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天狗からいろいろと学んできた少年 続✖️六


7才から11才まで、5年間山に行き来して色々と学んだ寅吉だったが、師匠の勧めで11才の秋から池之端の正慶寺で禅宗の教えを学んだあと、覚性寺で富士派の日蓮宗の教えを学んでいた。
その途中に、父がみまかられてしまった。

前回のあらすじ


 この覚性寺へ奉公中、

「大切なものをなくした」

と、人が話してるのが聞こえてきた。


 その時、どこからともなく頭の中へ話しかけてくる声があり、

【それはある人が盗んで、広徳寺前の井戸の横に隠しておいてある】

と教えてくれた。

 その通りに失くしものをした人に伝えたところ、井戸の横を見てみたら本当にその失くしたものがあったという。
 失くしものをした人は驚いてその事を人々に話したので、寅吉のところに卜(うらな)ってほしいと人が殺到した。

 まじないを唱え、邪気やもののけを払う治療の“呪禁”や、患部に手をかざしながら様々な状態の発見や治癒や癒しを与える“加持”などを行えば、殺到した人たちにことごとく“験”が現れる中で、宝くじの様な富の題付というものの番号を何度か言い当てたりもした。
 来る人は、宝くじを買うとは言わず、神社に納める番号を聞きにきていた。22〜23人中、16〜17人は的中していたという。
 6〜7回は当たらなかったが、うち5回は、早く他の人の手に渡るから外れると寅吉はわかっていたとも言う。

 このように、たくさんの人が尋ねてきて煩わしかったので、隠れて人に会わないようにしても、覚性寺には寅吉目当てに人が次々と訪れる。

 住職も押し寄せる人に驚いてしまう。
(寅吉もまだ子供だから、世間の人は私が変な怪しい術を教えていると思うだろうし、こんな風にうちの寺が世の中に広まってもたまらん。人ばかり尋ねてくるのがいやなのか、隠れがちで可哀想だしな。)と気を遣って、寅吉を家に帰してしまった。

 この後1ヶ月ほど家にいて、またまた師匠の教えで日蓮宗の宗源寺という身延派の寺へ弟子入りして、この寺で剃髪した。


 このお寺で剃髪して正式に弟子になった寅吉は、普通では知り得ないような秘事をとてもたくさん知る事となる。

つづく

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