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りんご座(ショートショート)
秋の夜長、外を散歩していると、甘酸っぱいにおいが漂ってきた。
なんの匂いだろうと周囲を見回してみるけれど、どこからのものかよく分からない。
首を傾げて夜空を見上げる。夜の澄んだ空気を吸い込もうとした時、あることに気づいた。
夜空に浮かぶ星の一つから、なにか透明な液体のようなものが滴っている。黄金(こがね)色に輝くそれからは、さきほど嗅いだのと同じ匂いがしている。
これが匂いの原因だったのか。そんなことを思いながら、その星を眺めていると、それの周囲の星が球状を描くように集まっているように見えた。
まるで何かの果物、例えばそう、りんごとか。
漂ってくる匂いのイメージから、その星の集まりをりんご座と名付けた。
蜜が滴ってくる星は、輝きの具合が一等星と同じくらいの明るさだったため、せっかくなので、その目立つ星にも名前を付けることにした。
ネクタルミロ。ギリシャ語でリンゴの蜜という意味になるようにした。
その一番輝きの強い星からは、蜜が滴る以外にも、星のかけらとでも言うべきか、細かな粒子が零れてくることがあった。
これをココアなんかに入れると、ほんのりとリンゴの香りがするうえ、なんだかぐっすり眠れるので、とても気に入っている。
ただし、ココアに入れてしばらく時間が経過すると、通常ではあり得ないほどココアが冷たくなり、「先ほどまで冷蔵庫に入っていました」と言わんばかりの冷たさになるため、あまり長時間置いておくのは良くなさそうだ。