南海トラフ地震、鉄道各社の対策について
先日、宮崎県沖の地震に伴い、南海トラフ地震の注意情報が出されました。
それに伴い、鉄道各社は列車の減速運転や、特急列車の運休をはやばやと発表。路線によっては、お盆の書き入れ時という時に一切、特急列車を運転しないという、前代未聞のお盆になりました。
一応この注意情報、1週間で解除されたため、それと共に各社は通常通りの運転を始めていますが、その対策について考えてみたいと思います。
【徐行運転は有効か?】
代表的な例は、東海道新幹線です。
通常時、285km運転を行っているところを、東京~名古屋の一部区間で230kmに減速。そのため、10分前後の遅れが各列車に発生しています。
完全に事故のリスクを無くすことは当然出来ないのですが、地震発生時に重要なのは、まずはなるべく速度を落とすこと。
東海道新幹線では地震検知(第一波)とともに該当地域で即座に全列車に非常ブレーキを掛ける装置が備えられています。
僅か50kmほどの減速とはいえ、それでも完全停止までの距離・時間共に短縮できるため、例えば地震による崩落個所に侵入するリスクを少しでも減らすことは可能です。
また在来線であってもどの程度速度を落としているかは不明ですが、減速運転は有事の際に速やかに停車措置が取れる観点から、必要なことだと思います。
地震発生の可能性が、今までより高まったと判断された情報が出された段階なので、この対応は理解ができるところです。
徐行運転による遅れであれば、まだ社会全体への影響としては軽いと思われます。
【東海道新幹線の本数抑制はしなくていいの??】
僕は過剰な対策は反対派ではありますが、減速運転までするのであれば、これは大丈夫??という点があります。
それは東海道新幹線の運転本数。
お盆の最ピーク時、東海道新幹線は1時間に最大で16本(のぞみ12、ひかり2,こだま2)もの列車を運行します。
フルに走っている時間帯には、単純に考えて東京~新大阪間に40本以上は在線している計算となります。
このとき、駅と駅の間に多いところでは5本もの列車が走っていることがあります。
最新型のN700S系には非常時に最寄りの駅まで内部バッテリーで低速走行できる機能が備わっていますが、それでもとりあえず駅に収容することが出来ないことになります。新幹線の基本である、2面4線の駅の場合、通常は上り下りそれぞれに対して2本ずつ、特殊収容という手続きを取っても3本までです。
駅間での抑止となると、こういった際は電源の喪失も充分に考えられますし、なるべく避けるべきだと考えます。(線路設備が低速走行も不可能なまでに破壊されればどうしようもないが)
駅間に2列車以内、多くとも3列車までに留めるべきで、そう考えると、ピーク時で2~3割程度は運転本数を削減する必要がでてくるのではないかと思います。
【特急運休まではやりすぎではないのか?】
今回、想定震源域や津波到達地域とされている和歌山・三重・愛知・静岡の各県内を走る、殆どの在来線JR特急列車が運休を決めました。
その中には、連日満員で人気列車でもある、日本唯一の夜行列車・サンライズも含まれています。
あくまで今回、普通列車や快速列車は基本的には運転(一部運休や徐行運転もあり)しているだけに、ちょっとこれはどうなのかと思います。
基本的に政府発表の方針としては、行動自粛を求めるようなものではなく、「通常の生活・行動を維持しつつ、大地震発生に備えること」というものでした。
しかし、特急の運休までしてしまうとどうなるでしょう。
移動自体を諦める人も多いでしょうし、中にはそれでも動いている交通機関で移動しようとする人も出てくるでしょう。
問題は、その移動しようとする人の受け皿です。
自家用車での移動が出来る方はともかく、殆どは並行する高速バスもしくは普通列車という選択肢が考えられます。
閑散線区の普通列車はいまやほとんどがワンマン列車。
特急に乗れなかった旅客が普通列車に転移することも考えられ、そうすると通常よりもかなりの混雑になるでしょう。
ワンマン列車では運転士しか乗務していないことから、有事の際には案内、誘導に支障が出る可能性があります。
寧ろそういった時こそ列車自体は通常通りの運転を維持しつつ、各個人の判断で移動の見合わせなどを呼びかけるに留めるほうが良いと思います。