見出し画像

あるかもしれない100年後の麻雀のカタチ

時は2125年、テクノロジーの発展に伴い、麻雀における形も2000年代とは大きく変化していた。

***

AIメンバー「何名様ですか?」
雀士A「2名で」

雀荘に入った2人の雀士は卓につく。卓には牌はなく、端末をセットできる台座があるだけだ。

雀士A「今日のルールは1,000半荘マッチで良いかい?」
雀士B「いいだろう」

2人の雀士はスマホのようなものを卓にセットする。すると、それぞれの目の前にホログラムが浮かび上がる。

雀士A「NAGAREベースとはずいぶん古いモデルを使っているね」
雀士B「古い雀士は現代にはない読みがあるからね」

この時代の雀士はそれぞれのテーブルで画面を操作し、戦わせる仮想雀士の設定を行う。

2125年の麻雀では、雀士自らが牌を手に取ることはない。
あらかじめ設定した雀士モデルを仮想環境で対局させ、その勝敗を競うことが現代の主流な麻雀スタイルとなっている。

「遊びで牌を持つことはありますが、真剣勝負は雀士モデルですね。最低でも1,000半荘は回さないとただの運ゲーになってしまうので。オリンピックでもこの方式が採用されています。」

***

雀士のチューニングを終えると、100卓ある仮想環境の卓のそれぞれへ雀士が配置される。

「ルールの確認だけど、100半荘ごとにインターバル。チューニングタイムは5分。禁止モデルはなしのありありルールで良いかい?」
「チューニングあり、全モデルありは一番得意なルールだ。始めよう」

対局開始の銅鑼がなる。

***

プレイヤーの画面には、各卓の結果と雀士のステータスが表示される。プレイヤーはその画面を見て、雀士のパフォーマンスを観測する。

「対局中に見ているのは相手のアガリまでの経路ですね。手をひらけば後はAIが逆算してくれるので相手のモデル情報などを推測することができます。」

半荘は10分程度で終了した。5分間のチューニングタイムに入った。

ここまでは雀士Aが優勢のようだ。

雀士B「雀士Aのモデルは一打ごとにAIによる最適解を叩き出すShinryuモデルがベースでした。NAGAREモデルとは相性が悪い。次の100戦は、AODAISHOモデルで行きます。」

雀士の中には1からモデルを作成する猛者もいるが、ほとんどの雀士は既存のベースモデルをカスタマイズして自身の雀士モデルを作成する。

この時代における雀士の実力とは、AIモデルを適切にチューニングできること、そして、そのための麻雀ノウハウをどれだけ蓄えているかで判断される。

力のある雀士でもモデルにうまくチューニングできなければ結果を出すことはできず、逆にチューニングがうまくとも元となるノウハウが少なければ、確率面で競り負けてしまう。

雀士モデル同士を戦わせたデータなどから、キーとなるノウハウを抽出し、自身の雀士モデルへ正しく反映させることが重要となる。

***

結局対局は雀士Bの勝利となった。
最終結果は100点差の僅差だった。

雀士B「中盤でのリードが勝因でした。後半に出てきたMIMIZUモデルはおそらく彼のオリジナルでしょう。データにない鳴きで苦戦させられました。もう少し早く出てきていたら危なかったですね。」

雀士たちは卓からダウンロードした対局データを手にし、雀荘を後にする。

***

居酒屋TORIGIZOKU

雀士A「MIMIZUは、古のネット麻雀「テンホウトン」でたまたま見つけたんだ。まだチューニングが完璧ではなかったので温存してしまったよ。」
雀士B「テンホウトンは盲点だった。ジャンテイマしか見てなかった。そういえば話は変わるが、七対子に関する最新の論文は読んだかい?」
雀士A「ああ、彼らのアプローチは面白いね。単騎読みのチップスとして入れられる部分がないか検討中だよ」

***

このように、未来の雀士たちは自身のオリジナル雀士モデルを作成し、そのモデル同士を対局させる。

これにより、人間が対局した場合では不可能な量の対局数を1日で行うことができ、麻雀の実力を正確に競うことができるようになった。

その他にも、平均聴牌速度を競うスピード、同じ配牌での期待値を競うデュプリケイトなどのルールも人気だ。

AIモデルを用いてのシステマティックな対局は公平で奥行きがあるが、牌を用いて行うトラディショナルな麻雀もまた趣があるのではないかと考えさせられた。

終わり。

いいなと思ったら応援しよう!

たkる@notes垢
たkると申します。麻雀用品のサイトと書評サイト、そのほか色々とサイト運営をやっています。Noteではサイト運営とか麻雀のノウハウを書いていきます。よろしくお願いいたします。

この記事が参加している募集