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青春18きっぷ、終焉への一歩か?(後編)
<JRの本当の狙い??青春18きっぷ廃止のその先に…>
このように、リニューアル(という名の改悪)によって、そのメリットがかなり削がれた青春18きっぷ。
せめて、先述のような方策がとれないか?といのは旅人としての思いです。
しかい個人的には、恐らくJR側としては青春18きっぷを「廃止」したいものだと思います。
恐らく今回のリニューアルで、青春18きっぷの発売枚数は激減するでしょう。
3日間用の発売金額が割高になっているのは、廃止前に少しでも荒稼ぎするという思惑がある…という穿った見方も出来なくはありません。
そうして発券枚数が減少したところで、廃止…という流れは素人目にも想像できることです。
不便になる→利用減少→不便になる→さらに減少→廃止のスパイラルに陥るローカル線の廃止の構図と似ていますね。
なぜ、毎年一定数の売り上げはほぼ確実に見込めており、大きな収入源となっているこの切符を廃止の方向に持っていきたいのか?考えてみたいと思います。
・青春18きっぷ廃止の背景は…
一定の利用者が存在している青春18きっぷ。これは、僅かかもしれませんが、ある意味ではJR間での利益調整の意味合いもある切符でもあります。
それは切符の収益分配構造にあります。
まず、18きっぷが発売される際、販売するJR会社に対して発券手数料が入った上で、残りをJR6社で分配されます。ただ当然6等分というわけではなく、比率は不明ですが、販売会社が当然比率は一番高く、そこから離れるに従い、徐々に削減されていく…という方法で分配されていると聞いたことがあります。
JR北海道、四国、九州
大都市から遠く、不便ということもあり、全体的な割合としてはこの三島会社、特に北海道を青春18きっぷで旅する割合は、比較的少ないと思われます。
それでも、東京・大阪などの都市圏で販売された切符の売り上げ分配は、多少ではあるものの、この3島会社に分配される。
東京・大阪等で販売され、一切この3社を利用しなくても分配されるということになり、人口が少なく経営基盤が脆弱なこの3社にとっては、経営規模に対してメリットが大きいと思われる。
JR西日本、東日本
東京・大阪といった大都市圏を有するため、かなりの割合で発券・利用する人が多いと思われる。発券枚数が多ければ、その分手数料収入は入るため、収入は多い。
ただ、経営規模に対しての収入規模という面で見ると、三島会社ほどのメリットはないか。
JR東海
名古屋中心の都市圏が存在するが、東京・大阪ほどではない(さらに自動車保有率も高い)ため、発券枚数はJR西・東よりは少ない。
しかし、両都市圏を結ぶ東海道本線を有するため、18きっぷ利用者も利便性が高いこともあり、東海道本線の利用が多い。(一部は混雑を避けたりという理由で中央本線を利用する)
要するに、他社(東日本及び西日本)発券でかつ、自社の長距離利用の割合が多いことが推測される。
例えば東京~大阪間を18きっぷユーザーが利用した場合、60%以上はJR東関管内を通過することになる。
また、中距離区間(名古屋~大阪や静岡など)の区間で、青春18きっぷに新幹線の重要を喰われている可能性もある。
このことから、想像ではありますが、少なくともJR東海としては自社の収益性確保の目で見ると、廃止したい方向性なのは間違いないだろうと思われます。
・本当の裏の目的はなにか?
青春18きっぷを廃止することで、その他にもメリットはないのか?考えてみました。それがない限り、流石にJR東海単独が廃止を唱えたと仮定しても、なかなか廃止の方向には踏み切らないと思われます。
完全なる推測ではありますが、これはと思うものがありました。
元々、青春18きっぷが設定された理由として、学生が休みとなり、特にローカル線区を中心に、通勤列車等が閑散とするというところに目を付けて、その期間に格安で乗り放題出来るきっぷを設定。特に特別な投資をすることなく、売り上げを向上させる。という意味合いもありました。
今に至るまで、青春18きっぷの発売期間は、学生が休みとなる春・夏・冬の期間であることは徹底されており、その期間の旅行需要喚起に一役かっているわけです。
ただし、例外的に青春18きっぷに近い効力を持つ鉄道の日記念切符が、10月の鉄道の日を中心にして短期間で設定されています。
それでは、仮に青春18きっぷが廃止されたらどうなるでしょうか?
現在の青春18きっぷユーザーがそのまま残るとは全く考えられないため、当然、各地の普通・快速列車の当該期間の利用者は減少します。
そうすると特にローカル線を中心として、一気にその期間の利用者が減ることが予想されます。僕が車掌を務めていた線区でも、ローカル線で日中の普通列車の優に半分以上は青春18きっぷユーザーだった…ということはあったので、その殆どが消えてしまうわけです。
そうすると、会社によっては学生の休み期間は、列車の本数を削減するという可能性もあるわけです。
単純に人員削減の効果もありますし、保守点検作業を日中に行う時間が、その期間だけでも伸ばすことが出来るということでもあります。
勿論、青春18きっぷ廃止→即減便。といった乱暴なことはしないと思いますが、その期間の実際の利用者数を調査した上で、ジワリジワリと削減するであろうことは考えられます。
地方のバスでは時々ある「学休日運休」という文字が、時刻表上に登場するのも、近い将来のことなのかもしれません。
近年、JR各社はそれぞれの手法でコストカットに取り組んでいますが、あえて利益を捨ててまで、コストカットを推し進めようという背景が滲み見えるように思えます。
<終わりに…>
・18きっぷユーザーは質が悪い…の真実
今回、ネットニュースなどを見ていると、18きっぷユーザーの客層の悪さから現場に負担が掛かっている…という声も見られました。
確かに、ごく一部が悪目立ちしているだけと思えるものの、僕が現場で働いているときのことを考えても、あまりマナーがよろしくない方も多いのが現状です。
このことから、ある意味では18きっぷユーザーが自分で自分の首を絞めた結果だという論もあります。
しかし、この論調には大いに疑問があります。
18きっぷユーザーに限らずのことですが、ある意味クレーマーをお客様第一主義によって企業や社会風潮が育ててきた結果、人員削減でコストカットしようとしているところに歪が出てきているのではないかということです。
お客様第一に…という割には、コストカットのために少ない人員で対応に当たらせていれば、それは無理が出てくるでしょう。
現場への負担を減らさなければいけないのは当然ですが、それを特に迷惑を掛けることなく使っている利用者の切り捨てという形で実現させるのはどうなのか?と思います。
・利用者を「育てる」ことを放棄するのか
確かに、JR各社の経営環境はこのコロナ渦の数年で一気に悪化しましたし、この先も人口減少していく中で、鉄道の利用者が増える見込みもない以上、少しでもコストカットをしていくことはわからないでもありません。
しかし、鉄道を使った旅に慣れ親しんでもらうという観点で見ると、期間限定で発売される青春18きっぷは、大きな役割を果たしていたと思います。
普段鉄道を使わない人にとっても、こんな値段で利用できるなら、自分でクルマを運転するより楽だし、たまには鉄道で…と出かける要因にもなります。
また学生時代にこの切符を使って旅をした人は、やはりその楽しさを大人になっても覚えているもの。この切符がキッカケで、鉄道での旅が好きになったという人も一定層はいます。
ある意味ではそういった、鉄道を利用するキッカケを提供する切符であり、長年の間、鉄道を使ってくれる利用者を育てるという役割が、青春18きっぷにはあったはずです。
それを放棄する道を選ぶというのは、今後の鉄道を使った旅というものの衰退に繋がり、単なる通勤・通学、もしくはビジネス場面での利用。そしてごく一部の富裕層向けの豪華列車といったところに、想定顧客を絞っていくのかな…と思わざるを得ません。
・地方の経済にも見逃せない効果が・・・
特にローカル線では、青春18きっぷの利用期間において、混雑が取りざたされることがあります。
ようするに、それだけ多くの普段ならこないような旅行者がやってきているということ。
18きっぷのユーザーは、一般的な旅行者に比べると経済的な観点での消費量としては少ないかもしれませんが、それでもご飯時になれば何かしらを食べます。乗り継ぎの合間に駅周辺の食堂に繰り出す人もいるでしょうし、地元の商店やスーパーなどで食料を調達することも。
また、夜になれば駅付近の宿で泊まるでしょう。ただし、格安旅行者は漫画喫茶に泊るのが主流になっているという話もありますが…
鉄道だけでない、地方の経済にとっても、青春18きっぷの恩恵はある程度はあると考えられます。
こういったことは、ある意味で無形の効果であり、数字上では表せることが難しいものです。
民間企業であることが、純粋に利益を求めて余分なモノを削ぎ落し、効率よく稼ぐ方向に向かう方向性に向かわせているのだろうと思います。
短期的に見ると、現場への負担を減らし、効率よく稼ぐことが出来る体制を構築することはできるかもしれません。
しかし、長期的に見るとこの施策は、利用者を逸走させるものとなり、鉄道を利用する全体的なボリュームを未来永劫に減らしていくものとなりかねません。
とはいえ、今冬から発売される青春18きっぷの形あっても、存続していくのならそれに越したことはありません。
僕自身が使う機会は今までと比べると格段に減ると思いますが、末永い存続を祈ります。