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くもり(雑記)
曇り空の街はあらゆるものの色が褪せて、誰かの庭に植えてある、南天の鮮やかさだけが際立っている。
雪や雲の境目が曖昧になって、そこから溢れる白が、さらに全ての色を隠していく。
曇っているのに明るい。雲に陰が落ちていないからなのか、漂白したような白さから、同じように白磁のような陽光が散乱している。
雲を透けて溢れる陽光がまるで、雲自体から発散されているようにも見える。
陽の光が陽光なら、雲からの光は雲光と呼ぶべきだろうか。
その淡い色彩が、私が吐き出す呼吸と同時に虹色に染まってすぐに消える。
その変化を捉えて、美しさを誰かと共有するにはあまりにも短い時間。
学校で学ぶような科学や化学の変化が、自分にも適応されているという事実に、なぜか感動する。思えばそれは当たり前のことで、今更そんなことに心を動かされている自分が不思議だとも思う。
雪の結晶が生まれる理由や桜の花びらが開く仕組み、ひまわりが太陽を追いかけ、紅葉が鮮やかに色づく時に起きる細胞の変化。
かつて使った教科書を引っ張り出す。
ページをめくり、そこに書き込まれたアンダーラインや補足を読み返す。
その行為に意味を求めず、ただ書き写したそれらは、今になっても、そこにある意味を見出せず、ただ、そのアンダーラインが、もしかしたら外の景色の何かしらとつながっているのかもしれないと思った。