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ひとつずつ? ひとつづつ?

歴史的仮名遣では「ひとつづつ」ですが、現代仮名遣いでは「ひとつずつ」となります。

「ひとつずつ」の表記は、昭和61年内閣告示第1号「現代仮名遣い」に基づくものです。それによれば、「ぢ」「づ」は連濁や複合語における用法のみとされています。例えば、「つづく(続く)」(連濁)、「はなぢ(鼻血)」(複合語)などの類です。そして、「ひとりずつ」など「現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等」は「『じ』『ず』を用いて書くことを本則と」することになっています。

ただ、何をもって「一般に二語に分解しにくいもの」とみなすのか、という判断基準はかなり曖昧です。例えば、「世界中」は「世界」と「中」に分けられる複合語ですから、上に従えば「せかいぢゅう」となるはずです。しかし、一般には「せかいじゅう」の表記が通用しています。国語審議会もこの点を突かれて明確な答えを出せず、「現代語としては、語構成の分析的意識のないものと考えられ」ると苦し紛れに辯明するしかありませんでした。

そもそも歴史的仮名遣が本来に近い姿なのであって、さまざまな音の変化を経て成立した現代音に整然としたルールを設けようとする試み自体に無理があります。そのため、現代仮名遣いは、書き分けの基準を書き手の主観に依拠せざるを得ないという欠陥を抱えているのです。

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玉城武生
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