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トルデジアン(TOR330)2024参戦記

2024年9月、イタリア北西部で開催されたトルデジアン(TOR330)に参加し、完走することができました。その参戦記です。


大会概要

大会名称:トルデジアン TOR330
レース概要:イタリア 北西部アオスタ州を1周するトレイルを繋いだコースを舞台に行われるレース
日時:(受付)2024/9/7、(レース)8〜15、(表彰式)16
距離︰335km
累積獲得標高:D+29608m
制限時間︰150時間
場所︰イタリタ ダオスタ州 クールマイユール発着
参加︰1085人
完走︰530人
完走率︰49%

今年は全体的に気温が低く寒かった。暑さに弱い私にとっては、それが好条件だった。
たけぷー結果
タイム:143:56:19
順位:342位

準備

大会前にこれといったトレイルの練習はできず。黒戸尾根の往復を1回。2200m upという他の場所では得られない登りっぱなしを体験できたので、この黒戸尾根往復は「とても良い練習になったなぁ」と感じた。時間への身体対応としては弘前6日間走を経験。

スタート前

スタート3日前の深夜に羽田発。ドバイ経由でミラノ空港。
ロストバゲージしないで荷物を受け取ることができて一安心。昨年はロストバゲージにより出走できなかった選手もいた。
空港からうっちーさんが手配した車に乗りクールマイユールに移動。
イチローさんにお願いしたシャレーに到着。スタート地点から1分の好立地。
スタート2日前、観光でモンブランがよく見える標高3400mの展望台へ。高地順応。夜にTOR450のスタートを見てテンションが上がる。
スタート前日、受付。受付時に装備チェック等は無く、パスポートのみ持参。
スタート5時間前、イチローさんにデポバック(約50L)を預けにいってもらう。
スタート2時間前、第1ウェーブのスタートを見に行く。「次は自分だ」と気持ちが引き締まる。

受付直後

レース


Stage1 スタート〜LB1(48.5km地点)

スタートは第2ウェーブ。日12:00にクールマイユールをスタート!
まあまあの雨だが、レースがはじまればあまり関係ない。
最初は街の中をグルッと回って、いったん川まで下ってから山の登り。
無理せずほぼ最後方からゆっくりランニング。
道から山道に入るところで10分くらい渋滞。先は長いので焦らずゆっくりと。
スタートで頑張ると、そのまま登りもスピードの速い集団に入ってしまい頑張らないといけないので慎重に行く。結果的にこれはとても良かった。
最初からいきなりCol d'Arp(2571m)までの1200m up。無理に前の人を抜くことなく、ペースを合わせて淡々と登る。
下りは周りのペースよりも自分の快適ペースで下りる。でも飛ばすのは先が長いので厳禁。
最初のエイド、水を補給して軽くチーズなどを食べてすぐに出発。エイドでは必要なことを素早く済ませていかに早く出るかがポイント。走っていて10人抜くのは結構大変だが、エイドで10人抜くのは意外に楽。
さらにその後、2つの峠を超える。2つとも標高2500mを超える峠。標高が2500mを越えると、明らかに身体の動きが鈍く重くなる。とはいえ、スタート2日前に3400mの展望台へ行ったことが、精神的な高度順応になっていたように感じた。
峠を越えて集落に降りてからLB(ライフベース)までがかなり長かった。LB直前で古茶さんに会う。
最初のライフベースLB1に月1:40(13:40)に到着。
48.5km進むのに13時間40分かかった。遅いように感じるけど、これがトルデジアン。とにかく長い登りと長い下りが繰り返される。
LBではデポバッグ(預けていたバッグ)を受け取ることができる。
最初のLBは寝ないでご飯を食べて出発を考えていたが、目的が「完走」のため焦る必要もないので3時間寝ることにした。
LBには睡眠スペースがあり、そこにはコット(簡易ベッド)が並んでいる。適当な空いているコットを見つけて、寝ることになる。毛布なども前に使った人のものがそのまま置いてあれば、それをそのまま使う。衛生面等あるかもしれないが、私はすぐに寝たいので、よほど衣類が濡れたりしない限りは着替えなどはせず、そのまま寝ていた。
寝ているときに、デポバッグに入れていた大容量モバイルバッテリー(30000mAh)にスマホを繋いで充電。
レース中の緊張のためか2時間ちょっとで目が覚める。最初のLBなので無理に長居する必要もないので出発の準備。
準備は基本的に、テポバッグから次のStage用の食料(尾西のアルファ米、ジェル等)を出してザックに詰めて、水を補給、尾西に水を注水、ガーニーグーをしっかりと足に塗って、そして出発となる。
LBではいかにやる作業を抜け漏れなく素早く行うかが重要だと実感。
LBを出ることをスタッフに伝えてチェックしてもらい、次のStageに進んでいく。

ライフベース(LB)の睡眠スペースの様子

Stage2 LB1〜LB2(104km地点)

LB1に3:18滞在し、月4:58(16:58)に出発。
このStage2が最初の山場。標高2800,3000,3300mの3つの峠を超える。しかも1つ超えると標高1000m以上も下らなくてはならない。「参加者への試練にも程があるだろ」って言いたくなる。エグいコースだ。
LBを出るとき、小澤さんと一緒。すぐに登りが始まり、お互いのペースで進む。
LB1がある標高1640mから最初の峠Col Fenetre(2840m)まで1200m up。焦らず汗をかかないくらいのペースを心がけて登る。延々と登るが、いつかは終わる。ただ前に進むことのみを考え、体を前に進めていく。そうしていると2840mの峠を超えた。
登ったら下る。この下りが曲者。ゆっくりいこうと思って、足取りをゆっくりにすると、前ももと膝へのダメージが意外に溜まってくる。そのため、小気味良く、リズムよく下ることを心がける。リタイアした選手の大半が下りで足を痛めている。そのくらい、下りはダメージがあって、1歩の負担を少しでも減らせるのかが重要。登る力よりも下る力の必要性を痛感した。
せっかく稼いだ標高を一気に1100mも下らせられる。標高1740mにレーム=ノートル=ダムのエイドがあり、岡部夫妻と会う。2人とも調子が良さそう。
エイドで水と温かいスープとお茶を飲んで出発。
ここから標高3002m(Col de l’Entrelor コル・デ・レントレロル)まで登る。淡々となるべく無心で笑
2500mあたりから身体が重くなるが、「高地なんだから仕方ないこと」とと諦めて登る。ゆっくりなので息は上がらず、淡々と。しかし、なぜか身体に力が入らない。シャリバテだと気づく。けっこう食べてたつもりだったが、足りなかった。慌ててジェルやグミ、尾西のビリヤニを補給して、1時間後くらいから徐々に復活してきた。
途中、飼われているアイベックスの群れを見て、ちょっと癒やされる。
峠付近はかなり寒く0℃くらい。指付きグローブをしていたが、指先の感覚がなくなる。「まぁ、暑いよりはこっちのほうが良い」という心境。とはいえ、もし天候が雪だったら路面は滑りやすくなりかなりヤバい状況だったかもしれない。
標高3002mの峠も超えて、また標高1660m(マイゾナッセ)まで下る。下りこそ慎重にダメージを少なく。
下りきったエイドでうっちーさん、鈴木家と会う。岡部夫妻とミキティにも会う。
持っていた尾西のビリヤニを食べて、足にガーニーグーを塗って出発。(ガーニーグーは12時間を目安に塗り直す)
ラストの標高3299mの峠(コル・ドゥ・ロゾン)を目指す。この頃になると、1600m upとなっても、「時間をかければ登れるでしょ」という思いが出てきて、登ることに対する嫌な感情は薄れてなくなっていった。むしろ下りが嫌になるくらい。
3299mの峠を超えて、あとは下るだけだったが、峠の次のエイドからの下りが本当に楽しくなかった。白い石の段差を延々と下るのだが、「本当にここを下る意味があるのか?」と主催者に聞きたくなるくらい嫌だった。後で他の選手に聞いても同じ意見だったので、みんな嫌いな下りでした笑
なんとか下りきって、道路とその脇のトレイルなどを繋いでLB2 コーニュに火0:24(36:54)到着。
すぐにご飯を食べて、3時間寝る。
3時間しっかりと寝て、出発前に水を補給していると、こーいっちゃんに会う。風邪で体調が悪いとのこと。

トルデジアン最高地点 3299m

Stage3 LB2〜LB3(149km地点)

LB2に3:43滞在し、火4:37(40:37)に出発。
Stage3は比較的楽な区間と聞いていたので、気分も少し楽に。越える峠も2800mの1つのみ。
街中を3kmほど進んで、山に入る。山への取り付きのところが事前配布されたコースデータのGPXと違うが、だいたいそんなもの。気にしない。定期的に設置されたフラッグが正しい。
ゆっくりと山を上がって行き、夜が明けたところでNZから参加のTOMさん(日本人)に会う。いろいろ話をしながら進んでいく。しかし、お互いのペースで。
送電線が通る峠(標高2826m)を超えて、下りに入る。次のLBまであとは27kmずっと下り。足へのダメージを軽減するため、とにかく足を止めないで、軽い足さばきで。
エイドの山小屋で再びTOMさん、そして安河内さんに会う。パスタを食べて出発。ひたすら長い下りを下ってLB3のドンナスへ向かう。
この日は天気が良く、気温も高くなってきた。どうやら28℃。脱水と熱中症が怖いのでペースを抑え、汗をなるべくかかないように進む。それでも暑くて汗をかく。30分に1回、時計にセットした給水アラームが鳴ったらしっかりと給水する。
だいぶ下ってきて、あと標高で300mくらい下ればLBなのに、なぜかそこから100m以上も登り返すところがあり、気分的に辟易してしまう。「素直に下らせてほしかったなぁ」と思ってしまう笑
ドンナス旧市街のところにGPXではCP(チェックポイント)があったので、ここがLBなのかと勘違いして探すが、それらしい施設が見つからず。不安になり、スマホは使えるので他の日本人選手やサポート仲間にメッセージ。たまたま通りかかった他の選手に聞いたら「LBはあと5km先だよ」とのこと。一安心して進む。
LB手前でうっちーさんが迎えに来てくれて嬉しかった!かおりんやイチローさんに会う。
LB3 ドンナスに火17:17(53:17)着。
パスタ、ヨーグルト4つ、ハムをたくさん食べて、3時間寝る。食べてから寝れば、寝ている間にエネルギーに変換される。
寝た場所の目の前に高坂さんがいた。
3時間寝て、起きると寝る場所待ちの選手が何人か並んでいた。かおりんがこーいっちゃんを探していた。こーいっちゃんはどうやら多めに寝ていたらしい。
出発の準備、補給食の補充、水の補充、足にしっかりとガーニーグーを塗る。LBは居心地がいいので、つい長居したくなるが、やるべきことが終わったらサッと出ていかないと、タイムロスになる。このロスが積もり積もって、最終的にかなりの時間になってしまうので要注意。

古代ローマの道

Stage4 LB3〜LB4(204km地点)

LB3に3:56滞在し、火21:13(57:13)出発。
トルデジアンの偶数ステージはキツいと言われている。実際、このStage4は行動時間が24時間近くになった。
LB3を出るときに鈴木家のハヤト12歳が塩むすび持ってきてくれた。すごく嬉しい差し入れ。
LB3から5kmほと街中を歩いて、そこから登りだけどずっと街中といった感じ。
次のエイドは集落の中にあったのですが、夜なのにとても賑やかで音楽を演奏していたりしてました。そこから、さらに登るのですが、やはり淡々と焦らずゆっくりと。
そんな感じできていて、今回は気温が低いのが私にはとても有利でまったく気持ち悪くなることがありませんでした。
しかし、コーダ小屋への登りで少し気持ち悪くなり、戻しそうになったので吐き気止めを飲んで、10分ほど休んでました。そこへTOMさんと安河内さんが通りかかったので、付かせてもらい一緒に行かせてもらう。すると吐き気も眠気も納まった。
登って行くと、今回初めての稜線に出た。深夜なので見ると、山の反対側の街の夜景がすごくキレイ!トルデジアンでの稜線歩きはこのくらいしかない笑
稜線を行くとコーダ小屋。多くの選手が小屋外に設置されたテント内にあるテーブルに伏せて寝る。小屋に入って、ポークソテー€10を注文し食べる。近くには高坂さんが寝ていた。
コーダ小屋で補給して、TOMさん、安河内さんと3人で先に進む。次の小屋までアップダウンを何度も繰り返し、途中でこーいっちゃんが颯爽と抜いて先行。
次のバルマ小屋のロケーションが素晴らしい!小屋もキレイで中はカフェ。ここでビーフとポレンタとカプチーノを食べる。英気を養ってさらに前進。
このあたりは一緒に進んでいたTOMさんが昨年の大会でも通っていたのでとても詳しく教えてもらう。
次のエイドはBBQエイドでお肉を挟んだサンドイッチが美味しく、一緒にビールも飲む。
さらに次のエイドは、尾根の上の簡易エイドだが、ストーブの熱で作ったチョリソーとチーズが入ったポレンタが最高に美味しかった。
そこから一気に下ってニエルへ。アッコさん(岡部夫妻の奥さん)、安河内さんとニエルに到着。そこでかんちゃんに会う。ニエルのエイドでポレンタをもらったが、量が多く、半分TOMさんに食べてもらう。
ニエルから次のLB4グレッソニーまでさらに1000m upの峠越え。音楽プレーヤーでサザンの曲を聴きながら、淡々と無心になるようにしながら進む。気にするのは自分の1歩1歩の足取りだけ。
峠から下りは結構寒かった。峠から2kmほどでオリジナルピザを提供するエイドに到着。オリジナルピザはちょっと生地がボソボソするが、ピザは嬉しい。そのエイドからLBまで7.2km。走ってみたが、なかなかの下りでキツかった笑
もう少しで街に出そうなので、頑張って走る。暗いのでライト点灯ラン。調子付いてきた次の瞬間、ちょっとした石につまずいて、前にダイブして転ぶ!想像以上に足が上がってない笑 幸い怪我はなく一安心。ダイブで落としたものがないことをしっかり確認してから、ゆっくり小走りで前に進む。やっと街に出てから、さらに3kmほどいき、LB4 グレッソニーに水21:25(81:25)到着。ついに200kmを超える。結局、Stage4は24時間かかった。
LBでは尾西のビリヤニ、ヨーグルト4つ、ハムを大量に挟んだパンを食べる。
GPSと書いてあるコーナーがあったので、電池が切れたGPS機器を持って行ったら交換してくれた。どうやら、レンタルGPS機器の電池切れについては、スタッフからの「GPSの電池は切れてないか?」などの声掛けはなく、自己申告しないと交換してくれないみたい。睡眠環境はとても良いので、少し多めに睡眠4時間。
目覚めて、出発準備をしているときに、高坂さん、仲野さんと会う。仕度の間にミキティとアッコさんが先に出発。

美味しかったポレンタ

Stage5 LB4〜LB5(237km地点)

LB4に5:25滞在し、木2:50(86:50)に出発。真夜中にスキー場と思われるところを延々と登る。登っている間にミキティとアッコさんに会い、先行させてもらう。
長い登りのあとは必ず長い下り。下りきったところのエイド前でミキティとアッコさんが合流して3人でエイドへ。
ハムとお茶を飲んですぐに次に向けて私だけエイドを出た。しかしすぐに眠くなり、隣の集落のバス停で10分仮眠。そこからの登りも眠くてペースが上がらず、アッコさん、ミキティに先行してもらう。
放牧された牛を見ながら登っていくと、立派な山小屋に到着。小屋のエイドでしっかりと補給したことで、眠気が和らぎエネルギーも復活。
その後峠を2つ越えて長い下りを終えたところがLB5ヴァルトゥルナンシュ。LB5に木14:30(98:30)に到着。そこで、石川家、束村さんに会い。ミキティ、アッコさんにも会う。しっかり食事をして、シャワーを浴び、3時間睡眠。
起きた後は出発準備。LB5から軽アイゼンを携行することを知り、デポバックから取り出して荷物に入れる。

もう何度目の峠(Col)だろうか…

Stage6 LB5〜LB6(285km地点)

LB5に4:19滞在し、木18:49(102:49)に出発。ここでスタートから100時間を超えた。
LB5を出るとすぐに山に入り、登りはじめる。それと同時に夜になり、ライトを点け進んでいく。前方には先行している選手の明かりが上のほうで光っていて、「あそこまでいくのかぁ」と思ってしまうが、意外にすぐにその場所まで行けたりする笑
途中GPXのコースデータよりもかなり標高を下まで落としたルートになっていたが、黄色いフラッグ通りに進んでいく。黄色いフラッグが絶対。
コースは標高2500mあたりをアップダウン。天気も悪くなってきて、山の上は吹雪。一時、私の前後に人も見当たらず、肝心のフラッグも風で何本も飛ばされていて見当たらず。
フラッグが見当たらないのでGPXのコースデータを頼りに進んでいた。以前経験したAZUMINO24での冬の深夜のナビゲーションを思い出し、ひとりなので不安な気持ちがありつつも、懐かしいのとワクワクしながら進んでいた。
標高2704m小屋で軽アイゼンを装着。その後の雪で白くなった道をスリップすることなく下ることがでた。
そこから延々とオヤスのエイドまで下り。
Stage6はオヤスのエイドからもう1つ峠越えがあり、800m upする。この頃には登りに対して感じることは何もなく、今まで通り淡々と登った。一番恐れていたのが天候で、大雪により大会が中止になることが怖かった。実際2022年はラスト30kmが大雪でキャンセルになっていた。
峠を越えるところでアメリカから来たウィリアムと会う。下りは調子よくガンガン下る。
最後のLB6オロモントに金14:37(122:37)着。
LB6でビーフシチューとホワイトライスを食べて、ビールを飲んだ。スタッフが「ホワイトライスあるよ」と言ったので白米を想像したら、白ご飯リゾットだった笑
3時間睡眠して、いよいよゴールに向けて出発準備。

LB6でビールを飲む

Stage7 LB6〜ゴール(335km地点)

LB6に3:47滞在して、金18:24(126:24)に出発。出発前にスタッフが軽アイゼンの現物確認。装備の確認は今回初めて。
もうLBはなく、次はゴール。しかし、まだ途中にラスボスのマラトラ峠がある。山の上の天候は雪なので積雪があると、2022年のようにキャンセルになる可能性がある。「早く通過しないと」という気持ちになる。
最初は順調に進むが、暗くなったとたん睡魔に襲われる。途中で10分仮眠したりしたが、すぐにまた襲われる。
ビーフポレンタが美味い小屋エイドで食べた後、そのままテーブルで突っ伏して寝ていたら、スタッフに「次のエイドで寝れるよ」と言われ起こされた。正直、今この瞬間に寝たかったので、不機嫌になった。
次のエイドのボッセまで眠いながらも急ぎ足でいく。やっと着いて寝ようと思ったら、ベッドは満杯。結局、テーブルに突っ伏して寝た笑
ボッセを出ていよいよ最後のマラトラ峠へ向けて登る。雪は小降りだが風が強い。マラトラ峠前の小屋エイドに行くと大勢の選手で溢れていてテーブルは満席だった。奥から池田さんに声をかけられ、座ることができた。聞けば「強風でマラトラ峠越えがストップされていて、ちょうど今解除になり数人のグループを組んで出発できるようになった」とのこと。現金€5でパンケーキとカプチーノを食べて、少し休む。明るくなってきた頃に、その場に居合わせた日本人4人とマラトラ峠に向けて出発。
池田さんのアテンドで淡々と登って、途中で軽アイゼンを着けてマラトラ峠に到着。峠スタッフから「ウェルカム マラトラ!」と歓迎してもらう。みんなで写真を撮って峠を越える。
もうゴールは確実!と思ったがとにかく風が強い。強風で身体がもっていかれそうになる。雪が少なくなったら軽アイゼンを外す。
歩いていると地面が固く感じる。確かに寒さで路面が多少凍ってるかもしれないが、それ以上にシューズのクッション性がなくなったように固い。ここまでスタートから300km以上をOlympus6 1足のみできた。シューズを休ませず履き続けたため、クッション性がなくなったのかもしれない。昨年、本州縦断1550kmでスタートから700kmをシューズ1足で行ったときに同じ感覚になったことを思い出した。でも、今回はもう残り25kmでゴールだ。
モンブランが大きく目の前に見えて、クールマイユールに来たときにロープウェイで登った山も見える。残り10kmあたりからハイカーやトレイルランナーが多く、挨拶をたくさんする。「帰ってきたんだ」という気持ちが溢れ出て来る。最後のエイドを通過して残り5km。下りはもう抑える必要はない。全力で下っていき、何人かの選手に先行させてもらう。
クールマイユールの街に入り、ゴールまで500m。ちょうどお昼どきなので多くの人が祝ってくれる。風邪によりリタイアとなったこーいっちゃんが一緒に並走してくれてゴールが見えた。最後の花道から一段高くなったゴールに登りガッツポーズ。土11:56、スタートから143:56が経過していた。
ゴール後は、仲間に祝福してもらう。ツラかった思いと嬉しさが混ざった感情で、涙が溢れた。6日間、前に進むことが日常になっていたものが、これで終わったんだと実感。もう前に進むことも山に登って下ることもしなくていい。私のトルデジアンは終わった。

雪と爆風
ゴール!長かった…

ゴール後

宿に戻りシャワーを浴びて、少し寝る。起きたらアッコさんのゴールを迎えにいく。
アッコさんも元気にゴール。その後、仲野さんも無事ゴール。18:00にゴールはクローズしてトルデジアン2024のレースは終わった。
宿に戻って気を失うように寝た。しかし、なぜか3時間で目が覚める。頭の中ではまだレースが続いているのかな笑

表彰式

翌日11:00から表彰式。30km,100km,130km,330km,450Kmの各カテゴリーの表彰が行われる。ちなみにTOR330の優勝タイムは69時間。3日かからないのは恐ろしい。
そして最後に330kmの選手が1人1人呼ばれて完走Tシャツを渡される。それに着替えて記念撮影。総勢500人の記念撮影。そして大会はすべて終了となった。

今年の完走Tシャツは黒



ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


装備

トルデジアンでよかった装備を5つ紹介します。参考になれば幸いです。

1.ガーニーグー[ガーニーグーJapan]
2.Olympus6[ALTRA]
3.パワーゲイター2[Teton Bros.]
4.アルファダイレクト ロングスリーブシャツ[Answer4]
5.VERTIX2[COROS]

1.ガーニーグー[ガーニーグーJapan]

超ロングにおいてなくてはならない擦れ防止クリーム。足裏のトラブル(マメや塹壕足など)を発生させないために必須。足裏のトラブルの発生リスクを軽減するためにガーニーグーを塗っている。10年以上使用しているが、何度となく助けられていて、今まで足裏トラブルはほとんど無し。今回も快適にレースを進めることができた。

2.Olympus6[ALTRA]

トルデジアンで履いた、高いクッション性、グリップ性、安定性を兼ね備えたロングトレイル用のシューズ。ALTRAは足幅が広い私には合っているメーカー。その中からOlympus6を選択。スタックハイト(足裏から地面までの距離)が33mmと厚く、岩場が多いトルデジアンのコースで、岩の突き上げを感じることがなかった。ただ6日間連続使用により若干クッションがへたってしまい、硬さを感じた。Olympus6を2足持って行き交互に履けばよかった。

3.パワーゲイター2[Teton Bros.]

ALTRAのトレイルシューズに装備されているGAITER TRAPに対応した専用ゲーター。シューズの中に小石や木の葉、小枝が入らないようにするために装着。シューズに小石などが入るとストレスになり、入るたびに毎回小石を出すためにシューズを脱いだりするとタイムロスになる。そういったストレスとタイムロスから解放されたのがとても良かった。

4.アルファダイレクト ロングスリーブシャツ[Answer4]

保温性と通気性が高い生地「アルファダイレクト」を使用したロングスリーブシャツ。全体的に気温が低かった今回のトルデジアンで大活躍。通気性が良いので、ちょっと寒いと感じたくらいから着用して山に登り、極寒-15℃の峠越えのときでも寒さをあまり感じなかったのはアルファダイレクトのおかげだと感じた。また、防寒対策としてザックに入れてもとても軽いので安心。

5.VERTIX2[COROS]

忘れちゃいけないGPSウォッチ。GPS+ナビゲーション(地図表示)で90時間も持つ。そのため、レース中の充電は1回のみ。道迷いなく完走できたのはこの時計があったから。


補給

トルデジアンで良かった補給5選を紹介します。参考になれば幸いです。

1.アウトドアスパイス ほりにし[堀西]
2.Black Black ガム[ロッテ]
3.ヨーグルト
4.アスリチューン スピードキュア[隼]
5.ロースハムサンド

1.アウトドアスパイス ほりにし[堀西]

エイドの食べ物を味変させるアイテム。元マラソンランナーで現ほりにしの人の下門美春さんが激推しするスパイス。エイドでパスタやスープが提供されるが、塩気が足りない場合があり、そういったときにほりにしをかけて食べると美味しく塩分も補給できる。また、ほりにしそのまま食べて塩分補給もしたが、かなり良かった。100均の容器に入れて持参。

2.BlackBlackガム[ロッテ]

眠気防止のために持参したガム。眠気に襲われたときにガムを噛むと一時的ではあるが眠気に対抗可能。今回BlackBlackガムを3つ持って行ったが、正直足りなかった。2コStageに1個の計算で持って行ったが、Stageごとに1個、合計7個以上が必要だった。噛みすぎると顎が痛くなる可能性があるので要注意。

3.ヨーグルト

LBで提供されていたヨーグルト。メーカ名は不明だがダノンのヨーグルトに類似。4種類の味があったが、各LBで4種をすべて食べた。最終的にはヨーグルトを食べることがLBの楽しみになった。

4.アスリチューン スピードキュア[隼]

リカバリー用のサプリであるアスリチューン青。デポバッグに入れておき、各LBで寝る前に摂取。数日にわたる長いレースの場合は回復することも視野に入れてサプリ等も摂取する必要がある。

5.ロースハムサンド

LBでの私のメインの食事。LBでは様々な食べ物が提供されていたが、そのなかでロースハムが塩気もあって美味しかった。そのまま食べてもOKだが、パンに数枚のロースハムを挟んでロースハムサンドとして食べていた。

補給について、LBとエイドが充実していて、温かいパスタやスープなどが提供されるので、食料が足りないということはない。しかし、日本人選手に一定数そのパスタなどの味付けが合わず食べたくないという人がいた。幸い私は何でも食べることができたが、もし合わない場合は日本から食べるものをデポバッグやサポートに預ける必要がある。

山小屋のエイドでは現金やカード支払いで食事や飲み物を買うことができる。とは言っても、そのような山小屋はそこまで多くはない。バルマ小屋は、まさにカフェですごかった!


気づき

トルデジアンTOR330に参加して、気づいたり感じたことを列挙します。トルデジアンだけでなく他の大会にも適用できる気づきもあります。何か1つでも気になることがあれば幸いです。

  • 全体的に寒かったのが良かった。もし、暑かったらLB2まで行けていなかったかもしれない。2023年大会では脱水・熱中症の選手が続出だったとか。

  • 初参加で完走目標の場合は第2ウェーブが良い。後半では第1と第2の選手が結局入り混じってしまうため、エイドやLBの動きは第2ウェーブの最終カットオフタイムを基準に動いている。第1のカットオフタイムは第2よりもスタートが2時間早いため全部2時間早い。

  • 第1ウェーブから第2ウェーブへの変更は可能。逆は不可。

  • 完走とタイム短縮のジレンマがときおりあったが、「昼間にゴールしたい」というちょっとやましい気持ちが勝って、しっかりと休んだ。結果的にはそれが良かった。

  • 登りよりも下りを重視すべき。下りで足を故障している選手が多かった。

  • 1000m以上の登りでも気持ちは慣れる。最初は「えーっ、1000m upか!」って思ってたのが、途中から「あっ、1000m upね」と軽くとらえられるようになる。

  • 下りは足さばきが速いほうがダメージがたぶん少ない。慎重にゆっくり下ったからといって足のダメージが少なくなることはないように感じる。

  • エイドで一気に大量に食べない。いっぱい食べたくなるが、大量に食べて歩いていると次に眠気が襲ってくる。

  • フラッグが見当たらなくなったら時計の地図を確認して、戻るのが確実。

  • LBで寝る前に食べるのがいい。寝ている間にエネルギーに変わる。

  • LBでやることをリスト化すべきであった。素早く抜け漏れなくLBでの作業を行うため。

  • LBでダラダラしていまうと、結果的にかなりの時間をロスする。長居したくなるが、やることやったらサッサと出発する。

  • 眠い時間帯はグループでいくとやり過ごすことができる。他の選手と喋ったりすると眠気に対抗できる。

  • 練習として黒戸尾根往復は効果的。一回で2200m upはなかなか経験できない。黒戸尾根~仙丈ヶ岳まで延長して往復すると42km D+4500。これはだいたいLB間の距離と累積獲得標高と同じくらいなので、もしできるなら経験しておくといい。

  • 参加のための練習としては走る練習よりも歩く練習が効果的。圧倒的に「走る時間 << 歩く時間」なので。

  • レース中の現金は€100あれば問題ない。カードが使える小屋もある。

  • GPSウォッチのナビゲーション機能は必須。道迷いがなくなり、タイムロスが少なく気持ち的にも良い。

  • 完走目標ならとにかく最初は後方から。スタートで頑張ると、そのまま登りも速い集団に入ってしまうので、いつまでもキツくなる。

  • ポールは必須。ポール練習も必須。ノルディックウォーキングの練習が効果的かも。

  • あきらめない気持ち。1歩進めば1歩ゴールに近づく。とにかく1歩づつ前進する。

  • 止まっているときは時速0km。これが本当に重要。なるべく止まらずに少しでも前に進むことを心掛ける。

  • メリハリはしっかり。LBで休むときはしっかりと止まって休む。休むかどうか悩むなら進む。

  • キツいときは「このキツさは今この瞬間しか味わえない」と思い込む。ツラい状況、キツい状況を人生においての貴重な経験をしている瞬間だと自分に言い聞かせる。

主な装備一覧

服装

  • シャツ

    • ドラウトセンサー(長袖)

  • インナーシャツ

    • ドライレイヤー

  • インナーパンツ

    • T-8コマンド

  • ハーフパンツ

    • パタゴニア バギーズパンツ

    • ジンガー

  • タイツ

    • ロングTESLA

    • ハーフタイツ 2xu

  • カーフゲイター

    • ザムスト

  • アームスリーブ

    • OLENO

  • 靴下

    • Injinji 5本指

    • Tomo's pit

  • シューズ

    • Altra Olympus6

    • Topo Ultraventure

  • ゲイター(砂避け)

  • ゼッケンベルト

    • Milestone

  • レインウェア上

    • ストームクルーザー

    • レインウェア下

    • ストームクルーザー

  • ウィンドブレーカー

  • 帽子

    • ハンチング

  • サングラス

    • Answer4

  • 手袋

    • 指付きトレイルグローブ

    • 指なし

  • 防寒

    • アルファダイレクト

    • モンベル帽子

    • バフ

    • ポリゴンダウン

    • 防寒テムレス

電気類

  • ヘッドライト

    • マイルストーン

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