント程度乗車すれば、赤字にはならないといわれます。
これは普通車の片方の窓側が埋まるだけでオッケーということ。
それに対して夜行列車は、深夜時間帯の人件費など運転にかかわる費用が高いこともあり、料金を大きく値上げでもしない限り、なるべく乗車率を高めないといけないと想像できます。
ここは工夫ができる運営会社に任せるのがよいのでは?
具体的には、夜行バス運営会社などはいかがでしょう。
バスドライバーの不足もあり、今はバンバン走っている高速バスとはいえ、将来安泰か?というとそうでもないと思います。
特に、何台も続行で走るような需要の大きい区間は、本来なら鉄道が担うべきだと考えます。
すでに夜行バスの運行である程度夜行便のノウハウを得ている高速バス会社が運行の主となって企画し、そして実際の列車運行・運転業務にかかわる部分をJRに委託する形になれば、また新しい夜行列車の運行の形が出来上がると思います。