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薄暮(雑記)

 午後の日差しの中に、少しずつ薄暮の色が混ざり始める。
 ブルーハワイのシロップをかけたかき氷のように、徐々に青色が滲んでくる。砂糖で果物を煮詰めたような、夜の甘い香りが微かに鼻腔をくすぐる。
 僕は君の後ろ姿を少し離れたところで見つめている。いつも僕の数歩先で、楽しそうにはしゃいでいるその姿がとても魅力的だと思う。
 海に行こうと提案したのは君で、僕はうん、わかった。と車を出しただけだった。我ながら情けないなと思った。

 潮風にひるがえるワンピースの花柄も、薄い青色がなじんでいるその肌も、とても綺麗だと思った。
 この「綺麗」という言葉の中には、この世界における美しいものや尊いもののほぼ全ての意味が内包されていた。
 君といる間だけは、自分の心臓が、硝子や星の煌めき、宝石の透明感ににたものを得たような気になってしまうのだ。
 本当はもっとどうしようもなく、この場にいる正当な理由もないような人間の自分が、それでも、そこにいることを許されている。
 そんなふうに話すと、君はきっと、何を言っているの。と笑い出すだろう。
 時々顔を出す、自分を否定する心を、その存在だけで忘れさせてくれる。
 そんな君の姿を、僕はずっと追いかけている。それは、君に対する尊敬の気持ちの表れでもある。
 またどうせ面倒くさいこと考えてるでしょ、と、微笑んでいるその顔に僕はまた救われるのだ。

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