ペットボトルロケット座(ショートショート)
夜の街をジョギングする。
空気の匂いがどこかで嗅いだことがあるような気がする。ふと、思い出した。
あれは確か、小学校の頃。
家の近所で、ペットボトルロケットを打ち上げて、その距離を競う大会が開かれていた時の風の匂い。
僕はあくまでそれを、外から見ているだけの人間だった。
大きなグラウンド。様々な人たちが集まっていた。そのガヤガヤの外で、風の匂いがなんか好きな感じだな、と思いながら、しばらくその光景を眺めていた。
出場者に割り振られた番号が読み上げられるたびに、打ちあがるペットボトルロケット。
少し離れたところから見ていたにもかかわらず、吹き出す水の音が聞こえた。その後に沸き起こる歓声や笑い声も覚えている。
それが飛ぶ瞬間は確かに、その姿をしっかり捉えているのだけれど、空の色と同化すると、あっという間に見失ってしまう。
当時は、見失ったペットボトルロケットはもしかしたら、本当に宇宙まで行ってしまったのでは? と思っていた。
今思い返すと何とも恥ずかしい記憶だ。
けれど、そんな自由な思考ができた過去の自分のことを、羨ましく、誇らしく思う。
空に浮かぶ星。それらを五つ、先のとがった鉛筆みたいにつなげる。
そのまま"えんぴつ座"でもいいような気がしたけれど、今回はこの星座を"ペットボトルロケット座"と名付けることにした。
そんな星座があれば、きっと過去の自分も喜ぶだろう。
けれど、もうちょっと語呂のいい名前に出来ればいいなあ。