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がらくた(雑記)

 世間的にはがらくたと呼ばれるものを集めた部屋が僕は好きだった。
 海辺で拾ってきた貝殻。
 どこかに使われていた、錆びた歯車の一つ。
 知らない世界の書物や象牙のアクセサリー。
 小さな部屋の中に集められたものの気配が、どこか異質で、非日常にやってきたとすぐに分かる。
 その部屋を作ったのは僕ではない。だから、そこに置かれているものの名前も、用途も、起源もすべて知らない。
 もちろん見たことのあるものもあるけれど、それ以上に、知らないものの方が圧倒的に多い。
 それらを集めた誰かの人生が部屋の中に充満していて、僕はその熱に中てられたようになる。その部屋の中では僕の存在だけが違和感を醸し出している。
 うまくなじめないけれど、そのずれの中に共通点があったり、明確な相違があったり。そんな独りよがりなすり合わせが自分の中で繰り広げられる。
 いつしか心の端っこに、その空間の色が染み込んでいたりする。

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