ブルーゴースト(ショートショート)
石畳の道を進んでいく。どこかの庭から伸びてきたと思われる蔓が自由に葉を広げ、街全体を守っているかのようだ。
無数の絵画が積み上げられ、それに埋め尽くされている、”こことは違う場所”に存在する街。そこには少し不思議な絵画が存在する。
とある絵の具で描かれた絵画たち。それらは、ハロウィンの時期になると、なぜかその美しい色が褪せてしまうのだという。
原因となっている”とある絵の具”というのが、名前をブルーゴーストという。その名前から想像する人も居るかもしれないが、青色の絵の具だ。
この絵の具は、ブルーゴースト・ファイヤーフライと呼ばれる蛍の光を使って作られており、とても幻想的な発色をする青色なのだ。
ではなぜ、この青色の絵の具が、ハロウィンの時期になると色あせてしまうのか。
これについては、この色の名前に関係していると考えられる。
ブルーゴースト。「幽霊のような青色」という訳し方になるらしいのだが、つまりはそういうことである。
本来はただ単に、”幽霊や人魂が行うような青白い発光をする”ところから付けられたはずの名前が、いつの間にか、その呼び方の”それらしさ”に引き寄せられたのか、お化けたちの魂が、絵の具に宿ってしまうようになったのだ。そして、そのまま絵画から飛び出して、夜の街を散歩するようになった。
しかもそのタイミングが丁度、ハロウィンと重なっているため、街は一層それらしい雰囲気に包まれるのである。
毎年その街では、幻想的で、少し不気味な夜灯が、賑やかなハロウィンの夜を彩っている。
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