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セロファント

 かつて地殻変動によって大地が大きく裂け、生物の生息範囲が大きく制限される事があった。
 実際にいくつかの種は、それによって絶滅したとも考えられている。地質調査によって、大地の裂け目があった場所付近で、偶然発見された化石などからそういったことが分かったらしい。

 けれど、大地の裂け目に関して調査されていく中で、一つの疑問が現れた。
 大地の裂け目の大きさに対して、それによって被害を被った生物種の数が明らかに少ないのだ。
 本来被害を受けてもおかしくなかった種の三分の一程度に留まっている。
 最近の研究の結果、一つの仮説が生まれた。
 それは、セロファントという種類の象が、何かしらの影響を与えたのではという説だ。
 彼らは、頭部がセロハンテープのカッターのような形状をしており、眉間の少し上のあたりにコブのような膨らみがある。そのコブはこの種特有のもので、他の象には見られない特徴なのだ。
 この器官からは粘性を持った帯を生み出すことができる。主成分はたんぱく質で、それを鼻で引き出して餌の調達や保管に使うのだそう。
 そして、件の仮説はこの粘性を持つ帯を生み出せることに起因する。
 現在はそれほどでもないが、大昔のセロファントは今よりずっと大きな体をしていた。つまり、この粘性を持った帯も今より幅広く、強靭なものだったと思われる。
 彼らはこれを利用して、裂け目をセロテープよろしく貼り付け、大地が裂けるのを最低限になるように抑えたのではないかと考えられているわけだ。
 大地の裂け目の一部には、セロファントのものと思われる粘性帯の化石が見つかっており、この仮説を裏付ける要因の一つになっている。
 ちなみにその地域一帯は現在、渓谷になっている。多くの観光客がやって来る観光地だ。
 セロファントの名前を一部取って、セロファンバレーと呼ばれている。

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