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一千一秒の片隅(6/10)

朝露になった流れ星の話

 鉛のような暗さの森の中に 流れ星の一つが飛び込んだ
 それは夜のあいだ延々と輝き続けていた
 朝が来る前 微かに空が白さを滲ませはじめたころ その青白い光は姿を消して 何事もなかったかのように 朝日に飲み込まれてしまった
 朝露を眺めていると その隙間に流れ星の青白さを見つけた

鯉が星を食べる話

 池の鯉が水面に口を出してパクパクする その姿がまるで 水面に映った星を食べているようで 微笑ましく思いながら眺めていた
 しばらくそうしていると どこからともなく
「いてっ」
 という声が聞こえてきた 声の出所を探してみるけれど それらしい影は見えない
 それでも時々 いて いてて と声が聞こえるため また周囲を見回すけれど やはり何者の姿も見えない
「いてっ!」
 おや これはと思い 空を見上げる
 すると 頭の上で真っ青になった星が いててと言いながら逃げ回っていた。

昼を食べる星の話

 冷たい星が降り注ぐ夜 誰も居ない街の中に 硬質的な音が鳴り響く
 煉瓦もガス燈も オレンジ色の明かりを放ちながら その冷たさを解きほぐそうとする
 地面に落ちた星はゆっくりと溶けていく 光り輝く棘の先からぽたりと雫が落ちて 赤煉瓦のタイルを濡らしていく
 水たまりのように広がった星の雫は 青空のように澄み渡る輝きを持っている
 暗闇が広がる夜の中で その街だけが昼と夜の混じったような気配を抱いていた
 のちに誰かの研究によって 夜空の星は青空の光を吸い込んで輝いているのだという結果がもたらされたが 実際のところ それが真実かどうかはまた別の話である という意見が浸透している
 また 星は 昼の青空と繋がっているという意見もあるらしいがそれに関しても同様である

ブルーライトの話

 デスクトップパソコンの画面のブルーライトに目が冴えてしまった
 夜の間はしばらく眠れないだろうか と考えている
 自分が夜の空を眺めている時に そこに青く輝く星の輝きをずっと見ていると目が冴えて眠れなくなってしまうことがあるが これもその現象と同じものではないだろうかと思い 余計に眠れなくなってしまっている
 パソコンももしかして夜の間は 月光や星の光で動いているのでは という空想が頭の中に浮かんで 眠れなさに拍車がかかっていく
 窓の外からの月光を浴びた瞬間に動く振り子時計の音が 部屋中にこだました

プラスティックの星の話

 プラスティックでできた星のおもちゃを 髪ほどの細い糸につるして飾る
 その糸が何でできているのか知らなかったが 微かに青みがかっている
 その内側に白く発光するものを感じて その姿がまるで彗星の後ろを付いていく一筋の光のようだと思った 
 プラスティックはあくまで作り物であるが その姿が本物の流れ星や彗星のように見えるから不思議である

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