車掌が眺める景色
列車に乗っている時、みなさんはどうしていますか?
本を読んだり、睡眠をとったり、最近はスマホを弄っている人も多いですが、ただぼんやり、景色を眺めているという人も多いと思います。
特に旅先などでは、次々と移り変わっていく景色が楽しかったりしますからね。
そんな列車に毎日のように乗っている車掌は、やはり外の景色を眺めているということが多いです。
といっても、ただぼんやりと眺めているわけではありません。
大体の列車の走行位置を把握し、車内放送のタイミングや、車内巡回に入っていたら、そろそろ乗務員室に戻らなければ…など、景色を頼りにタイミングを図っていました。
最近の車両だと、停車駅が近づいたら「まもなく〇〇に到着します」などと案内表示が流れたりもするので、それを頼りにしてもいいのですが、(実際、若い車掌さんはそういう人も多かったように思います)古い車両だったりするとそんな気の利いたモノはなく、しっかり放送ポイントを覚えておかなければいけない…という事情もありました。
特に夜のローカル線では、真っ暗闇の中を走っていくため一度目標物を見落とすと、いつの間にか駅に進入しかけていたりもするので、なかなか気が抜けないです。
配属の時に、放送ポイントの一覧を渡され、見習いの時はそれを参考にしながら放送のタイミングを図るのです。
高架線に上がり始めたらとか、右側にコンビニが見えたらとか、ギザギザ屋根の工場が見えたらなどとありますが、慣れないうちは似たようなポイントに引っかかったりもしたものです。
車内巡回から帰ってきて、あれ?もう放送ポイント過ぎたかな?と思ってマイクを手に取ったら、先生からまだだぞ!と怒られたときもありますね。
比較的、僕は乗り鉄派だったこともあり、景色を見るのには慣れていたこともあり、比較的に覚えるのは早かったように思いますが、夜のローカル線はどうしても苦戦しますね。明かりが本当にないから、どこを走っているのかわかったものではありません。
因みに、コンビニなどを目当てにしていると、ある日そこが潰れてしまうなんてこともあるので、そのポイントだけでなく、ある程度その前後の風景も頭に入れておくことが必要です。
慣れてきたりすると、黄色信号で列車の駅進入速度が遅いときには、少し遅めに放送したり、ギリギリまで車内に入って切符を売ったりなどという調整をしたりもしていました。そういったときも、ある程度ここまでなら大丈夫!というポイントは抑えておいて、切符を売りながらも目の端では風景を捉えていましたね。たまに限界を攻めすぎて、ダッシュで客室を駆け戻るなんてこともありましたが。
(車内でダッシュしている車掌さんがいたら、ああ、頑張ってるんだな~と、声を掛けずに暖かい目で見守ってやってください)
因みに、こういった風景を覚えるのはなにも仕事にだけで活かしているわけではありません。
一時期、職場の沿線探検隊みたいなものに付いて行って、車窓から見える気になるお店を訪問する!という活動もありました。
普通に車でドライブするだけならなかなか入らないだろうというお店もあったりして、なかなか面白かったですね。
車掌だけでなく、結構運転士さんもそういった気になるお店の情報は持っていて、これは乗務員ならではの楽しみなのかもしれません。