見出し画像

かざぐるま(ショートショート)

 梅雨時期のじめっとした暑さをものともしない紫陽花があるらしい。
 紫陽花の萼の部分。一般的には花と思われている部分がぐるぐると回転するのだ。
 そうなることで、紫陽花の周辺の空気が混ぜられ、循環し、暑さが和らぐ。
 とはいえ、ほとんど人が寄りつかないような場所にひっそりと咲いている紫陽花のため、その目撃情報はほとんどない。
 ただ、時々雨の降る街に繰り出した時、紫陽花なんてどこにも見当たらない場所で、その萼のひとひらが振ってきたり、側溝に流れて行くのを見られたら幸運だ。
 それはおそらく、どこか近くの人が寄りつかない場所から飛んできた紫陽花だからだ。

いいなと思ったら応援しよう!