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天狗からいろいろと学んできた少年 続

あらすじ
平田篤胤は、翁に誘われて、友達と天狗のとこに居た少年を見に山崎美成の所に向かっていた。


 ちょうど良く美成も居て、ウワサの少年を呼び出し、翁と私に見せてくれた。その少年は、私と翁の面をじっと見つめて、もじもじしてるとこを美成が横から、『辞儀せよ』といったら、ぎこちないお辞儀をしてきた。



 なんとも憎めない普通の少年で、年齢は15才と言ってるが13才ぐらいに見えて、眼は人相家に言わせると“下三白”という眼で大きい。俗にゆう【眼光 人を射る】ごとく光ってて、変わった顔立ちだ。



 脈を取って、お腹も見た。
 (平田は医者でもある)



 お腹は小腹だけどしっかりしてる、脈は6〜7才の子供に似てる。与惣次郎という者の二男で名前は《寅吉》



 1806年寅年12月晦日の朝7つ時に生まれて、年も日も時間(刻)も【寅】だったので名付けた名前とのこと。



 父は3年前に亡くなっている。



 その後は兄の庄吉が18才で少し商売をして母と幼い弟妹を養い、かまどに細い煙を立てているという。



 この寅吉、私の顔をまじまじと見て、笑みをこぼし、思い立ったように『あなたは神さまなり』と何度も言ってくる。私は、その言い方がなーんか怪しくて答えもせずにいたら『あなたは神の道を信じ学んでいる』と言ってきて、美成が横から『この人は平田先生と言って古学の神道を教えてるお方だ』といえば、『うんうん、そう思った』と言う。
 これにまず私は驚いて、『それはどうやってわかるんだい?神の道を学ぶのは良い事かい?悪いことかい?』と聞いたら、『なんとなく神さまを信じてるお方だと心の中で浮かんだから、そう言ったんだ。神の道ほど尊い道はないから、神さまを信じるのはとてもいい事だよ』と答えた。翁も氣になって、『ワシはどうだい?』と聞くと『あなたも神の道を信じているけど、他にもいろいろ幅広く学問をしているね』と言った。

 これが、まず私がこの少年に驚かされた始めの出来事だった。


つづく

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