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ムーンライトの思い出(その4)

座席夜行・ムーンライトとの思い出を記した。しかし、なぜ一時期はあれだけ走っていた座席夜行は一気に衰退・ほぼ絶滅してしまったのだろうか?
現在では定期運転される座席夜行は皆無。
時折、第三セクターや私鉄などで、往年の座席夜行の雰囲気を味わおう!という企画旅行の趣旨で、短い区間を何往復もさせて無理やり?座席夜行として走らせるケースもある。
純粋な夜行列車という例は、東武鉄道が運転する尾瀬夜行(ただし旅行会社のツアー専用列車)と、ウェストエクスプレス銀河(一時は旅行会社発売限定だったが、一般販売もされるように)の座席車両。
いずれも運転日限定の臨時列車だ。

【座席夜行のメリット】
・幅広い集客
深夜行動をいとわなければ、幅広い範囲での集客が可能となる。
一部の夜行列車は、深夜時間帯にも主要駅に停車し、利用を促すしていた。
例えば、北海道各地を走っていた夜行特急はいい例だし、ムーンライトながらや、急行きたぐにもその例。
大都市で深夜まで行動して、沿線の地方都市へという移動需要は、少ないながらも存在していたと思う。

・安価な料金
特に夜行快速であれば、非常に安く旅をできる。
青春18きっぷが発売されていれば、指定席料金を追加するだけ一晩を長距離移動に充てることができるため、非常にコスパがいい。
昔の夜行急行がよく使われたのも、急行にも乗れるワイド周遊券が存在していたため。そのおかげで青春時代の旅を安上がりにできたという話はよく聞く。僕は残念ながらその時代を知らない。

・終電乗り遅れの救済にも?
新幹線や昼行特急の走っている路線で、最終便に乗り遅れた場合でも、夜行列車が走っていると救われることがある。
安価に、かつ気軽に乗れる存在というのは大きい。
寝台特急だとホテルに泊まるのと変わらない料金が掛かってしまうので、乗り遅れた人には助かるだろう。

・車両運用の効率化
通常、昼間の特急などに使われる車両は夜は車庫に。寝台列車はその逆だ。
しかし、昼間の特急に使われる車両をそのまま夜行に使うことで、フルに回転させることができる。
例えばJR東海の373系などは、夜はムーンライトながら。送り込みのホームライナーや普通列車で特急運用の始点まで走り、特急伊那路やふじかわ、東海などに運用されるという、まさに働き者な存在だった。
まあ現在では特急東海やムーンライトながらがなくなってしまったため、暇を持て余しているようだ。

【なぜ、夜行列車は無くなっていった?】

儲からない収益構造
主に夜行快速列車の運転時期としては、青春18きっぷの発売時期と重なる学生の長期休みの時期であった。

一列車当たり、およそ500人が乗車したとする。まあかなり極端な試算だが、全員が青春18きっぷで乗車したとすると、この列車自体の収益は、指定席券から得ることになる。
すると、指定券がわかりやすく500円として、収入は25万。
運行にかかる人件費、設備費、その他もろもろ。
深夜時間帯のため、割増賃金が発生しますし、昼間にできない保守工事との兼ね合いもあったり、幹線では貨物との調整もあったりと、夜行列車の運転には想像以上の手間と費用が掛かります。
深夜帯の停車駅を増やせば、その駅の駅員も常駐しなければいけません。

そうなると、稼げず、費用が掛かる夜行列車への投資がされないのも無理はないでしょう。

高速バスの台頭
座席夜行と競合する交通機関として、真っ先に思いつくのが高速バスだ。
僕も何度か高速バスは使ったことがあるが、夜行列車と比べるといくつかのメリットはある。
バスの種類にもよって異なるが、普通乗車券と同じぐらいの料金で乗れるので、基本的に通年で安価に乗れる。
とにかく安く!なら、4列シート。ちょっと快適に…なら3列シートといった具合。まだ乗車したことはないが、一部の路線には半個室タイプの豪華な夜行バスも投入されている。
きめの細かい発着地のバリエーションがあるので、だいたいの国内・中長距離移動なら選択肢の一つに入ってくるのも魅力だろう。

LCC・新幹線の発展
高速で移動できる新幹線の延伸、スピードアップや、格安で長距離を移動できるLCCの存在も無視できない。
昔は節約のために夜行列車と鈍行を乗りついで北海道へ…なんて旅のスタイルも一部には選択されたが、もはやいまはこのスタイルが安いとは限らない。
サクッと飛行機で飛んで、現地で安い宿にでも泊まった方が、お金も時間も節約できる。
要するに、以前は節約のため…に選ばれていた夜行列車が選ばれなくなってきたといえる。

夜行列車全体の衰退
以前は、関東発で見ても何本もの寝台特急・夜行列車が発車していました。
特に国鉄時代などは、東京駅を10分おきに西へ向かう夜行列車が出発していったこともあり、今から考えると信じられない時代だった。
夜行列車自体の本数が減ってくると、その列車のためだけに特別な人員手配を行わなければいけないなど、煩雑さには拍車がかかってくる。
理由としては数あれど、全体的に夜行列車が衰退したということも、原因の一つだろう。

使用車両の老朽化
多くの座席夜行は、国鉄時代の特急車両や、客車列車を使っていた。その当時、新型の特急車両が充当されたムーンライトながらの例はかなり特殊な例といえる。
古くはあっても、座り心地が改善されたような車両を充当することが多かったが、それでもやはり、ある程度年数が経ってくると、車両自体の置き換え問題にもなってくる。
ムーンライトえちごやながら、そして九州方面への客車列車も、そういった問題があったのだろう。
後期まで残った列車に関しては、どの列車も比較的乗車率は悪くはなかったと思われ、利用人数の減少というよりは、車両の問題も大きかったといえる。
新型車両を入れてまで存続させる…というものではなかったといえる。
  

JRの懐事情
民営化当初は、新しい取り組みなど活発に行われていたように思われる。ある意味、ムーンライト一族もそのなかの取り組みの一環だったのだろう。
とはいえ、徐々により儲かるところにシフトしていくのは、民間企業の流れとしてやむを得ず、「儲からない」列車に投資を渋るのはまあしょうがないといえる。

乗車マナーの問題
これは、乗客側の問題だ。例えば、指定席を2枚用意して、空間を広く使おうとしたり(1人での2席利用は、原則として禁止されている)
飲酒などに起因する旅客同士のトラブルなども多かったという。
これは乗務経験のある人からも聞いた話だ。
実際、僕が乗った列車でも、満席のはずなのにちらほら一人で二席使っている人はいたように思う。
夜遅くまで寝付けずにグループで会話していたり、まあ安いから仕方がないとは思っていましたが、あまり治安がいいものではありませんでした。

これは鉄道特有のものかもしれません。夜行バスなら、出発後は強制消灯されることもあり、もう寝るしかない!というところだし、定員も鉄道よりも少ないです。
それに対して鉄道は、座席夜行だと完全に消灯するということは保安上行っておらず、室内灯の減光ぐらい。どうしても寝付けない人もでてきます。
途中駅に停車する列車では、長距離移動するだけでない様々な人が乗り込んでくるという特性もあります。


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