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天狗からいろいろと学んできた少年 続続続続


 壺で山奥に来たはいいが、父母が恋しくて泣きじゃくった寅吉は家に送り届けてもらい、この事は秘密に。毎日五条天神のとこに来れば、占いを教えてやる。と老翁は言った。

あらすじ






 約束したとおり、次の日の昼過ぎに五条天神の前で待ち合わせ、寅吉は老翁に背負われて山に飛んでいく。何を教えるわけでもなく、あちこちの山々へ連れて行ってもらい、花を見たり、鳥を取ったり、山川の魚を取ったりして遊んでくれた。日が暮れてくると、例の如く背負って家の前まで送ってくれる。






 寅吉はその山遊びの面白さにはまっていき、毎日のように老翁についていった。両親にはいつも、『下谷広小路の井口という薬屋の男の子と遊びに行くよ』と言って出かけていた。





 ある時、いつもの五条天神には行かず、七軒町のあたりを散歩してたら、「わいわい天王」という鼻が高くて赤い顔のお面をかぶった人がいる。袴を着て、太刀をさし、赤い紙に『天王』という二文字を刷った小札をまき散らして、子どもたちを集めては、






『天王さまは、囃(はや)すがおすき、囃せやこども、わいわいと囃せ。天王さまは、喧嘩がきらい、喧嘩をするな、なかよく遊べ』





 と囃しつつ行くのが寅吉も面白く、大勢の子どもたちに混ざって一緒に囃していたら、いつの間にか遠くにまで来ていた。






 日はすでに暮れ、子どもはみんな帰ってしまった。わいわいと歌いながら札を撒いていた人が道のわきでお面を取っているのを見たら、いつも寅吉を背負ってくれる老翁だった。






寅吉『なんだーおじいちゃんかー、こんな事もしてるんだー』

 と軽く話しているとすぐに真っ暗になったので、老翁は寅吉を送り帰してくれた。家の近くで寅吉の父が心配して探していたので、寅吉の父に、

老翁『この子を探してたのか?遠くで迷っていたから、こうして連れてきた。』

と寅吉を渡した。

 寅吉の父は喜び、名前と住所を聞き出したが、老翁はテキトーな名前と住所を言って、帰っていった。


 翌日、言われた住所にお礼を言いに尋ねたが、もともと戯言だった住所には誰も居なく、寅吉の父はむなしく帰っていった。




 その後も、たいてい毎日のように老翁に連れて行ってもらった山は、初めは茨城県の南台丈(今の難台山)だったが、いつからか同じ茨城県の岩間山(今の愛宕山)に連れて行かれて、違う師匠に学んだ。


 まず百日断食の行をさせて、師弟の誓状を書いた。ここで寅吉が、

寅吉『前から懇願してる占いを教えてほしい』



師匠『占いな。占いなんてすぐに覚えられる。それに実を言うと占いってあんまりいいもんじゃないんだ。他にも学ぶ事たくさんあるから。最初は違うことからやろう。』


しぶる師匠に寅吉は顔を膨らませた。


つづく

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