日本野外教育学会に参加してみた
ある研究プロジェクトに大学の先生と共に取り組んでいます。
こちらの研究プロジェクトについてはまた別記事でまとめようと思いますが、その繋がりもあり、今回日本野外教育学会という会の大会参加してきました。
主に野外教育分野の研究をされている、大学等の研究機関の方の論文の発表がメインですが、意見交換を行う分科会や、基調講演、パネリストによる対談形式のセッションなども企画されていました。
参加してみての感想を先にお話しすると、
・論文などの研究は現場で活かされて初めてその価値が高まる
・もっと研究者と実践者の連携や考えのすり合わせをすべきだ
ということです。
今回参加してみた感想や具体的な内容についてお話ししていきます。
●大会の構成
①大会テーマ
「すべての子供たちに野外教育を~誰一人取り残さない社会を目指して~」
今回のテーマはかなり壮大な印象を受けましたが、野外教育分野においても、好きな人やできる人だけが享受できる体験ではなく、困難を抱える家庭や子どもたちにこそ必要があるというメッセージです。
それだけ教育的価値のあるものだと発信していきたいという意図を感じました。
②自主企画シンポジウム
事例の発表や、議論したいテーマで各会場に少人数で分かれ、興味ある企画に参加することができます。今回私は「青少年教育施設のこれからの役割について」というテーマのシンポジウムに参加しました。
③基調講演
今回講演してもらったのは、なんと養老 孟司さん。86歳とお年を重ねていらっしゃるのですが、話す一言一言はよく考えられており、また物の見方がとてもシンプルで、何か社会に対してこれが必要だと訴えるよりは、中立的という印象でした。対談形式で会場からの質問にもお答えいただいていて、話題が断片的でしたが、講演全体を通して私が受けたメッセージは、現代では頭で考えすぎているのでもっと五感や身体感覚を大切にしなさいということです。自分の活動でも意識すべき、立ちかえられるような内容でした。
④実行委員会シンポジウム
「誰一人取り残さないために、野外教育に何ができるのか」というテーマで、経済的に困難を抱える家庭や子どもを支援する団体や野外教育実践者、子ども家庭庁の方など4名のパネリストの方にお話いただいたセッションです。今回の大会テーマとも関連していて、今後野外教育や自然体験という分野以外の方と連携することで、もっと社会に必要性訴えていかなければいけないと感じました。
⑤研究発表
この大会のメインのプログラムです。会場ごとに分かれ、研究者の論文発表を12分ほど行い、会場から質疑に答えてもらう内容です。自分の聞きたい発表に自由に行き来することができます。
●本大会に参加して感じたこと
①自然体験を誰に届けるべきか
本大会のテーマ「すべての子供たちに野外教育を~誰一人取り残さない社会を目指して~」は、これからの日本の社会にとって非常に大切な理念だと思います。実行委員シンポジウムで登壇されていた方がお話しされていたのは、体験がまだまだ子どもたちにとって必要なことだと認識されていないということです。
そして、経済的に困窮されている家庭では、子どもに体験をさせるという選択肢すらないというのが現状だということです。
自然体験は好きな人だけが享受できる体験ではなく、その教育的効果を活かし、困難を抱える家庭や子どもたちにこそ届ける必要があるのだと強く感じました。異分野他ジャンルの方とのつながりを作り、より広く社会に届けていく必要性があるのだと思います。
②研究は何のために行われるべきか
野外活動について長年に渡る研究の蓄積により、その教育的効果について証明されてきています。今回もたくさんの発表をお聞きすることができました。
研究発表を聞いて、とても参考になったものもありますが、誤解を恐れず期待を込めあえて言わせてもらうと、「過去に研究されているのでもう少し違う切り口が必要なのでは」、「シュチュエーションが限定的すぎて活用しづらいのでは」と感じるものもありました。
自然体験や野外活動に教育的効果があるということは、すでにわかっていることでもあります。この根拠をもとに、教育現場やビジネスの現場で活かされて初めて社会にとって有益な研究になるのだと思います。
③研究者と実践者は同じ方向を向いて進むべき
現場としても活きてくる研究にするために、研究者が研究したいテーマを研究するのではなく、現場実践者からもっと研究してもらいたい内容を要求していく必要があります。研究された内容は言わば、現場実践者が実装する武器になるわけです。この精度を上げていくために、「より現場に活きる研究」を双方で同じ方向を見るために確認する作業が必要だと感じました。
そのことにより、自然体験や野外活動をより社会にとって価値のある質の高いものに昇華させていくことができるのだと思います。私たちにはもっと議論したり意見交換する場が必要だと感じました。
最後に、このような大会にもっと現場実践者が参画し、研究者との連携を深めることで、自然体験や野外活動は社会にとってより有用なものになる!と期待を感じた大会でした。また、逆に研究者の方が現場実践者のフォーラムやミーティングなどにも参画していただきたいと思います。
大会関係者の方貴重な機会をありがとうございました!