コンビニ店員奮闘記 第三話

8月に入り、うだるような暑さが続く。
「ふう、暑いなぁ…」
そう一人ごちながら店の外のごみ袋を取り換える。
「なにこれ!重いと思ったら!」
燃えるごみの袋に大量の新聞紙が捨ててあった。2週間分くらいだろうか。束になっていてかなり重い。
「もー、ちゃんと自分の家で処分してよね…」
ぶつくさ文句を言いながら、所定の倉庫の中に投げ入れる。
「ふー、早く中に戻ろう」
倉庫の鍵を閉めて、店内に戻る。
冷房はガンガン効いているわけではないけれど、店内は外に比べれば格段に涼しい。
「お帰りっす。お茶飲んで一息ついてきてください」
「ありがとうございます。そうしますね」
金田さんの気遣いをありがたく頂戴し、水筒からお茶をがぶ飲みする。
「ぷはぁ」
落ち着いたところで、次は店内の掃除だ。ロッカーから掃除用具を取り出して最初の掃き掃除を始めた、その時だった。
「あれー?由紀ちゃんじゃん!久しぶり-~」
ドアが開く音にとっさに反応して挨拶をしようとした矢先、聞き覚えのある声が聞こえた。
「えっ…梨加?」
知っている顔だ。日小田梨加。オーナーの娘で私のいとこにあたる大学1年生の女の子だ。
「久しぶりー!お正月以来?」
無邪気に駆け寄ってくる様はまさに天真爛漫。サラサラの明るい茶髪にくりっとした大きな瞳、ピンクの唇はどこから見ても美少女だ。
「久しぶり!どうしたの、おじさんは今日いないけど…」
「うん、父さんは家にいるよ。今日は金田さんがしばらく休むから代わりに手伝いに来たの」
そう言えば何日か前に、テスト期間に入るからしばらくバイトにこれないと金田さんから聞いていたのを思い出した。
「そっか。良く手伝うの?」
「しょっちゅうは手伝わないよ。夏休みとかまとまった休みの時にこうやって駆り出される事はあるけどね」
「だから仕事はだいたいわかってるよ」と梨加は微笑んだ。
「発注は和久井さんに引継ぎしてあるって言ってたから通常業務だけか。じゃあ、しばらくよろしくね」
「よろしくね。うれしいなぁ、由紀ちゃんとバイトなんて」
「私も」
まさか梨加と仕事することになるなんて、思いもよらない展開だ。
「二人とも、再開の挨拶は結構ですが、手も動かしてくださいね」
「「はーい」」
和久井さんの一言の後、私たち新3人組の仕事がスタートしたのだった。

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