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ガードレー龍(ショートショート)
ほとんど車通りのない田舎道を車で進んでいると、時々ひどく錆びて、苔の生えたガードレールを見ることは無いだろうか。
もし家の近くにそんなガードレールがあるならば、しばらくの間観察してみてはどうだろう。
特にそれの位置や曲がり方に違和感を感じた場合、前日とは異なる位置、あるいは形になっているとき、そして、そこで前日に事故があったわけでもない場合、それはガードレー龍かもしれない。
ガードレ―龍とは、寂れた街や廃墟近くの、錆びて苔むしたガードレールに擬態する龍であり、基本的に、夜になると行動し始める。
道に迷った車や人々を元の道に戻してあげるなど、温厚で優しい性格を持っているため、人に危害を加えることはまずない。
普段は目立たないように生きており、日中はほとんど動かない。仮に動いても、人間には識別できないくらいのほんの微かな移動のみである。
日中は完全にガードレールに擬態しているので、普通のガードレールと見分けるのは困難。
道端に生えている植物を食すことが多い。
つい最近までたくさん茂っていた蔓が急にごっそりなくなったら、近所の人が草刈り機で刈り取ったか、ガードレ―龍が食べたかのどちらかである。