あるかもしれない100年後の麻雀のカタチ
時は2125年、テクノロジーの発展に伴い、麻雀における形も2000年代とは大きく変化していた。
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AIメンバー「何名様ですか?」
雀士A「2名で」
雀荘に入った2人の雀士は卓につく。卓には牌はなく、端末をセットできる台座があるだけだ。
2人の雀士はスマホのようなものを卓にセットする。すると、それぞれの目の前にホログラムが浮かび上がる。
この時代の雀士はそれぞれのテーブルで画面を操作し、戦わせる仮想雀士の設定を行う。
2125年の麻雀では、雀士自らが牌を手に取ることはない。
あらかじめ設定した雀士モデルを仮想環境で対局させ、その勝敗を競うことが現代の主流な麻雀スタイルとなっている。
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雀士のチューニングを終えると、100卓ある仮想環境の卓のそれぞれへ雀士が配置される。
対局開始の銅鑼がなる。
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プレイヤーの画面には、各卓の結果と雀士のステータスが表示される。プレイヤーはその画面を見て、雀士のパフォーマンスを観測する。
半荘は10分程度で終了した。5分間のチューニングタイムに入った。
ここまでは雀士Aが優勢のようだ。
雀士の中には1からモデルを作成する猛者もいるが、ほとんどの雀士は既存のベースモデルをカスタマイズして自身の雀士モデルを作成する。
この時代における雀士の実力とは、AIモデルを適切にチューニングできること、そして、そのための麻雀ノウハウをどれだけ蓄えているかで判断される。
力のある雀士でもモデルにうまくチューニングできなければ結果を出すことはできず、逆にチューニングがうまくとも元となるノウハウが少なければ、確率面で競り負けてしまう。
雀士モデル同士を戦わせたデータなどから、キーとなるノウハウを抽出し、自身の雀士モデルへ正しく反映させることが重要となる。
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結局対局は雀士Bの勝利となった。
最終結果は100点差の僅差だった。
雀士たちは卓からダウンロードした対局データを手にし、雀荘を後にする。
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居酒屋TORIGIZOKU
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このように、未来の雀士たちは自身のオリジナル雀士モデルを作成し、そのモデル同士を対局させる。
これにより、人間が対局した場合では不可能な量の対局数を1日で行うことができ、麻雀の実力を正確に競うことができるようになった。
その他にも、平均聴牌速度を競うスピード、同じ配牌での期待値を競うデュプリケイトなどのルールも人気だ。
AIモデルを用いてのシステマティックな対局は公平で奥行きがあるが、牌を用いて行うトラディショナルな麻雀もまた趣があるのではないかと考えさせられた。
終わり。